ハウリングvsグライコ

その昔、ホーンセクション(4名)入りのファンクバンドをやってたんです。

あるとき、ホーン隊を100人に増やしたら面白いに違いないと思い立ち、西麻布のSpace Lab YELLOW(1991年12月〜2008年6月)でライブを敢行することにしました。

100人の声掛けは、バンドのオリジナルメンバーに依頼。音大やジャズスクールの講師仲間や生徒さん、或いはライブやレコーディングの共演者など、ホーンならではの横の繋がりをフル活用。声掛けられた人たちは、ノーギャラにも関わらず面白がってくれて、目標の100人には遥か及ばなかったものの、50人のホーンメンバーが集まってくれました。

噂を聞いた別パートの人たちも参戦してきて、結局、ホーン隊50人にドラム2・ベース1・ギター2・鍵盤1を加え、総勢60人くらいの編成に。全く無茶でアホな企画でした。

箱が大きかったので、お客さんに生の迫力を伝えようと、客席(ダンスフロア)を囲む形でホーン隊を配置。さらに通常ステージから突き出す形でエプロンステージ(張り出し)を組んで、ファッションショーのようにソリストがウォーキングで客席まで出張っていく演出にしたんです。バンマスとして前準備も後処理も大変でしたが、目論見通りの楽しいライブとなりました。

(ようやく前置き)久しぶりのライブ

話変わって、今年2022年6月に、サックス2管をフロントにおいた7名コンボでライブをおこないました。鍵盤もいて、ギターも2本いて、ジャズとしては賑やかな構成です。

バンマスの内野さんのお導きで、ジャコパスなど、選曲もやりがいのある曲ばかり。ご一緒させていただいたメンバー構成では初ライブでしたが、楽しい時間を過ごさせていただきました。

小屋はこじんまりとしていて、客席30人くらい。前置きのファンクバンド出演者60名と比べると規模こそ小さいですが、アットホームな雰囲気で楽しかったんです。

疑いもなくフルアコで

前出の出演者60人ファンクライブには、予備機を含む「ストラト(ソリッド、シングルコイル)」2本で臨戦。後出の出演者7人のジャズライブには「フルアコ(GB-15)」で出演しました。一応、フルアコを使うには、それなりに理由がありまして。

・箱が鳴ってくれて、生音も出音も気持ちいい。電気で加工した音では表現できない、豊かな感じ。

・ストラトの010からのセットに対して、フルアコには013からのラウンドワウンド弦を張っている。その分、出音は丸く力強い。

・上に記した弦の太さから、フルアコでは物理的に安易なビブラートやチョーキングを入れられない。必然的にフレーズもジャズっぽいニュアンスが出る。

・フルアコはストラトと比較してスケール(ネック長)が短い。よってフルアコではストレッチなコードフォームが比較的容易。

・シングルコイルのピックアップ(ストラト)は良くも悪くも出音の線が細い。キレ重視のファンクには最適。ハムバックを載せたフルアコは、アンプ直結のウォーミーで太くて丸い生音を活かしたい時に有効。

事前リハでは全く問題なかったのに

さて、フルアコ1本、アンプ直結で臨んだジャズコンボのライブ。

小さな小屋にもかかわらずPAが入っていたため、全体音量はそれなりの大きさ。そして私の位置からは、目の前にフロントのサックス2人、また左後ろ直ぐにドラムセット。それぞれ伸ばせば手が届く距離。ステージ内は密な状態でした。

記事タイトルからして想像ついた方も多いと思いますが、まさにハウリングが起きやすい絶好の環境です。直前の音出しリハで、既にハウリ症状が出ていて、何か対策を打ちたかったのですが、持ち込んだギターはフルアコ1本のみ。手持ちでなんとかするしかありませんでした。

本番の状態は更に悪化。右手で弦を押さえていればハウリングは止まるものの、コンピングにしてもアドリブにしても、音を伸ばそうと、ちょっと右手を浮かせただけでゥワワーンとハウリングする状態。結果的に、右手・左手でコマメにミュートしながら弾かざるをえませんでした。

音量も絞り気味にせざるをえなかったので、後で録音を聞き直しても酷い音量バランス。音量やミュートに細心の注意を払って弾いていたので、お客さんやバンドメンバーはハウリングに気づいていないかもしれませんが、私的には大きく反省の残る現場となりました(楽しかったけど)。

どんな対策が取れたのか

60人のファンクバンドではハウらないのに、7人のジャズコンボでハウらせてしまう。事前のスタジオリハではハウリングの予兆はなかったので、完全に油断していました。では予測できていたとして、ハウリングを防ぐために、どんな対策を打てたでしょうか。

(1)フルアコに細工する

世界中で同じような失敗・苦労をされている方がいらっしゃると思いますが、フルアコ自体に手を入れる策としては、①fホールを塞ぐ。②ピックアップをWAXで固める。③ボディの中に詰め物をする、などがあるようです。しかしながら、折角のフルアコならではの心地よい鳴りに影響あること必至で、私はフルアコ自体に手を加える気になれないんです。

(2)アンプの向き、高さを調整する

今回のステージでは、アンプの置く場所に困り、フルアコの直ぐ右後にあった別のギターアンプの上に載せてしまいました。結果的に、至近距離から、ちょうどフルアコの高さで狙い撃ちする形に。その場で、場所や角度などの変更もままならない狭さでした。

(ここから本題)プロPA屋も使うグライコ

長い長い長い「前置き」が終わり、ココから、ようやく本題です。

PA屋さんは、リハ段階でイコライザーを使い、入念にハウリやすい帯域を確認・調整しハウリング対策をおこないます(主にボーカルマイクに対してのセッティング)。ではフルアコのハウリングに対しても、市販のイコライザーペダルを使えば効果あるのでしょうか。

まずはMXR M108S 10 Band Graphic EQを例に、帯域のことについて復習しておきたいと思います。聞き齧った情報をまとめただけなので、参考程度としてください。

50Hz:超低音、箱の鳴り、ギター低音弦(cf.6弦開放=82Hz)
120Hz:ギター低音弦(cf.5弦開放A=110Hz、4弦開放D=147Hz)
400Hz:ギターの低音弦(cf.1弦開放E=330Hz)
500Hz:ローミッド
800Hz:ミッド
4.5kHz(4500Hz):ハイ
10kHz(10000Hz):プレゼンス

フルアコやクリーンアンプを想定した場合、50Hzや1kHz以上の帯域までカバーしたほうが良いとする話があり、イコライザー導入の際は考慮したほうが良さそう。それならばと、ベース用のイコライザーペダルBOSS GEB-7を調達して試してみることにしました。

あまり期待していなかったのですが、そもそもイコライザー=調整自由度の高いブースターなので、意外に幅広く音色を操作できることが分かりました。どの帯域を触ると、どう音色が変わっていくのかの感覚を掴むにも有効かも。今後、色々と実験してみたいと思います。

一方、ハウリング対策ツールとしては微妙。無理矢理、スタジオでハウリ環境を作って試してみましたが、効果的な改善は見られませんでした。そもそもハウリング対策まで配慮して設計されていないでしょうから、期待するのは酷だったかもしれません。

ハウリングの周波数は環境によって可変するので、直前リハでハウリングポイントを探りあてて対処していく時間の確保も厳しいかも。さらにペダル型のパライコが、音色を損なわず、ハウリングをピンポイントで補正できる精度を持っているかも定かでありません。

予想できたことではありますが、実機を使った実験記事としては、成果薄い結果となってしまいました。

(おまけ)アンチフィードバック機能を使う

アコギ用のプリアンプZOOM AC-3 ACOUSTIC CREATORを所有しています。その昔、ガットギター用に買ってはみたものの(アコギは持っていない)、なかなか役立つ場面がなく、リハーサルも含めて実践で使ったことがありません(誰かに使ってもらっての機材人生だと思うので、近くヤフオクに出します)。

で、このAC-3にはアンチフィードバック機能が付いています。ハウリングしている帯域を自動検出してカットする機能で、本体正面のボタンを押すか、フットスイッチでもオンオフができる構造です。

以前にも試していて、また上記ジャズコンボライブの後にも、音楽スタジオでフルアコを使って実験してみましたが、ハウリングに関しては期待するほどの効果は得られませんでした。アコギをターゲットにしたエフェクターなので、設計が根本的に違うのかもしれません。実装されている機能なので条件次第では効果あるはず。ご興味ある方は、ネット上でリポートを探してみてください。

最後に 〜 禁断の世界へ

個人的にフルアコを選ぶ理由が色々とあってライブに臨んだ訳ですが、結果的に演奏に集中できませんでした(幸い、あまり周囲ではハウリング危機に気づかれていないものの)。

無理してフルアコを使ってもメリットが薄いので、6月のライブ以降、このセッションバンドでは、ファンクバンドで使用しているストラトで対応しています。一般的にはハムバックよりシングルコイルのほうが、構造上ハウリやすいと聞きますが、フルアコのハウリやすさは別格。ストラトならばホーンセクション50人の音量にも耐えてくれたので大丈夫でしょう。

そんなことで、今回の記事は「ハウリにくいギターで弾く」という新鮮味に欠ける結果のご報告となりました。そして、いよいよ腹をくくり、これまで縁のなかったセミアコの沼に足を踏み出すことにします。その辺りのことは改めてレポートさせてください。最後までお読み頂き、ありがとうございました。

One comment to “ハウリングvsグライコ”
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