ケーブル選び❷ 誰も失敗しない方法

前回の記事でケーブル選びのコツ「愛せる作り手を選ぶ」をご紹介しました。

今回は続編です。

例えば、フルアコでクリーントーンで弾く場合、使えるアンプとして、アコースティックギター用やベースギター用も選択肢に入ってきます。ケーブルの場合も可能性ありそうです。

私は、説明文や動画、周波数の図形など見ても、ケーブルの違いが想像できません。ピッキングに対する反応やギター/アンプとの相性などは、弾いてみないと確かめようもないし。でも普通の楽器店は、弾き比べ出来る雰囲気ではないですよね。

■各ケーブルの開発コンセプト

そもそも作り手は、どういった意図で商品構成を組み立てているのか。お話をお聞きしたら、選び方のヒントになるかも。連載2回目は、KAMINARI GUITARSさんにその辺りを聞いてみます。

インタビューにご協力くださったのは前回同様、代表取締役の橋本勝男さんと、技術担当の山口博司さん。ご協力ありがとうございます。

橋本代表

KAMINARI GUITARSさんは、メイン商品として4種類のケーブルを販売されています。

▶︎ ①エレクトリックギター専用ケーブル

1)HP掲載説明

(シングルコイル)低音域の乾いた張りのある音色と、太く存在感のある高音域を得るために、中音域のバランスに注目して設計。

(ハムバッカー)音がこもりがちなため、ワイドに前に抜けていくという本来のポテンシャルを十分に引き出すよう配慮。

2)補足コメント

「エレキギターは、パワーに期待すると、痛い部分が出てきてしまう。痛い部分を押さえ込むと籠った感じになるので、低域のハリの音を出してバランスをとっています」

▶︎ ②エレクトリックベース専用ケーブル

1)HP掲載説明

従来のベース専用ケーブルにありがちな、低音域を過剰に上乗せする方法(バンドアンサンブルの中では輪郭がぼやけてしまう)ではなく、中音域をタイトに設定。本来の自然な低音域と高音域のパワー感を生む。

2)補足コメント

「ベーシストは弾いてからアンプから音が出るまでのタイムラグを気にされます。よって、立ち上がりを良くすることに徹しています。逆にルーズなスタイルでギターを弾く人は、敬遠されるかもしれません」

▶︎ ③マージービート60′sケーブル

1)HP掲載説明

1960年代初期・英国、マージービート・ムーヴメント。当時のアーティストたちが使用していた細身のケーブルをイメージ(4.3φ)。ホロウ構造のエレキギターやベースとのマッチングを図り、中域にコシがあり、輪郭のはっきりした音質を実現。

2)補足コメント

「昔の音、古く良き音の再現を目指しました。当時のアンプは30W、ノイズが酷かった。そうした現代との条件違いを考慮して、現代に再現しています」

「完全にハコモノ狙いで作りました。編組シールドの編み込みを無くすことで、細さを実現、60年代のイナタイ音が出ます。奏でる感じの演奏スタイルの方に選んでいただいています」

「細いので耐久性に不安があるかもしれませんが、返って丁寧に扱っていただけるのか(笑)、修理の問い合わせは最も少ないです」

▶︎ ④アコースティックギター専用ケーブル

1)HP掲載説明

ギター本来のレンジと暖かみのあるサウンドを実現。酸化物を含まない無酸素銅で作られたオリジナルOFCケーブルに、NEUTRIKプラグの組み合わせ。豊かな低音域と中音域に加え、シャキっとしたタイトな高音域。柔らかで奥行のあるサウンド。

2)補足コメント

「アコースティックギターはピエゾマイクで拾います。ピエゾマイクはブリッジの下にあり、コンデンサマイクと異なり、ボディの振動を拾って音に変換する構造になっています。したがってハイファイにしてしまうと、生の音と違う音が出てしまう。秦基博さんをはじめ、第一線で活躍するミュージシャンのみなさまから、こうしたジレンマを解消できないかと相談されたことが、開発に着手する契機となりました」

「生音アコースティックギターは、多くの場面で、歌とミックスして出力します。このケーブルは、歌の音域と被って邪魔してしまう帯域を避けた設計にしています。歌とのバランスをとりやすくしている訳です」

■フルアコでクリーントーンを出したい場合は?

フルアコでクリーントーンを出したい場合のオススメを聞いてみました。

橋本代表

橋本代表「ジャズにも多様なスタイルがあります。ミュージシャンによって、好む音、出したい音があるはず。どのケーブルも可能性がありますね(笑)」

橋本代表「自分の音を探求していく際に大切なことは、ひとつのジャンルにこだわらないこと。作り手からも提案をしますが、それはスパイス的なものでしかない。自分を拡げてみる意味で、様々なケーブルを試してみて欲しいです」

山口さん「カールコードはギタリスト用に作ったのですが、実際は殆どベーシストが使っています。アコースティックケーブルは、アコースティックな方々が使ってくれていることは勿論ですが、一方で、ラウド系の人たちも結構使ってくれています。著名ギタリストが、ベースケーブルを使っているケースもあります」

山口さん「我々の意図と違った使われ方が生まれてくる。ミュージシャンの人たちが開拓していってくれるのです」

橋本代表「ジャンルの中だけで発想していては、新しいものは出てきません。ぜひ、ジャンルを飛び越えてアンテナを張って、新しいことにチャレンジして欲しいです。私たちが、ミュージシャに学ばせてもらうことも多いです」

言われてみれば、もっともな話。ケーブルの選び方に正解なんて、ある訳ないですね。フリダシに戻ってしまいました。

■耳に自信のない方にも朗報

そんな貴方に朗報です。KAMINARI GUITARS 横浜店では、試奏ができます。

自分の耳に全く自信が無くても「コレが好き」は分かります。店員の方から解説を聞けば「自分の好きな音は・・・なんだ」ということが、逆に見えてくるかも。なにせケーブルを作っている会社の直営店なので、これほどの安心はありません。

KAMINARI YOKOHAMA
11:00 – 20:00、横浜市中区山下町81、045-319-4772

ケーブル選び2つ目のコツは「誰も失敗しない方法」、すなわち「実際に聴き比べて、好きな音がするケーブルを選ぶ」です。理論や根拠も不要。これは失敗のしようがありません。

遠方は川越・所沢からも、ここ横浜中華街まで試奏に来られるそうです。台湾でも販売しているため、観光ついでに聖地巡礼として訪ねてくる方もいらっしゃるとか。

朗報にも、唯一の難点があります。

店内にフルアコの常備が無いのです。「自分のギターに合ったケーブルを追求して頂く意味では、ご面倒おかけしますが、ご自分のフルアコをご持参頂くのが確実です」とのこと。

■連載(2/2)を終えて

ケーブル選びのコツ②は「誰も失敗しない方法」でした。

訪問前は、アコースティックギターケーブルを購入しようかな、と当たりをつけていたのですが、立ち上がりの良さ、バランスやクリアさから、予想に反してベース用ケーブルを購入しました。弾き比べて選んだので、納得感のある買い物ができて満足です。

ケーブルを新調しようと思っている方。横浜中華街で美味しいもの食べるついでに、ギター持参の上、自分のケーブル選びにKAMINARI GUITARSさんを訪ねてみては如何でしょうか。連載はココラで終わりです。

4 comments to “ケーブル選び❷ 誰も失敗しない方法”
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