前回に引き続き、「ギタートリオ」について、Sean Harknessさん、丹羽悦子さん。Hiro Yamanakaさんの御三方に話を聞きます(以下敬称略)。宜しくお願いします。
(前半記事)https://jazzguitarnote.info/2026/02/03/guitartrio-1/

◼️トリオだからこその「伴奏」の棲み分け
【sean】Just like what I said above, when comping it’s important to be aware of what is happening already, then to be aware of possible choices. It’s not a good idea to try and do the same thing as someone else. Find your own way, within the scope of the song. There is a hierarchy to consider here: melody/soloist first, all else supports that [including silence when appropriate], then correct harmony [make sure you know the chords, what notes other than chord tones are available without clashing or forcing the improvisor to use your choices], and dynamics. If there is intensity to the melody/solo, be sure what you offer them supports that. If there is subtlety, be sure not to take over.
【sean】コンピングにおいても、まず何が起こっているかを意識し、次にどのような選択肢が考えられるかを考えることが重要です。他の人と同じことをしようとするのは得策ではありません。曲の範囲内で、自分なりのやり方を見つけてください。
ここでは階層構造を考慮する必要があります。まずメロディー/ソリスト、そして他のすべてはそれをサポートする(適切な場合は無音も含む)、次に正しいハーモニー(コードを把握し、コードトーン以外にどの音符が衝突せず、即興演奏者にあなたの選択を強制しないかを確認)、そしてダイナミクスです。
メロディー/ソロに強烈な要素がある場合は、それをサポートするように提供してください。繊細な要素がある場合は、それを支配しないように注意してください。
【丹羽】今回、伴奏に関しては、各曲の全体を通してとりわけ細かい決め事はなく、即興性が求められました。ただ、例えば、少しだけカバー曲のアレンジメントで、イントロや、曲間の決め事は、リードシートに記載されている曲はいくつかありました。リードシートに記載されていない部分は(大体、ソロ中の曲全体は)その時の感覚で、各自の判断で自由に演奏するといった形。もちろん公演前にリハーサルを通せたことは本当に良かったです。
【hiro】リハーサルを有効に使うことは大切ですね。今回はメロディ部を1人が担当するケース、2人で弾くケース、3人でハモリながら弾くケースがありました。つまり伴奏する人数が変わる訳です。それは曲によって、譜面によって変わるのですが、1番はリハーサル時にに実際に弾いてみて、曲の流れを共有出来た時点で決めます。「ここは、こう言う風に弾いて欲しい」とか「ここのヴォイシングはこうしよう」とか様々なアイデアが飛び交うんです。
【丹羽】相手のリズムの取り方、入り方、やタイミングなど。例えば本番は違うプレイをしたとしても、だいたいの各自の伴奏の引き出し(バリエーション)はリハーサルのときに確認できる貴重な機会でした。
【sean】Yes, song by song we would decide who is presenting the melody, and then a general idea of what the other two will be doing – even if it means one of us is not playing. Then after the composed melody we go into improvisation – who goes first? Who is the main support of that, and what will the third person do? It is a very interesting balance, and constantly changing in real time. In Yokohama we each would instinctively go straight to playing the bass line when not soloing, forcing the third person to find something else. It was a fun dance!
【sean】確かにリハーサルは重要ですね。曲ごとに誰がメロディーを演奏するかを決め、それから他の二人が何をするかを大まかに決めます。たとえどちらかが演奏しなくてもです。
メロディーが決まったら、即興演奏に入ります。誰が最初に演奏するのか?誰がそのメインのサポートをするのか?そして、3人目は何をするのか?これは非常に興味深いバランスで、常にリアルタイムで変化していきます。
横浜では、ソロを弾いていない時は、誰もが本能的にベースラインを弾き始め、3人目は何か別のものを見つけざるを得ませんでした。楽しいダンスでした(笑)
【丹羽】単旋律のBass Lineを担当している人がいたら、それに合うようなコード伴奏をコンピングにするか、アルペジオにするか、トレモロか、単発的なストロークにするのか、もしくは全く弾かない方向なのかetc…. いくつかバリエーションは出てくるかと思います。それを本番では、その場でとらえていく感覚だったかと思います。相手方と重複したプレイにならないよう。でも瞬時に全く同じの演奏になった瞬間も実はあって、そのとき思わずお互い笑ってしまいました。そういうカジュアルな空気感というのも、共感しあっていて楽しい音楽の醍醐味です。
【hiro】例えば、Seanの場合には指弾きですからヴァリエーションが豊富で自由に指板上で低音から高音までをリズミックに表現出来る強みがありますし、スチール弦ならではのストラミング(コード・ストローク)が美しく響きます。フルアコの丹羽悦子は所謂「四つ切り」が独特の効果を生み出します。セミアコとソリッドの僕はミュート音を使った1音や2音(ダブル・ストップ)で特徴を表現できますし、今回はShimmer効果のエフェクターとヴォリューム・ペダルを併用してのストリングスに似た効果も使いました。
【hiro】気をつけたいのは「リハーサルでこう弾いたから」は本番では通じないこと。それは各自の集中力が増すからなんですが、そこが演奏者にとって1番面白い部分だと思います。結局は、決めた部分以外は自由裁量で、いかに良い音楽を作れるかですね。コンピング時の棲み分けは、それぞれの耳と感性がとても大切です。
【sean】 My personal philosophy in these matters is to be in the moment and give support. I think in terms of possibilities, choices, and tendencies – not rules. Rules often get in the way of open communication – if someone is doing what they assume is the correct thing to do, and it is not really supporting the moment, then that rule doesn’t mean anything right now. For the music to really come to life it must flow naturally from person to person without restrictions from outside forces.
【sean】hiroの言う通りです。私の個人的な哲学は、その瞬間に身を置き、サポートすることです。私はルールではなく、可能性、選択肢、そして傾向という観点から考えています。ルールは往々にしてオープンなコミュニケーションの妨げになります。もし誰かが自分が正しいと思っていることをしていても、それがその瞬間を支えていないなら、そのルールは今は何の意味も持たないのです。音楽に真に生命を吹き込むには、外部からの制約なしに、人から人へと自然に流れていく必要があります。
◼️3Extraordinary Guitarsトリオならではの工夫や配慮
【丹羽】このトリオならではの工夫といったら、それはプログラムを見ても、ヒロさんとSeanさんのアレンジメントや作曲の数々を無しには語れませんが、まずは発案者のHiroさんがこの編成を思いついてくださったこと自体が、とても大きな工夫・アイデアだったと思います。事前に、色々構想やイメージがあって、そこに私を選んでいたいただいたことは、とても光栄ですが、敢えて言うならば、(まだ共演回数は少ないですが) 私も、このトリオでのサウンドをイメージした楽曲を毎回、選ばせていただいています。

【丹羽】まずセンターにしっかりとした唯一無二のSeanさんの音があって、そこにはSeanさんの世界観があって、その両サイドにそれぞれHiroさんと私がいて、そこにもそれぞれの世界観があり、そのお互いの個性は互いに消し合わなくて常に尊重した演奏をしていることです。それぞれに独立しているのだけれど、一体感・調和している感覚です。
【hiro】(丹羽)えっちゃんは、求めていた世界観からの必然の指名ですよ。今回の3 Extraordinary Guitarsも、Sean Harkness(Walden Guitars製スチール弦)、丹羽悦子(ES-175D)、Hiro Yamanaka(Marchione製ストラト・タイプ、セミ・ホロウ)と言うことで、準備期間が少なかったにも関わらず、前回と異なるチャレンジができたライブでした。
【hiro】企画はアメリカのNYと日本の間でFacebookの Messengerで言葉で意見交換をして、譜面はPCのPDFで共有することから始まります。Sean Harknessはワールドクラスのギタリストですが、積極的にプランを送ってくれますし、前回ライブの譜面は3人とも持っていますから、逆にどの様に前回を上回る企画ができるかがポイントになることは3人とも考えていましたね。
今回の丹羽悦子の選曲(4曲)は秀逸だったと思いますし、彼女が積極的にアイデアを出してくれたのが牽引力になりました。それによって、僕がナイロン弦を辞めて、ソリッドとセミアコになったのですから。前回は1曲も出さなかった僕も今回は2曲を出しました。そしてSeanは「Hey Joe」を、パート譜付きの斬新なアレンジで持ってきてくれたのです。僕の役目はアイデアの特徴を理解して、曲順などを考えることですね。
【hiro】Seanとの共演は特別なんです。だから回を重ねるごとに楽しみが増えるんです。それがSeanが3 Extraordinary Guitars と命名してくれたことに現れています。3つ個性が、とんでもなく楽しい音楽を生み出せる所以だと思います。今回は“FIRST”と言うお店もマッチしていました。日本独自の「ジャズ喫茶」と言う文化的な場所でしたから。
【sean】 In general, I believe the 3 Extraordinary Guitars combo is interesting to see because of the interaction. Each player’s character is unique, and we each come to the moment with enthusiasm. We are all interested in how the other will play and are just as delighted and surprised as the people watching. I have also said that while my 日本語 is not so good, and while Etsuko and Hiro can speak English much better, it is not their first language. Yet we all speak music fluently. People listening also hear a very clear conversation.
【sean】 3 Extraordinary Guitarsのコンビは、その掛け合いが面白いと思っています。それぞれのプレイヤーの個性が異なり、私たちもそれぞれ情熱を持って演奏に臨んでいます。お互いがどのように演奏するのか、皆興味津々で、観客と同じように喜びと驚きを感じています。また、私の日本語はあまり上手ではなく、EtsukoさんとHiroさんは英語の方がずっと上手ですが、母国語ではありません。それでも、私たちは皆、流暢に音楽を話します。聴いている人たちも、とても明瞭な会話を聞き取ることができるのです。
【丹羽】今後も、3人でサウンド面でも楽曲面でも一緒にクリエイトしていく形にしてゆきたいと思っています。3Extraordinary Guitarsトリオとは別に3人個々の演奏を知っていただけたら、より楽しんで頂けることと思います。そして是非、ライブでお待ちしております!

◼️最後に(編集者から)
seanさん、丹羽さん、hiroさん。取材のお誘い・ご協力ありがとうございました。あまりギタートリオの内情を伝えるコンテンツは見たことがないので、希少なインタビューとなりました。
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