達人に聞くvol.4 宮野弘紀さん


楽しく成長するためのコツを、達人な方々にお聞きするシリーズ。第4弾は、私の尊敬するギタリストのお一人、宮野弘紀(ひろき)さんです。宮野さんをご存知ない方のために、まずは、いまの季節に相応しい「さくら」をご紹介。

最初にお会いしたのが2010年、馬場孝喜さんとのデュオライブ。目の前で見た、これまで経験したことのないスタイルに衝撃を受けたことを思い出します。即買いしたブラジル人ギタリスト、ルーラ・ガルヴァオンとの共演盤「アダージョ」(2008)は、歴史に残る名盤で、いまでも私の最愛聴作品となっています。私が目指すギター像の形成に、大きな影響を与えてくださった1人でもあります。

アダージョ(2008) 見かけたら即買い必


■インタビューにあたって、宮野さんの前置きコメント
「私の考えや意見などは、私にとっては普通でも、周りのギタリストとは 全然ベクトルが違うから、良いのかどうか分からないよ。と言うのも努力している場所が違うから。誰でも 上手くGuitar弾けるようになりたい。それは一緒でしょうけどね(笑)」
「私はコピーした事ないし、本買った事といえば 渡辺貞夫の『ジャズスタディ』という 60年代の本ぐらい。でもぜんぜん勉強してないね 。一応買ったという事ですね(笑)」
「最初は ジャズではなかったから、皆で、この曲やろう!って決めて、レコードからのコピーは若い頃やりました。でもそれはジャズではないからね。ロックやポップスなど仕事で夜店で働いていた頃の話。札幌のススキノですよ。ナイトクラブやディスコというかな。」
「そしてジャズの方向に憧れて、毎日ジャズ喫茶行って、好きなアルバムや当時の流行りを聴いていると、雰囲気で身体に入ってきた。レコード聴いてたら自然に自分のGuitarに写るとかは、当たり前にある事で、仕方ないことかな。そんなんで曲というもののカラクリ仕組みが分かるわけです。」
「まぁ雰囲気でジャズな匂いでGuitar弾いているうちに、合っている音、間違えている音なんて、理論知らなくても感覚で『おかしい?』といびつな事は分かりますよね。スケールなんかは後からですから。プロでやっている人で理論から入る人なんていないでしょうね。感覚で弾いて、上手くそれなりになる人が上手くなるもんだ、と思います。」
(田中)宮野さんの指摘の通り、僕たちがやってるのは、音楽であり、ジャズなんですよね。最終的には自然と自分から湧き出てくるものを、そのままギターで出してる、みたいな境地に達したい。インタビューした達人が共通して指摘しているポイントですね。
■始められない時、集中できない時の切り札
「簡単なコード進行でリズム入れたカラオケみたいなの作っておいて、ループさせて、それ掛け流してダラダラ指先のウォーミングアップやピッキングの練習ですね。左手も右手もね 。」
「人間はリズムに入らないと集中できません。身体がリズムのビートに乗らないと気分も乗らない。私はそこから始まる。」

■ 理論を実践に昇華させるには?
「ジャズのエッセンスは五度セブンですね。もうこれだけやってればいいんじゃないの?」
「後は全て分かってくる、徐々にね。まずは五度セブンのいろいろなスケールを全部やる。ディミニッシュも、ホールトーンも、コンデミも。みんなここからリディアンセブンとか ♭9系かナチュラル9系か?後はテンション何が使えるとか」
「そして、ペンタトニック何が五度セブンの場所で何が使えるとか。五度セブンは一番ギタリストのセンスが出る場所ですから。ジャズのキモですね。これだけいろいろやってれば 総合的に見えてくると思っています。」

■ いまの自分を乗り越えるコツ(次にやるべきこと)
「結局のところ、左手の指と右手の指のバランスが上手く合うには、ピッタリ思うニュアンスになるように、ピッキングの筋肉、神経回路を作るということですから。フィジカルなトレーニング&イメージ力が不可欠。あとは情緒な右脳ですよ。」
「何が来ても弾けるとか?それは理想ですが、不可能に近い。あらゆるジャンル全部弾ける方がいたとしたら、多分つまらないギタリストになっているんじゃやないか(笑)」
「でも、少しでも弾けるようになりたい 。そういう流暢な技術は右手の研究鍛錬筋力 新しい神経回路の増設というかな。私は毎日こういう基本的な事しか考えてません。何が来てもある程度対応していける技術というか、それの底上げです。」
「私の場合は、ジャズができるとか何が弾けるとかじゃなくて、自分の世界オリジナルを作る事、そして誰でもないオリジナルな空間。それにはオリジナルなリズム解釈とギター奏法とか考えているのが好きなんです。」
「もう基礎的なジャズ黎明期はとっくに終わって、新しいものはなかなかできませんね 。そういう時代のジャズというか…… この混迷の今の時代は 、今までのファシズム的スタイルが支配して来た『こうあらねばならない!』というタガが外れて来ているからね。オリジナル作るには大チャンスなんだよ 本当はね⌒⊥⌒ゞ」

■(オマケ)奏法について
「Guitar奏法は指で弾くのか、ピックで弾くのか、その両方を使って弾くのか。指の時に、親指を重点的にウエスモンゴメリのように弾くのか、クラッシックギタリストのようにアポヤンド・アルアイレというか、全部使って弾くのか、もう色々とあるわけです。ピックで弾く場合も、三角のオニギリ型か玉子型か。材質は?ナイロンやべっ甲やプラスチックでも微妙に材質が違うのがたくさんありますからね。それが嫌で金属ピックにハマって行く人も居る。」
「ピックの持ち方一つ皆違うのです。学校に行けば、先生の癖で教えられるというのも運命ですね。合理的なオルタネイドピッキング?とか言う奴、私はよう知らん(笑)。これが 1番合理的なピッキングとか教えてもらって つまらないサウンドになるという事もある。自分が生理的に気持ちいいという快感を感じるタイミングやタッチ、ピックの持ち方、それぞれ皆違うんですね 。それがギターの魅力でもあるわけです。」
「世界中の民族に入り込み、様々な弾きかた奏法があるんです。漠然とGuitarを始めて、自分はどういうサウンドが好きなのか、どういうジャンル、道に行くのか?もう考えると大変な時代ですよ。」
■最後に読者にひとこと。
「自分が1番感じる Guitarとはなんなのか?誰のギターが1番好きなのか 音楽ジャンルは?方向定めて憧れをはっきりしておくといいですよ。それすら答えられない、漠然としてると、ずぅ〜っと漠然としたまま進むわけですね。」
「自分の目指すサウンドの目的を持つのが、大切であるという事です。」
・・・・・・・
(田中)力強いメッセージですね。理論じゃない、とおっしゃっていますが、自分の目指すサウンドを具体化していく、太くしていく、進化させていくツールとしての活用は惜しまない感じ。
(田中)自分は自分の目指しているサウンドが見えているか。ゴールを描いた上で、バックキャスティングで進むべき道を探求しているか。いやいやウカウカとしてられませんなー

宮野弘紀(みやの ひろき)
東京で生まれ、札幌で育つ。札幌時代は中山英二(b)氏と共に、北海道・東北から活動始まる。上京後すぐに「スウィング・ジャーナル」誌の元編集長・児山紀芳氏と故マイルス・ディビスのプロデューサー、テオ・マセロ氏により81年ニューヨークにて、オリジナル曲のアルバム『MANHATTAN SKYLINE』(日本フォノグラム)をレコーディング、メジャーデビューを果たす(最優秀録音賞受賞)。

当時から楽曲・アレンジのクオリティに対する評価も高く、一躍、アコースティック・ギターリストの寵児として注目。その後もアール・クルーとのduo作品などを経て、’85年に自身がリーダーの「アコースティック・クラブ」を結成。ニューエイジ・ミュージックとして話題となり、「アドリブ誌」でベスト・アルバム賞も受賞。一方で日本テレビのテーマ音楽等の作曲家として、またサポートミュージシャンとしても多くのアーティストと共演してきた。
作品としてブラジル移民100周年の2007年、Rio録音でブラジルの名手ルーラ・ガルヴォンとのギターデュオ作品『ADAGIO』をリリース。評論家が選ぶ私のベスト盤2007年度の最高作と評価された。
続編「アダージェット」2017年リリース
既存のパターンを超え、常に日本人としてのGuitarデザインを意識したオリジナリティーを追求している。
 
【ご案内】twitterにて記事の新着をお知らせしています。https://mobile.twitter.com/jazzguitarnote

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です