断線ケーブルを処分する前に

これまでケーブルの自作には手を出しませんでした。理由は次の通り。
①自分が処置するハンダに全く信用がおけない、②単にパーツを集めて組めば良いという世界でもないはず(懲り出すとキリがない)、③時間が勿体ない(ギター弾く時間に充てたい)。

そもそも、頻繁にケーブルを買い替えることもないので、慣れないことに時間を割くより、プロが作った安心できるモノを購入するほうが合理的。選び方については、過去に記事も書いているので、リンクを貼っておきます。

「ケーブル選び❷ 誰も失敗しない方法」
https://jazzguitarnote.info/2020/10/07/cable-2-mycable/

私はこれからもプロが作ったケーブルを使うつもり。なのですが、今回ちょっとだけ禁断の世界に足を踏み入れることにします。

◼️何故、モンスターケーブルは断線してしまったのか

ことの発端は、暫く使っていなかったモンスターケーブルが断線していたことに始まります。私は学生時代にPA屋さんでアルバイトをしていたこともあり、ケーブルを使うたびに「8の字巻き」しているのです。激しく動き回るステージ演出も皆無ですし、これまでも断線に見舞われたことがない。

10年以上使ってるから経年劣化の可能性はあるも、外見はいたって綺麗、傷ついた形跡もなし。何が原因でモンスターケーブルは断線してしまったのか?

知らぬ間に、何かしらの負荷をかけてしまったのかもしれない。ケーブルの端から少しずつ切っていけば、どの辺りが、どんな風に断線しているのか、分かるかも? そんな原因究明に向けた解剖実験のような気分で、ケーブルの補修をしてみることにしました。

◼️秋葉原、オヤイデ電気へ

4月のとある日、秋葉原に行く用事が入り「ケーブルと言えば」のオヤイデ電気に出向きました。故・小柳出 一二さんが昭和27年に創業された、電線を専門にする、創立70年の会社です。

オヤイデ電気さんは、知名度の割に店舗は小さい。狭い店内に5〜6名の店員がいて、所狭しと忙しそうに働いていらっしゃいます(本社は別にあります)。多くの方が、伝票見て部材を集めてパッキングしている様子だったので、店舗での接客販売よりも、ネット販売が主力なのかもしれません。

◼️購入したもの

○ハンダごて

ハンダごては、出力の大きさによって3種類、売られていました。店員さんにケーブルの修理目的だと伝えたところ、40Wのものを薦められました。

・白光HAKKO RED 40Wはんだこて No.502
 (40W、こて先φ4X70mm)税込¥1,045-

ケーブルのハンダには40Wで良いそうです

○ ハンダ

以前、ケーブルメーカーにお邪魔して弾き比べをさせて頂いた際に、電線の選択や構造設計によって、こんなに出音が違うものなのか、と感心したことがあります。

しかし正直なところ、ハンダの違いについては聞き分ける自信がない。ピュアオーディオを追っかけている方ならば判別できるのかもしれないのですが、アンプ・ギター・小屋の環境など、より音色に大きく影響する因子が多く、細やかな配慮も消し飛びそう。

ということで、違いもよく分からないまま、ギターケーブル向きとされるモノを購入しました。

・Kester “44” 1m 税込¥220-

【Kester “44”(オヤイデ電気HPより)】
・エレキギター内部配線、ベルデンの純正ケーブルなどにも使われている
・無鉛半田に比べてレンジ控えめ、高域は耳障りの良い滑らかな音質に。
・特に”中域の密度”が多く得られるのが特徴。
 程良いローファイ感があり、低域と高域が若干落ち着く傾向あり。
・音のスピード感は控えめ。出音が塊の様にまとまる傾向あり(かまぼこ型の音質傾向)
・一般的な共晶ハンダと同じ構成の為、融解しやすく、作業性に優れる。

○量り売りケーブル

今回はモンスターケーブルの補修が目的なのですが、折角、秋葉原オヤイデまで足を運んだので、量り売りのケーブルも購入し、1本自作することにします。

ケーブル屋さんなので、色々と種類を扱っていらっしゃいます。とはいえ、その場で弾き比べるといったことは出来ません。公開されている商品説明から良さげな「QAC-222G 赤」を買ってみました。

・NEO by oyaide (オヤイデ電気) QAC-222G 赤 税込¥2,310-(@770×3m)

【QAC-222G(オヤイデ電気HPより)】
・現代の音楽の持つレンジ感をあますことなく表現。レンジとダイナミクスをチューニング。
・作業性を考慮、ケーブル外径を6.0mmに。
・第一種OFCを硬化したHC-OFCを採用したQAC-222をさらにアニール調整などを施しギター/ベースに最適化チューニング。
・シールド編組率90%以上でノイズをシャットアウト。
・LDPE内部シースとPE絶縁体が生み出す優れた定位感とクリアサウンド。

○プラグ(モノフォンプラグ)

新作するケーブルは、自宅でのルーパー接続用に、S型とL型のプラグにします。一方、修理用のモンスターケーブルは、そのまま両端ともにS型プラグを使用します。

プラグにもブランドが色々あるようで、オヤイデ店員さんに違いを聞いたところ「ぶっちゃけ、見た目です(笑)」という回答。至極納得して「NEUTRIK NP2X」「NEUTRIK NP2RX」を選びました。

・NEUTRIK NP2X 6.3mmモノラルフォンプラグ 税込¥462-
・NEUTRIK NP2RX L型6.3mmモノラルフォンプラグ 税込¥627-

【NEUTRIK NP2(オヤイデ電気HPより)】
・NEUTRIK製ニッケルメッキコンタクトの6.3mmモノラルフォンプラグ。
・PXシリーズは完全プロフェッショナル仕様のフォンプラグ。
・音質、耐久性に優れ、他のシリーズ同様チャック方式を採用、ケーブルを確実にクランプ。
・作業性・工作性は非常に優れており、比較的簡単に加工できる。

◼️ライブ終わって、ようやく作業着手

先週5月14日に、久しぶりのライブが終わりました。反省箇所は色々とありますが、2管をフロントに置いたゴージャスな編成。ジャコの曲もあったりして楽しかったです。

ひと段落ついたので、作業することにしました。まずは下調べと、モンスターケーブルのプラグを外してみたところ、片方のハンダ部分が外れていることが判明。

電線途中で断線していると思い込んでいたのですが、初歩的なミスです。プラグの緩みを締めた際に、ケーブルとプラグを固定せずにおこなってしまい、ハンダ部分までネジ切ってしまったのでしょう。これでは音が鳴る訳がない。

簡単なハンダ付けだけで、ケーブル1本を無駄死にさせなくて済みそうです。ケーブルを切り刻む必要も無くなった。実験をおこなう前から、成功が分かっている感じ?メデタシメデタシ。

◼️作業写真

ハンダのやり方は、丁寧な解説動画がYouTubeに多くアップされているので、それらを参照いただくとして、ここでは割愛します。

○ モンスター Prolink STANDARD 100 3m(断線修理)

まずは断線ケーブルの補修から。やっぱりハンダは苦手です。まるで美しくできない。出音にも影響するのかしら。

○ オヤイデ QAC-222G 赤 3m(新作)

(写真)2芯になってました。その分、束ねにくい。
(写真)S型プラグ:酷いハンダ。失敗してやり直しました。
(写真)L型プラグ:スライドさせてセットします
(写真)皮剥ぎをカッターでおこなった残骸。完成品。

ハンダの出来が酷いな、と思っていたら、案の定、ちょっと取り回しただけで断線してしまいました。ハンダやり直し。繰り返してやれば慣れるのでしょうが、遠い道のりとなりそうです。

◼️最後に(編集者から)

今回、ケーブルの修理と新作についてリポートさせていただきました。

(1)ケーブルの補修について

プラグ部分の断線による修理であれば、自分でやってみるのも悪くない。ハンダゴテ/ニッパー/カッターナイフがあれば、追加で材料を揃える必要もない。作業も直ぐに終わります。

(2)ケーブルの自作について

自宅練習用セットのケーブル取り回しで不便に感じていたところ、自作ケーブルではS型とL型のプラグにすることで解決しました。

応用としては、パッチケーブルなど、長さを自由に調整したい場面では有効な手段となるはず。必要な長さや適したプラグで製作が可能なので、ボードを綺麗に納めることができそうです。完成品のケーブル買うより、断然、材料費は安いですし。さほど作業時間も掛かりませんでした。ハンダ作業の面倒を除けばね。ご興味ある方はどーぞ。

この先も、そんなに頻繁にケーブルを買い替えたり、修理する機会も無さそうで、次にチャンスが訪れるのは何時になることやらですが、久しぶりの実験記事は予想以上に楽しい作業でした。

最後までお付き合いありがとうございました。

One comment to “断線ケーブルを処分する前に”
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