ここ数年で、ギターのメインを、013(フラットワウンド)セットのフルアコから、010(ノーマル)セットのセミアコに、アンプのメインを、DV MARK LITTLE JAZZ(60W)からRoland Blues Cube Stage(60W)に切り替えました。ピックもオニギリからJazz3に変更しました。いづれも用途によって使い分ける前提ではありますが、目指す音に少し近づけた気分になっていました。
ところが最近、知人から、音がジャズらしくないとのコメントを頂きました。ギター講師をされていて、私の何百倍もギタリストを聴き比べてこられた方です。自分としては進化しているつもりだったので、そのお言葉は密かにショックでした。もっと客観的に自分の音を聴き、見定めないといけないぞと思ったワケです。
そんな背景もあって、「音づくり」についての連載を始めてみます。この無限に広くて深いテーマに、正解がないことは重々承知しています。結局は自分が正しいと思う音が正解であることも理解できます。そして、終わりの見えない探求にこそ、意味がある気もします。
十人十色なアプローチがある世界でもあるので、言語化に長けている方、独自の音を探求されている方を中心に、お話をお聞きしてゆければと思います。
◼️3つの共通質問
基本設定として、横串で回答を比較参照できるよう、下記の共通3質問にお答えいただく形にします。
・自分の音:レジェンドに寄せるか、または拡げていくか
・道具や奏法:自分にとって大切な道具、辿り着いた奏法
・現場にて:ステージやセッションで気遣っていること、工夫していること
◼️初回は藤井進一さん
最初にお話を聞くのは藤井進一さん。藤井さんのYouTubeをご覧になった方は多いと思います。ユニークな視点によるコンテンツも多く、参考になります。

では藤井さん、宜しくお願いします。
❶自分の音「トーンは音楽の本質的な部分なんだと思う」
「僕自身も、いわゆる“レジェンド”と呼ばれる先輩方のトーンに憧れて、そこに近づこうと試行錯誤した時期がありました。ジム・ホールやジョン・スコフィールド、パット・メセニーなど、やっぱりアイコン的な存在は数えきれないくらいいるわけです。そういった人たちの音を研究するのは、自分のプレイを高める上で大切なステップだと思います」
「ただ、自分は誰にもなれないと言うのもまた事実です。パットメセニーのギターをセッティングそのままで私が弾いても全然違う音だろうと思います。ですので自分のタッチとか楽器のセッティングとかと向き合って少しづつトーンを改善して行くと言った感じでプロとしてのキャリアを歩んできた気がします」

「いきなり良い音が出た!みたいな事は殆ど経験していません。今は昔より、よりトーンにフォーカスして練習する時間も増えました」
「最近はアコースティックギターを本格的に弾いているのですが、そちらではよりタッチがそのまま音色になる事から様々な学びを得て、エレクトリックギターを弾く時も良い影響があったと思います」
「本当に終わりが無いですけど、技術とか衰えた晩年にその人固有としか言いようがない音になっているレジェンドを見るとトーンって言うのは音楽の本質的な部分なんだろうなと言う気がします」
❷道具や奏法「ギターに勉強させてもらってる」
「21歳の時にプロとして仕事を始めた時に1957年のGibson ES-175を購入しました。このギターが自分の色々な要素を作ったギターだなと思います。いつ弾いても王道のウォームなトーンが出るギターで、このギターに助けられた事は数知れず。今でも非常に気に入っています」

「しかし今のメインギターはTaka Moro Guitarsのセミアコを使っています。私にとってはES-175で良いトーンが出るのはもう分かりきっている事なので、成長が無いなと思ってギターを変えました。まったく違うギターなので、このギターで良いトーンに対するアプローチとか、タッチの工夫とか、色々な事を学んでいます」

「色々な現場を踏む事で新しい経験をしている感じなので、ギターに勉強させて貰ってますと言う感じです」
❸現場にて「アンプの調整はギターと同等位に重要」
「会場の大きさ、響きがあるのか、デッドなのか、それらが非常に大きいと思います」
「後はアンプはギターと同等位に重要ですよね。バンドで出した時に適正な音量感を見つけるのも大切です。一番良いのは自分のアンプを常に持って行くって奴ですが、そう言う訳にもいかず、その場のアンプでどうにかする技術も必要ですよね」

「その場合はまずはハウらない事。次にバンドのベースとの兼ね合いを考えてベースの音量感の調節、それが出来たらミドルを調節して抜け感の調整、最後にトレブルを調節してギターの音色の調整。と言った順で調節します」
「ベースの音量感についてはアンプの置く位置も重要なので、底面をちょっと上げて斜めにするとか、小型アンプなら椅子に乗っけるとかしても良いですね」
◼️読者に一言
「読んで頂いてありがとうございました! トーンについてのインタビューだったのですが、自分自身色々と考え直すきっかけにもなりました。より良いトーンを出せる様にまた精進していきたいですね」
◼️藤井進一さん プロフィール

埼玉県出身
Music College MESAR House卒、卒業後はHARU、市野元彦に師事。
在学中より新宿Pit inn等Jazz Clubで活動を始める
2013年単身渡米し、NYにてLage Lund, Mike Morenoに師事。
同年1st Album “One Day in November”をAlleria Recordsよりリリース。
2020年赤坂Jazz Guitar Contest 準優勝。
2025年2nd Album “Bard”をリリース予定。
Jazz Guitar Lab運営。
Web Site https://jazzguitarlife.net/
YouTube https://youtube.com/@shinfujii?si=otBUnLaKfaYBFsbL
◼️最後に(編集者から)
藤井さんの関連コンテンツをご紹介させてください(編集者選です)。
フルアコで良い音を出すための3つのコツ
https://youtu.be/nFPs7MR5eGA?si=AygAVxhv6DO2zIJ0
ジャズギタリストのトーンとボリュームのセッティング
https://youtu.be/BFWKzJnlgdo?si=4WjCX-XAZnHX9_8-
ジャズギタリストがオススメする、ジャズギターアンプ厳選8
https://jazzguitarlife.net/ampchoice/
音づくりの奥深さを感じる内容ばかり。未視聴の方は、お時間ある時に、ぜひ覗いてみてください。
本取材での藤井さんのコメント「自分のタッチとか楽器のセッティングとかと向き合って少しづつトーンを改善して行く」には、多くの方が安堵し、共感されるのではと思います。
自分の音楽観や技術の変化、新しい音楽や道具との出会いも重なって、人生かけて磨かれていくものなのかもしれないですね。藤井さん、お忙しいなか、取材のご協力ありがとうございました。
以上、連載「音づくりの迷宮」第一弾、藤井進一さんでした。最後までお読みいただきありがとうございます。
(ご案内)xにて記事の新着をお知らせしています。https://x.com/jazzguitarnote