「ギター3本のトリオ」は、たまに見かけたり、自分自身も出くわすアンサンブルのフォーマットです。ご経験ある方も多いのではないでしょうか。
特に意図して仕込まない限り、鍵盤やドラム/ベースなどの楽器で、同じパート3人だけが揃って同時に登壇することはそうそう無いので、ギター特有のフォーマットとも言えるでしょう。管楽器だけの編成も見かけますが、コード楽器ではないため、ニューオリンズ系ジャズのようなジャンルに限定されてしまっている印象です。
そんなことで今回は前後半の2回に分けて、「ギタートリオ」をテーマに記事を進めます。
◼️ジャズの枠を超えたギタートリオ
2025年11月、前回の取材(2025年1月)から1年も経たずして、Sean Harknessさん、丹羽悦子さん、Hiro Yamanakaのギタートリオ3 Extraordinary Guitars復活ライブのお誘いを頂きました。

実力派3人の演奏はエキサイティング。ジャズならではの、相手の出方を見て、その場で即時判断し、臨機応変に対応されている部分が大きいことは確かですが、事前の擦り合わせ有無や判断に至る思考など気になるところです。

そんなことで「ギタートリオ」における気遣いについて、御三方に話を聞きます。Sean Harknessさん(以下敬称略:sean)、丹羽悦子さん(以下敬称略:丹羽)、Hiro Yamanakaさん(以下敬称略:hiro)、宜しくお願いします。
◼️ギタートリオならではの面白さ
【sean】 The approaches we have talked about so far here are how three guitar players interact with each other. For people interested in guitar, there’s a lot to see in this format. However, when only one guitar is playing with other instruments it is a different dynamic. Someone else is already establishing rhythm [drums], someone else is providing low frequency support [bass], and another person is quite often also playing chords [piano] and melodies [horns, reeds, strings, vocals, etc]. How one approaches the guitar in that setting is going to be different than how they approach playing with other guitarists. There is still a great need for personal awareness, listening, knowledge of appropriate choices, just with bass drums, etc those choices will be different ones.
【sean】田中さん(編集者)、今回も来てくれてありがとうございます。取材のテーマ「ギタートリオ」も興味深いですね。ギターに興味のある人にとって、 3人のギタリストがどのように互いに絡み合うかという点は注目するところです。
ギター1本だけが他の楽器と演奏する場合は、全く異なるダイナミクスが生まれます。他の誰かがリズム(ドラム)を刻み、他の誰かが低音域のサポート(ベース)を提供し、さらに別の人がコード(ピアノ)やメロディー(ホーン、リード、ストリングス、ボーカルなど)を演奏することもあります。このような状況でギターにアプローチする方法は、他のギタリストと演奏する場合とは異なります。ベースドラムなど、個々の楽器の音色に合わせ、適切な選択に関する知識や、個々の意識、聴感、そして適切な選択に関する知識が不可欠です。
【hiro】私にとって、このギタートリオ3 Extraordinary Guitarsはエキサイティングでチャレンジフルなチームです。少し今回のライブまでの経緯を話しておくと、2016年にSean Harknessが来日する時に、当時の友人から紹介されたのが彼との出会いです。翌2017年にも来日される時に、Seanから直接連絡があり、僕が幾つかブッキングを担当させて頂きました。両年共にDuoだったのですが、Seanがスチール弦のフラットトップを持参するとのことでしたので、僕はナイロン弦を迷わず選びました。とても自由な雰囲気での演奏でしたね。音色が異なることも良かったのかと思います。
2025年の1月にはギター3人、ギター4人でのライブとなりましたが、3人と4人とでは選曲や構成で気をつける点が全く違うんです。組み合わせのヴァリエーションでは4人の方が選択肢は増えますが、4人が全員一緒に演奏する曲はある程度限定して、ヴァリエーションで楽しんで頂けるような工夫が必要だと思いました。この時も両日とも僕はナイロン弦を、Seanはスチール弦で、丹羽悦子は3人の時はフルアコで、4人の時はセミアコ、井上智さんはフルアコでした。これは丹羽悦子の選択だったのですが功を奏したと思います。一方、3人の場合は組み合わせを気にせずにShowを構成することが容易になります。
【丹羽】hiroさんにお誘いいただいた、このユニットは、私にとっても貴重な機会になっています。今回、11月のライブ前に、Seanさんはアコースティックギターを、そしてヒロさんがマルキオーネのセミホロウをご持参とのことを伺っていました。で、私は前回1月の2公演を思い出し、今回はGibson ES175Dを選んでみました。
【丹羽】私が持っているフルアコの中で、Gibson 175は一番胴厚で、アコースティックっぽいサウンドも出せるかなと思っていたのが選んだ理由です。イメージしていたサウンドはアコースティック感と空気感が出せるフルアコのサウンドです。ペダルもReverbのみで。最近特に気に入っているのがMXRのreverbです。アンプは今回はDV MARK JAZZ 12でした。
【Sean】The first thing I think of is that we each have our own ‘voice’ on the instrument. Physically the way we hold it and touch it. Our personalities, the music we have inside ourselves and what we each want to hear when we play. Our life experiences and preferences shape our choices. Inherently we will sound different.
And that’s all if we had exactly the same guitar in our hands. At Jazz-First we each had very different instruments …
【Sean】そう、(丹羽)悦子さんの言う通り、今回のJazz-Firstライブでは、それぞれ全く異なる楽器を使っていました。ただ多くのトリオ演奏では、演奏者が同じギターを手にしています。そんな時に、まず私が考えるのは、楽器に対して私たち一人ひとりが独自の「声」を持っているということです。楽器の持ち方や触り方といった物理的な表現方法。私たちの性格、心の中に秘めている音楽、そして演奏時に聴きたいもの。人生経験や好みが、私たちの選択を形作ります。必然的に、私たちはそれぞれ異なる音色を奏でるのです。
【hiro】確かに、フルアコ3人のトリオは古くから現在までありますが、不思議と言うか、当たり前と言うか、ギターって弾き手によって基本的な音色が決まるので、その出音を聴き比べるのも楽しみですね。これまで色んなギタートリオが現れてきましたが、Ovationが一世を風靡していた頃は、スチール弦とナイロン弦の組み合わせが当時は目新しく感じましたよ。
【hiro】ギターの種類の違いによる音色の違いを活かすと言う点では、ソリッド・ギターをどう使うかによる所が大切な気がします。ソリッドで歪みを使うと言う方法もありますが、個人的にはアンサンブル上でのミックス感で歪みが浮いてしまう懸念もあると思います。ソリッドのクリーン音を活かす方向が良いのかなと感じます。

◼️「共演者の出方」を聴き、自分の場所をつくる
【Sean】 The next thing that helps us ensure we don’t clash is the way we listen to each other. It’s important to find a place in the music where we compliment the moment, not get in the way. For instance, if she is playing a melody, and he is strumming a rhythm in the lower register, I will find higher voicings, triads, or arpeggios that add a layer. Or maybe I’ll play the bass line. Or maybe, just maybe, I’ll stop playing and let the music breathe for a moment. Silence is always a choice.
【Sean】音色の次に、お互いの音のぶつかり合いを防ぐ上で重要なのは、お互いの聴き方です。音楽の中で、邪魔をするのではなく、その瞬間を補完する場所を見つけることが重要です。例えば、(丹羽)悦子さんがメロディーを演奏し、hiroさんが低音域でリズムをかき鳴らしている場合、私は高音域のボイシング、トライアド、アルペジオを使ってレイヤーを加えます。あるいは、ベースラインを弾くかもしれません。あるいは、ひょっとすると、演奏を止めて音楽に少しの間、息づかせてみるかもしれません。静寂は常に選択肢の一つです。
【Sean】 Overall the goal is to find a sonic area that isn’t already occupied. Which register, what kind of activity? If someone else is very active, perhaps it would be best to contrast that with simple patterns that only appear every two bars. If no one is laying down a solid rhythm, then maybe that’s what you should do? If the middle register is already occupied, find a higher voicing, or single note bass line, or “percolating” a static note like old funk. Try developing steady rhythm with your hands on the guitar body, imitating conga patterns…there are so many choices. Again, silence is one of them!
【Sean】全体的な目標は、まだ誰も使っていない音域を見つけることです。どの音域で、どのように演奏しているのか?他の誰かがとても活発に演奏しているなら、2小節おきにしか現れないシンプルなパターンで対比させるのがベストかもしれません。もし誰もしっかりとしたリズムを刻んでいないなら、あなたがそうするべきかもしれません。中音域が既に埋まっているなら、もっと高いボイシング、単音のベースライン、あるいは昔のファンクのように静的な音を「パーコレーション」させてみましょう。ギターのボディに手を当てて安定したリズムを刻んでみたり、コンガのパターンを真似してみたり…選択肢はたくさんあります。繰り返しますが、沈黙もその一つです!

◼️前半を終えて(編集者から)
長文になってしまったので前半はここまで。同じ楽器を使うギタートリオならではの気遣いが伝わりました。
ギターならではのトリオ編成ですが、残念なことに、ギター同業者が3人も揃うと「速弾き合戦(体育会系)」や「音数詰め込み合戦(自己主張系)」になってしまうことが、プロのライブやセッションでも散見されるように思います。今回、皆さんのお話をお聞きして、ギター弾きとしては、自己中心や身内ノリになってしまわないよう、肝に銘じておきたいと思いました。
後半記事も是非、お立ち寄りください。
https://jazzguitarnote.info/2026/02/03/guitartrio-2
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