中根賢隆さんという方をご紹介頂きました。私が横浜の山岳地帯に住んでいることもあり、これまでお名前を存じ上げず、ライブも拝聴したことがなかったのですが、独自の世界観を持っていらっしゃるギタリストで、とても魅力的な方です。本日2026/3/3にリーダーアルバムを出されたとのことで、ご紹介いただこうと思います。
それでは中根さん、宜しくお願いします。
◼️アルバム Yoshitaka Nakane trio「Samhain」

発売日:2026年03月03日
価格:¥2,200(税込)
収録:
1 Tea for two
2 Nobody else but me
3 Deep forest
4 Mushroom hunting
5 Prelude to a kiss
6 Nora’s stroll
7 East of the sun
8 Taranis
9 月灯に照らされて
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◼️聴いて欲しい人たちがいる
アルバムを作るキッカケ、幾つかあるんです。阿佐ヶ谷のマンハッタンというライブハウスで定期的にライブをやらせて頂いてるギタートリオで、形に残したいと言うのが一つ。元々ギタートリオで上手く演奏出来るようになりたいというのが一つの目標だったので、上手になったらと録音したいなと思ってました(笑)。録音に向けて練習すると、まだ上手くいかない事の方が多くて(苦笑)
もう一つは聴いてほしい人達がいる、という理由です。マンハッタンの望月さんであったり、師匠の直居隆雄さんとか、その他にもいっぱいいます。
◼️ 日常と非日常の交差点的な世界観をテーマに
制作にあたっては、色々な選択肢があったのですが、スタジオ選びから録音エンジニアさん、デザイナーさんほぼ全て自分で決めました。
1)アルバムのテーマ
日常と非日常の交差点的な世界観にしたかったです。
2)選曲
オリジナルを中心に何かしらのストーリーが紡げれば良いかなと思ってました。
3)演奏面
ギタートリオというサウンドを目指して他に何も入れないという事にこだわって覚悟を決めました(笑)
4)共演者
阿佐ヶ谷マンハッタンで一緒に演奏してくれてる座小田諒一さん(bass)と公手徹太郎さん(Drams)です。二人とも私のダメなところをよく知っていて、上手くサポートしてくれています。


5)アルバムジャケット
長野県大町市というところで出会ったモチズキシンイチさんというイラストレーターさんに依頼しました。以前は国立市に住んでいて、三鷹の森ジブリ美術館のフロア案内図などをデザインされた方です。見せてもらったボジョレーのワインラベルがファンタジーぽく色使いもよくて心象に残ってました。
◼️ 使用楽器・機材
ギターは1948年製のL-7という楽器のみを使ってます。エフェクターもマルチに入ってるノイズゲートを(念の為)使って、アンプもスタジオにあったデラリバです。

・ギター:gibsonL-7 1948年製
※ビンテージで、トーンが素晴らしく他に代え難い代物です。
※元々ピックギターでしたが、私が買って現行品のデュアルモンドを付けました。
・弦(録音時):ダダリオのEPN21というラウンド弦です
・ピック:ダンロップ プレミアムトーン ティアドロップ
※ちょっと高いやつです(笑)
・エフェクター:録音では(ほぼ)使ってません。
・アンプ:デラリバ
◼️収録曲紹介(ライナーノーツから)
1)Tea for Two
ヴィンセント・ユーマンス作曲のスタンダード。1925年、ミュージカル『ノー・ノー・ナネット』のために書かれた楽曲で、ジャズ・スタンダードとしては最も親しまれている一曲のひとつだろう。これまでに残された録音は数え切れず、スイングするものから、ボサノバ、チャチャチャなど、中南米のリズムを取り入れたものまで実に多彩である。
メロディはシンプルだが、演奏する側の解釈を素直に受け止めてくれる懐の深さがあり、その柔軟さこそが長く演奏され続けてきた理由だと思う。
今回このトリオで取り上げるにあたり、あえて「フィーチャー・ドラムス」という位置づけでアレンジした。リズムが楽曲の表情をどのように変えていくのか、その推移も楽しんでもらえたら嬉しい。
2)Nobody Else But Me
ジェローム・カーン最晩年の作品で、1945年にミュージカル『ショー・ボート』がリバイバルされた際に追加された楽曲である。ソニー・ロリンズをはじめ、多くのサックス奏者が取り上げてきたが、その理由はやはり楽曲構造の面白さにある。
同一楽節内での部分的な調性の変化を「転調」と呼ぶべきかどうかは議論の余地があるが、カーンの楽曲はほとんど例外なく、自然な流れの中で調性が揺れ動く。その曖昧さが、演奏者の想像力を刺激するのだろう。この演奏では、前曲がドラムをフィーチャーしていた流れを受け、「フィーチャー・ベース」としてテーマ・メロディをベースに託した。低音が語るメロディの輪郭を味わってほしい。
3)Deep Forest
私のオリジナル曲で、「深い森」をそのまま音にしたようなイメージで書いた。どこまでも続く針葉樹林、足元には絨毯のように広がる苔。人の気配はなく、ただ自然の音だけが満ちている。どこからともなく聞こえてくる小川のせせらぎや、風が吹いたときに古木たちが会話をするようなざわめき。時間の感覚が曖昧になり、現在地が分からなくなるような感覚も、この曲には含まれている。北欧あたりの、行ったことはないけれど、果てしなく続く森。そんな風景を思い描きながら、静かに耳を傾けてもらえたらと思う。
4)Mushroom Hunting
こちらもオリジナル曲で、キノコ狩りをモチーフにしている。私はキノコ探しを趣味にしていて、主に都市部の公園を、足元を見ながら目的もなく歩き回る。集中して地面を見続けていると、時間の感覚が薄れ、頭の中が空っぽになる。そんな状態で、ふとキノコを見つけた瞬間、思いがけず嬉しい気持ちが湧いてくる。その感覚が自分でも少し不思議だ。
ぐるぐると回り続けるようなフレーズと、ふと視界が開ける瞬間。その対比を音にして、小さな宝探しのような曲にしてみた。
5)Prelude to a Kiss
1938年にデューク・エリントンが発表した、甘美でどこか翳りを帯びたバラード。インストゥルメンタル、ボーカルともに名演は数多いが、やはりジョニー・ホッジスのサックスは別格だと感じる。エリントン楽団でのオリジナル録音も、ホッジス名義のリーダー作も、それぞれに魅力があり、何度聴いても新しい発見がある。個人的には、学生時代に師匠である鈴木ポン康充先生からこの曲を教わった思い出が強く残っている。当時、師匠の演奏を間近で聴きながら、この曲の持つ間や呼吸の深さを学んだ。
6)Nora’s Stroll
自宅近くにいる野良猫を題材にしたオリジナル曲。Nora’s は「野良」という意味である。
家の周りには数匹の地域猫がいて、その中でも三毛猫の通称スミレが、比較的近所を縄張りにしている。毎日ほぼ同じ時間に現れ、同じ場所で昼寝をし、気まぐれに散歩をしている。たまに他の猫と鉢合わせて「シャー」と威嚇する姿を見ると、彼女なりの世界がそこに確かに存在しているのだと感じる。村上春樹の小説に登場する猫は、しばしば異世界への入口として描かれる。野良猫の後をついて行ったら、知らない世界へ迷い込めるのではないか、そんな想像を込めた曲である。
7)East of the Sun
ブルックス・ボウマンが、プリンストン大学在学中に、トライアングル・クラブ公演『スタッグス・アット・ベイ』のために書いた楽曲。同大学は、村上春樹訳によるフィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』の舞台としても知られ、アメリカの上流階級を象徴するような名門校である。その背景を思うと、少し距離を感じてしまうのも正直なところだ。しかし楽曲そのものは非常に端正で、英語的な韻やバランス感覚に優れており、結果として多くのジャズメンに愛されてきた。本作では、昔から使っているイントロを生かし、少し可愛らしい表情を意識して演奏している。
8)Taranis
タラニスは、古代ケルト神話に登場する天空と雷を司る神である。曲のアイデアを探していたある日、雷鳴を聞きながら「低音が地面の奥でゴロゴロと鳴っているような曲を書こう」と思い立った。それがこの曲の出発点だった。実際に形にしてみると、予想以上に演奏が難しく、構造的にも一番苦労した曲かもしれない。それでも、その不安定さがこの曲の性格になったように思う。暑い夏の空気や、突然訪れる激しい夕立を思い出しながら聴いてもらえたら嬉しい。
9)月灯に照らされて
「月灯」と書いて「つきあかり」と読む。この曲で描いたのは、直接的な月光ではなく、夕立の後、濡れたアスファルトに東から昇る月の光が反射する情景である。昼間の熱気がまだ残る中、雨が街の匂いを洗い流し、幻想的な光景が現れる。その一瞬に、心がふっと緩む感覚を音にした。「Taranis」とほぼ同時期に書いた曲で、同じ空の下にありながら、こちらはよりロマンチックで都会的な夜のイメージを持っている。
◼️オリジナル曲には自分らしさが多いかも
自分から見た自分らしさ。。私は演奏にあんまり「らしさ」は無いのですが、曲は自分らしいと思えるポイントが多い気がします。調整から外れて行っても全く違和感がなかったり、外れたメロディでもポップに聴こえたり。
◼️ 中根賢隆(ナカネ ヨシタカ)さん プロフィール

1978年3月24日生まれ。
15才よりギターを始め、高校卒業後ANミュージックスクールにて鈴木ポンちゃん康充氏、直居隆雄氏、水上聖氏に師事。ジャズギターの基礎を学ぶ。特待生で卒業。在学中からアーティストサポートやレコーディングを経験。アニメ作品などへの楽曲提供を行いつつ、gibson showroom Tokyoで行われたJazz guitarイベント「G8」では多くのジャズファンを魅了した。
Jazzやbossa novaを中心としつつ、最近ではアニメ「うらみちお兄さん」の劇中曲の提供や、「女の園の星」のオープニングテーマのギターなどを担当した。
https://yoshitaka777bebop.jimdofree.com
◼️読者に向けて
私にとって作品づくりは「根底にある事は何かを表現する」という意識です。それこそが人類に与えられた宝物だと思ってます。私のCD「Samhain」はありそうで無いストレートなジャズギターのアルバムになっています。ご飯を食べてる時や本を読んでいる時のお供に、是非聴いてみてください。

今後は、もう少し色々な作品を作って行けたらと漠然と思ってます。あとはもう少しギターが上手くなりたいです(笑)。ありがとうございました。
◼️最後に(編集者から)
コメントの端々に中根さんらしさが滲み出ていて、読んでいるうちに益々アルバムや生ライブを聴きたくなってしまいます。きっと心の籠った素敵な演奏をされるに違いない。
中根さん、ご多忙ななか、インタビューご協力ありがとうございました。今後、益々のご活躍、期待させてください。
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