台湾とジャズ❷アーティスト紹介

現地在住のピアニスト島さんに聞く、「台湾とジャズ」をテーマにした連載。前回の第1弾では台湾のジャズについて、概況や歴史についてお聞きしました。

台湾とジャズ❶黎明期ならではの面白さ
https://jazzguitarnote.info/2026/04/07/taiwan-1/

第2弾となる今回は、台湾の演奏家にスポットを当てたいと思います。島さん、宜しくお願い致します。

◼️毎年のように来日している演奏家も

【田中】人気のあるアーティストは、どういった方々がいらっしゃいますか?

【島】台湾国内で人気のあるジャズミュージシャンと言えば、サックス:謝明諺(Minyen Hsieh)、ピアノ:曾增譯(Tseng-Yi Tseng)、ベース:劉育嘉(Yu-Jia Liu)、ドラム:黃子瑜(Fish Huang)など。彼らの演奏は日本でも認められていて、毎年の様に日本でのライブも行っています。

【島】とはいえ、日本における小曽根誠や上原ひろみの様に、世界的に活躍していて知名度のあるジャズミュージシャンがいるかと言うと、それはいないと思います。アメリカで活躍しているジャズミュージシャンはいます。ビブラフォンの魯千千(Chien Chien Lu)、蘇郁涵(Yuhan Su)らですね。しかし、世界的に名前が知れ渡っているかというと、そこまではいっていないと思います。ヨーロッパで継続的に活動しているミュージシャンもいます。ピアニスト/作曲家:方斯由(S’yo Yen)、ヴォーカリスト/ピアニスト/作曲家:趙默默(Monique Cao)らです。

【田中】演奏家の層は厚いですか?

【島】トップミュージシャンでさえ40代くらいで、現在台湾のジャズミュージシャンはプロ、アマを問わず皆とても若いのが特徴です。そして、ミュージシャンの層もそれ程厚くない。そして、それが理由でプロとアマチュアの間にあまり垣根がありません。ジャムセッションに行くと、僕も第一線級のミュージシャンと一緒に演奏することがよくあります。彼らは、アマチュアミュージシャンを喜んで仲間に加えてくれます。その様な一体感のある家族の様なミュージシャンの集団であるというのが、台湾ジャズシーンの特徴です。

【田中】家族のようなミュージシャン集団というのはいいですね。

【島】もう一つ特徴的なのは、アメリカへの留学生と同じくらいの数のミュージシャンが、ヨーロッパにジャズを学びに行っていることです。主なところでは、ベルギー、オランダ、イギリスなどの音楽院でジャズを学んだというミュージシャンの一群がいます。彼らの音楽はアメリカで学ぶジャズと異なり、とても多様性に富み、クラシック音楽の影響の深い、リズムやグルーブよりも、エモーショナルな表現や多様な民族性に立脚したジャズを演奏しています。

◼️おすすめギタリスト5+α

【田中】ピアニストでいらっしゃるのに、島さんはnoteで、台湾オススメのジャズギタリストまでご紹介されていますね。

note【台湾のジャズミュージシャン】ギタリスト(その一)
 https://note.com/hiroyuki_shima/n/nf6c72d53103b

【島】ギタリストに限らず、網羅的に台湾のジャスミュージシャンを紹介しようと今トライしているところです(笑)。記事では、各ギタリストの個性やスタイルについて書いていますので、ぜひお読み頂けたら嬉しいです。彼らのバックグラウンドをついでにご紹介しておくと。。
 葉賀璞(Hope Yeh):ベルギー留学
 陳穎達(Ying-Da Chen):オランダ留学
 林偉盛(Lin Wei-Sheng)、李世鈞(Lee, Shih-Chun):アメリカ留学
 林華勁(Gin Lin):台湾で独学

【田中】5人中、欧州留学が2名も。米欧台の面白い融合が生まれそうです。

【島】さらにもう少し補足すると。

・葉賀璞(Hope Yeh)は自分のYouTube Channelで、自虐的な面白い発言を繰り返しています。自らを”失敗したミュージシャン”と卑下しているのですね。しかし、実のところ彼のギターは台湾のジャズミュージシャン公認の最高のレベルのものですので、この発言を皆で楽しんで聞いています。(https://www.youtube.com/@hopeyehmusic

・林偉盛(Lin Wei-Sheng)は自らがニューヨークで10年以上に渡ってプロのミュージシャンとして活躍した実績から、台湾のジャズシーンに対しとても辛口のメッセージを発し続けています。彼もYouTube Channelを持っています。(https://www.youtube.com/@bassistwei

・林華勁(Gin Lin)は、ジャズ評論の記事を継続的に書いています。外国のジャズの動向に関するものが多いですね。台湾のジャズミュージシャンがどんなことを考えているかを知る参考になるかと思います。(https://ginjazzyology.blogspot.com/p/biography.html

【島】記事の演奏家以外にも何人か、ライブでよく見かけるギタリストがいますので紹介します。

・Andy Ferris。カナダ人ギタリストで、Sapphoのジャムセッションホストもしています。BluenoteやSapphoでのライブも定期的に行っています。

・方鏡興(Mirror Fang)。ヴォーカリストとのデュオがとても多いギタリストです。Intoxでは月に3本ほどヴォーカルデュオの演奏が入っています。Bluenoteではリーダーのトリオ演奏もしています。

・蕭育融(Hsiao YuJung)。若手では最も人気と実力のあるギタリストだと思います。羅妍婷や高逸柔らがこぞって彼と共演者しています。曾增譯も彼のセクステットのプレイヤーに彼を選んでいました。

・李芳旭(Fang-Shu Li)。とても落ち着いて安定した演奏をするギタリストです。ヴォ―カリストとの共演も多いし、Jazz Meta Bandでもゲストミュージシャンとしてよく参加しています。

【島】大稻埕にあるBook Bar 1920sで、第2と第4木曜に、”低音悄悄話”と銘打たれたトロンボーン劉芷均&ギター翁培捷デュオのライブ&ジャムセッションが行われています。これは、迪化街の書店の前でオープンに行われているライブ活動ですので、気軽に楽しむことができます。ジャムセッションもあるので演奏に参加することもできます。台北でも最も著名な観光地でのオープンライブ&ジャムセッションです。(https://www.facebook.com/search/top/?q=bookbar%201920s

◼️中国と台湾、ジャズを通じた交流

【田中】少し話題を変えます。中国と台湾。なかなか日本人には計り知れない関係性がありますが、ことジャズの分野では交流などあるのでしょうか?

【島】先に挙げたトップミュージシャン達は、しょっちゅう中国に行ってライブを開いています。それは、かえって台湾のライブよりも規模の大きな集客イベントの様です。一方、中国のジャズミュージシャンが台湾に来て演奏することはほとんどないです。他の芸術活動、例えば中国雑技団などは中国のアーティストがたくさん来ているので、中国側にネームヴァリューのあるジャズミュージシャンがいないのかもしれません。

【田中】文化面での交流はある訳ですね。

【島】そうですね。中国以外では、香港とシンガポールのミュージシャンはよく台湾に来ています。台湾のミュージシャンもこの2つの国と地方にはよく行ってます。どちらも華人文化圏で、中国文化と自由主義経済を共有し、人間の交流、音楽活動の実現もしやすいのでしょう。何より、彼ら同士が皆音楽的嗜好の会う友人同士ということが大きいと思います。例えば香港のギタリストTeriver Cheung、シンガポールのフルート奏者Rit Xuなどがいます。

◼️自らの音楽活動を海外に広げようとする思い

【田中】留学経験もあるからでしょうが、海外との交流に積極的に聞こえます。

【島】台湾にいると、インドネシアジャカルタにジャズフェスティバルがあることや、インドネシアにジャズピアノの神童が現れてアメリカでも話題になっているというニュースなどが頻繁に入ります。台湾の様な小さな国から見ると、日本は巨大な音楽のマーケットを自前で持っているように見えます。それで、日本のジャズミュージシャンはあまり外国に目を向けませんが、台湾や東南アジアでは、国内のジャズマーケットがとても小さいので、音楽活動を海外に広げようとする思いがとても強いのでしょう。台湾では、特に華人コミュニティーのシンガポールと香港との関係が強いです。

【田中】お恥ずかしながら、私自身、アジアのジャズにあまり関心を向けていませんでした。

【島】中国では、基本的にアメリカの文化を排斥する様な環境にありますが、それでもマーケットがとても大きいので、多くの台湾のミュージシャンが中国でライブを行っています。特にドラムに対する需要が高いらしく、日本のドラマー坂本健志は、日本と台湾、中国の3つの国をまたにかけて音楽活動をしています。

◼️連載「台湾とジャズ」第2弾を終えて(編集者から)

「台湾とジャズ」第2弾は以上になります。

4日間の台湾で感じたのは「活気」でした。特に台北は混沌としていて、懐かしさを感じる古い街並みと高層ビルが混在。街中には歴史あるマーケットや寺院が点在し、通りには圧倒的な量のオートバイが走っていて、独特の雰囲気を感じます。島さんが楽しそうに語ってくれる台湾ジャズの勢いも、納得感を持って受け入れることができました。

それにしても、自らコミュニティに飛び込んで、自身の楽器である鍵盤だけでなく、台湾のジャズシーンを網羅的に広く深く紹介されている、島さんの意志と行動力は凄い。アジア人の一人として、理解や見識を深めてゆきたいと思いました。

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2 comments to “台湾とジャズ❷アーティスト紹介”
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