達人に聞く vol.21 中牟礼貞則さん

「達人に聞く」連載の第21回は、ジャズギタリスト界のレジェンド、中牟礼貞則さんです。取材時点で89歳ながら、毎週何本も、全国で精力的にライブを開催中。それもお決まりのセットを繰り返すような内容ではありません。ジャズらしく、多様な演奏者と即興による共演に拘っていらっしゃるのです。

プロ活動歴70年。演奏するからには、自分のジャズ道に拘り、これからも進化を目指す姿勢。その生き様だけでも充分なメッセージがありますね。

では、いつもの質問をお聞きしてみたいと思います。

◼️始められない時、集中できない時の切り札は?

集中できない時は止めればいいんじゃないですか。ギターに縛られないで、他の楽器を聴いてみて興味を引き出してみたりね。集中できない時にやってもしょうがないから。

撮影:平口紀生(papa Hiraguti pictures)

◼️理論を実践に昇華させるには?

理論と実践は一体感がないと弾けないと思います。

一番大事なのは、ギターじゃない楽器とのハーモニーの習得。ピアノが入った音楽を沢山聴くこと。テナーサックスなど、シングルトーンが出る楽器、メロディを司っている楽器の音楽もいっぱい聴く。特に理論と実践の一体感という意味では、求められるところだと思いますね。

撮影:平口紀生(papa Hiraguti pictures)

◼️いまの自分を乗り越えるコツ

そもそも乗り越えるほどのピークに、自分が達していることが無いですね。だから「自分を乗り越える」というような状況にはならないんじゃないでしょうか。さらには、乗り越える「自分」なんて、誰にも分からないですよ。

質問の意図としては、良い音楽家として演奏するためには、ということですよね?まずは自分をつくる、ということのほうが大切。先だからね。

意外と、色んな楽器と共演すること、一緒に演奏してみることが大事です。ドラムが入ってベースが入って、トロンボーンが入って。。色んな楽器と一緒に演奏することで、自分のどういうところが長所で、どういうところが欠けているかが良く分かってくると思うんですよね。

自分だけで弾いていると、いわゆる四畳半タイプの音楽になってしまいます。ギター同士でもいいけれど、なるべくだったら、ギターじゃない楽器と一緒に共演をすると良いと思いますよ。一般的には、それは大変なことでしょうけど。

プロのミュージシャンも同じです。色んな方と色んな風にセッションを重ねている人たちは、圧倒的な違いが出てきます。運もあるけど、いいミュージシャンに出会うこと。一緒にやる人がどれだけ質の良い音楽をやっている人かというのは、相当大きな問題になってきます。

良い音楽家を目指すなら、ひとつの中に凝り固まっていなくて、自分以外の人から引っ張り出されるような存在を心がける。また、自分以外の人たちから、自分にない資質を吸収するとか。そういう関係がお互いにあると良いですよね。

撮影:平口紀生(papa Hiraguti pictures)

◼️ 中牟礼貞則さんプロフィール

1933年3月15日生まれ。鹿児島県出水市出身。18歳で上京し青山学院大学へ進学、1952年、在学中にプロデビュー(19歳)、米軍キャンプでの演奏やスタジオミュージシャンとして活動。穐吉敏子や渡辺貞夫らを育てたとされる銀座ファンタジアでのステージにも参加する。1958年スイング・ジャーナル批評家選出オールスターズに選ばれレコーディングが残されている。高柳昌行(g)とは一時同居するなど切磋琢磨を重ねた。
当時キャバレーで活動していたミュージシャン達が集い、高柳昌行が中心となって日夜実験的な演奏が繰り広げられ(新世紀ジャズ研究所発表会)、金井英人・富樫雅彦・菊地雅章・山下洋輔・稲場国光・日野皓正らとともに中牟礼も参画。1963年には「銀巴里セッション」として収録が残されている。
1965年、渡辺貞夫のボサノヴァ・バンドに参加。1967年には初のリーダーアルバム「Guitar Samba」(2007年にCD化再発売)を発表した。ヤマハのジャズ・スクールでは、渡辺貞夫の紹介で渡辺香津美を指導。1979年にはバーニー・ケッセルと日本国内ツアーを実施した。
1970年代に入る頃からリーダー活動が活発化。1979年「Live at Shiny Stockings」1999年「Inter Cross」、2001年「Remembrance」、2020年「Detour Ahead ; Live at Airgin」を発売している。多くのジャズメンのアルバムにも参加、多数の作品を残している。2016年には中牟礼を慕う岡安芳明(g) の依頼でデュオアルバム「Guitarist」を発表。2021年「中牟礼貞則/孤高のジャズ・インプロヴァイザーの長き旅路」出版。
2012年、村上ポンタ秀一・金澤英明の呼び掛けで、豪華メンバー共演による「We Love MUREsan」がリリース。2022年「We Love MUREsan again」のリリースが予定されている(4/25-26公開録音、8/10発売)。
今年2022年で演奏生活70年を迎え、現在も全国で精力的な活動をおこなっている。http://www.aoki2.com/zest/zest.html

◼️写真提供御礼:平口紀生さん

中牟礼さんのステージポートレイトを継続撮影しているフォトグラファー平口紀生(papa Hiraguti pictures)さんより素材写真をお借りすることができました(平口様、ありがとうございます)。

◼️最後に(編集者から)

「いまの自分を乗り越える時の、乗り越える『自分』なんて、誰も分からないですよ」というコメントをいただいた時は、ハッとさせられました。そんなご指摘を頂きながらも、設問の主旨を読み替えてくださって、優しくコメントをくださりました。

共演を拡げる、仲間を増やすための秘訣をお聞きしたら「積極的に出掛けて参加することじゃないでしょうか」と、至極真っ当な回答が。コロナ縛りもそろそろ明けてきそうな気配ですし、私も積極的に足を運んでみたいと思います。

中牟礼さん、インタビューご協力ありがとうございました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。