鎌倉出身のギタリスト佐津間純さんが新譜「Make Someone Happy」を出されました。今回もマニアックな情報とともに、佐津間さんに紹介をしてもらおうと思います。
佐津間さん、宜しくお願いします。
◼️後藤輝夫(ts)との双頭リーダーアルバム3枚目
宜しくお願いします。今回の作品「Make Someone Happy」は後藤輝夫(ts)と佐津間純(g)の双頭リーダーアルバムです。今回のインタビューはギタリスト佐津間純からの視点でアルバムについて紹介させていただこうと思います。

私、佐津間純(g)と後藤輝夫(ts)は2011年頃に出会い、2012年にアルバム「But Beautiful」を発表しました。それをきっかけに本格的にデュオとして活動を始めました。2021年に2枚目のアルバム「Glad There is You」を発表。今作「Make Someone Happy」は3枚目となります。今作の制作の経緯としては、前作で大変お世話になったスタジオが閉鎖されるということになり、閉鎖する前にもう一枚作ろう!という後藤さんの提案で制作が始まりました。録音は2024年の夏に数回に分けて行われました。今回はゲストボーカルとして1曲だけウォーネル・ジョーンズ氏をお迎えしました。
「But Beautiful」 https://amzn.to/3YYCEiw
「Grad There is You」https://amzn.to/3YXKkl8
「Make Someone Happy」https://amzn.to/3RNt3XZ

◼️タイトル/曲目
後藤輝夫&佐津間純「MAKE SOMEONE HAPPY」
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1.LAMENT
2.MAKE SOMEONE HAPPY
3.CAMINHOS CRUZADOS
4.A TIME FOR LOVE
5.GEORGIA ON MY MIND (feat. Wornell Jones)
6.TWO DIFFERENT WORLDS (Jun Satsuma Solo)
7.YOU MUST BELIEVE IN SPRING (Teruo Goto Solo)
8.I SURRENDER DEAR
9.MY ROMANCE
10.I GOT IT BAD
11.I NEED TO BE IN LOVE
12.WHAT A WONDERFUL WORLD
◼️メディアスタイリストの全面的なバックアップ
前作と同様にメディアスタイリストの全面的なバックアップのもと、メディアスタイリスト代表の西松幸一さん、後藤輝夫さん、そして佐津間という3人を中心に制作が行われました。西松さんはレコーディングエンジニアとして、録音、ミックス、マスタリングに至る全ての工程を一手に引き受けてくださいました。
◼️リラックスして聴いていただける作品を
アルバムとしては、銘曲を肩肘張らずにリラックスして聴いていただける作品を目指しました。

今回の選曲は、後藤さんと佐津間が半々くらいで提案しました。後藤さんは今まで良い曲だなぁと感じていたけど、あまりじっくり取り組んでこなかった曲、死ぬまでに挑戦しておきたいと思っていた曲を選んだとおっしゃっていました。そして私は「後藤さんのサックスで聴いたら良いだろうなぁ」と思う曲(このコンセプトは最初のアルバムからずっと変わりません)をそれぞれチョイスしてレコーディングに臨みました。
どれも名曲ばかりですから、じっくりとその楽曲に向き合って自分なりにその曲の表現方法を模索する。厳しくも楽しく、とても充実した時間です。アルバム全体を通して基本的にはサックスとギターのデュオで演奏していますが、途中でゲストボーカルのウォーネルさん(vo)に参加していただいて1曲。そしてサックス、ギターそれぞれが1曲ずつソロでの演奏も収録したりしています。
とにかくシンプルにその曲のメロディーを中心に聴いていただければと考えているので、アドリブなどは短く、1曲1曲が長くならないようにしました。
◼️収録に使用したギター、アンプ、ペダル

(1)ギター
・Gibson Super400(1968年製)

2017年よりメインで使用している楽器。私の尊敬してやまないギタリスト岡安芳明さんから受け継いだ貴重なギター。この楽器を弾くことができることは大変光栄なことであり、大きな喜びです。楽器から教わることも沢山あります。
(2)アンプ
ライブでもメインで使用している2機種を使用しました(今となってはどの曲がどのアンプを使用したかは、定かではないのですが…)
・Albit「A-1Dream」

埼玉県草加市に工房がある老舗アンプメーカー「Albit」社製。もともと私の所有する真空管アンプの修理をお願いしたことがきっかけでお付き合いが始まりました。力強い音から繊細な音まで自分のタッチがありのままに再現され、ある意味ではとても厳しいアンプということが言えるかもしれません。丁寧に弾けば弾くほどアンプが応えてくれるといった感じです。多くのことを学びます。アンプのクオリティーはもちろんのこと、真空管アンプを知り尽くした職人でもある社長をはじめ、工房のスタッフの皆さんの人柄とアンプに対する熱い想いに共感して2023年からメインで使用させていただいています。多くのギタリストから信頼される日本を代表するアンプメーカーです。
Albit 公式ホームページ→https://www.albit.jp/
参考(編集者より):Albit 真空管プリアンプ https://amzn.to/4jDTuvF
・Fender 「Twin Reverb Tone Master」

王道のツインリバーブと思いきや…このトーンマスターというシリーズは真空管アンプではなく、デジタルアンプなんです。見た目やツマミは本家と全く同じですが、重さは真空管のものと比べて半分(15kg)。機動性に優れ、ノイズもトラブルも少なく安定した音質を得ることができます。日々いろいろな場所で演奏するミュージシャンにとってはとても重宝します。
amazon https://amzn.to/42Zzw7l
(3)ペダル等
・NATS「アナログリバーブ(プロトタイプ)」

NATS(New Analog Technology Sound)というメーカーのアナログリバーブ。リアルな真空管とスプリングが搭載されています。上記の「Twin Reverb Tone Master」と併用しました。トーンマスターはデジタルアンプで、それ自体でも音質は素晴らしいのですが、このリバーブを通すことで、より温かみのある繊細なサウンドを得ることが出来ます。この機材はプロトタイプ(試作機)で、まだ製品化されていませんが、素晴らしい技術者の皆さんの手によって鋭意製作中です。
NATS 製品等のお問い合わせ先:https://www.nats2023.co.jp/forms/contact.html
◼️共演者:後藤輝夫さん(ts)
私と後藤さんは親子ほど年齢が離れていて、キャリアも全く違います。そんな2人がジャズという音楽を通して一緒に演奏出来ることがとても嬉しくて、いつも感謝の気持ちです。ジャズの素晴らしいところだとも思っています。
後藤さんの素晴らしい音色は言わずもがな、いつも優しい気遣いとユーモアで場を和ませ、居心地の良い環境を提供してくださいます。後藤さんとの演奏や制作を通して貴重な経験をたくさん積むことが出来、それが今の佐津間純を形成する大きな要素となっていることは間違いありません。

少しシリアスな話をすると、いつまで後藤さんと一緒に演奏したり、制作をすることができるだろう?なんてことをいつも考えています。とても大切でかけがえのない時間だと思っています。
後藤輝夫さんのコメント「佐津間さんは、メロディに対応する和音センスが素晴らしく、サックスで単音を奏でるのが心地良い、一緒に演奏してとても楽しいギタリストです」
◼️共演者:ウォーネル・ジョーンズさん(vo)
今回1曲だけゲストボーカリストとしてお迎えしたウォーネル・ジョーンズさんは米国ワシントンD.C.出身。ベーシスト、シンガーとして米国でキャリアを重ねた後、80年代に来日。現在は東京在住。後藤さんとは古くからの音楽仲間です。
「いつか我々のデュオとウォーネルさんの歌で録音を残したい」という後藤さんの強い思いがあり、今回実現しました。私とウォーネルさんとは面識があったものの、一緒に演奏するのは今回が初めてでした。録音当日まで特に細かいことは決まっていなくて…スタジオに入ってから選曲をし、軽い打ち合わせをしてすぐ録音しました。2テイクくらい録ってあっという間に終わってしまったのを覚えています。終始和やかな雰囲気の中で録音することができました。

今回のウォーネルさんとの共演のように、後藤さんは事あるごとに様々な方との共演の機会をセッティングしてくださいます。それが私にとっては大きな経験となっています。
◼️アルバムジャケット撮影:後藤輝夫

これまでのデュオ作品のジャケットはすべて後藤さんが撮影した写真を採用しています。そして、いつもなぜか壁の写真(笑)。ご本人は特に意図はないと言っていますが、私の中では一つ一つの作品が大きな壁(チャレンジ)であり、それを一枚一枚クリアする。その壁かな?と勝手に思っています。
◼️大きな挑戦を楽しみながら取り組めた
ギタリストにとって、アルバム1枚全曲がサックスとデュオという編成はとても大きなチャレンジです。特に1枚目の時はまだまだ経験も浅い新人ギタリストでしたので、大きなプレッシャーを感じつつ、試行錯誤でやっていました。それが、今の自分の演奏スタイルや演奏技術を形成する上でとても大きな経験となりました。今でもチャレンジであることには変わないのですが、3枚目ともなると、その大きな挑戦を楽しみながら制作に取り組むことができています。

◼️(読者に)作品が多くの人に届くように、これからも丁寧に
インタビューをご覧いただきありがとうございます。じっくりと丁寧に制作した渾身の作品です。このサイトをご覧の皆様はジャズギターファンの方が多いと思うので正直に申しますと…インタビュー内でも述べた通り、サックスとギターのみという編成は、ギターの役割が極めて大きいフォーマットです。さらっと弾いているようで実はレコーディングスタジオでの佐津間は密かにすごく緊張し、悶絶し、試行錯誤して録音していたと思います(笑)。そんな様子を想像して聴いていただくのも良いかもしれません。ぜひ沢山の方に聴いていただきたいと思っています。
これからも、この作品が多くの人に届くように、丁寧に演奏していこうと思っています。ツアーも計画中です。
◼️佐津間純さんプロフィール

ジャズギタリスト。1982年10月24日生まれ。神奈川県鎌倉出身。洗足学園大学ジャズコース卒業。バークリー音楽大学卒業。岡安芳明、道下和彦、土屋秀樹に師事。卒業後プロとしてのキャリアをスタート。2006年ギブソンジャズギターコンテスト入賞。2012年第20回日本プロ録音賞ベストパフォーマンス賞を受賞。2013年デビューアルバム「JUMP FOR JOY」をリリース。2020年より動画配信サイトYoutubeで積極的に演奏動画の配信も行なっている。2022年国立音楽大学非常勤講師に就任。ジャズギターの王道をいくプレイスタイルとその温かく美しい音色は老若男女問わず受け入れられている。
・佐津間純ウェブサイト↓
https://junsatsuma.com/
・佐津間純Youtubeチャンネル↓
https://www.youtube.com/channel/UCfYHsH2sJ6lJxGzBhbrx1Ww
◼️最後に(編集者から)
新宿に出かけたついでにDisk Unionで今回の新譜を探したのですが、自力で発見できませんでした。店の方に尋ねたところデータ上で在庫が確認できたのですが、やはり見つからず。応援の店員も加わって、ようやく管楽器の棚で発見してくれました。お店でお探しの方、直ぐ諦めずに探してみてください。
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ギタリストの耳で聴くと、デュオの難しさを改めて感じます。佐津間さんの本音「密かにすごく緊張し、悶絶し、試行錯誤して録音していた」に同調される方も多いのでは。気を衒わない佐津間さんの演奏だからこそ、安心して聴くことができるのかもしれません。
YouTubeにあげられているソロ動画もそうなのですが、佐津間さんの演奏が素敵だなと思うのは、主役としてのメロディを大切にされているところ。アドリブもハーモニーもメロディを引き立てる脇役なんですよね(自戒も込めて)。つい難しい音楽を追求してしまって、聞き手や歌い手から離れていくリスクを思い出させてくれます。
勝手ながら4枚目・5枚目のデュオアルバムも期待させてください。佐津間さん。お忙しいなか、取材ご協力ありがとうございました。
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