個性を磨く❸竹田一彦さん

今年は、平年より遅く入って早く明ける、記録的な梅雨となりました。その影響もあってか暑さも尋常でなく、私が住んでいる横浜では、6月としては記録史上1位の最高気温を観測したそうです。そんな暑さが続く7月2日に、神戸まで出掛けてきました。

お邪魔したのは、神戸100BANホールで開催された、木村紘(ひろ)(ds.)さんリーダーアルバムの収録ライブ。そして、連載「個性を磨く」の第3弾は、そのライブにSPゲスト参加されていた竹田一彦さんです。

(写真)桃尾 郁

朝に横浜を出て、大阪で仕事を済ませて、神戸に着いたのは開演時間ぴったり、滑り込みセーフなタイミング。2回の公演をお聴きして、大阪にトンボ帰りという弾丸ツアーでしたが、遠方まで足を運んだ甲斐がありました。

共演者から見た「そのヒトらしさ」を語って頂く連載企画。早速、共演された皆さんからのコメントご紹介です。

◼️今回のクインテットライブを終えて如何でしたか?

○ 広瀬未来(みき)(tp.)さん

「日本が世界に誇るジャズギタリスト竹田一彦さんとの作品に参加できて、本当に幸せです。この企画を発案実行した木村紘のプロデュース力に脱帽です。メンバー全員の魅力が伝わるアルバムになったのではと思います」

(写真)桃尾 郁

○ 田中菜緒子(pf.)さん

「とても得る事が沢山あったレコーディングライブでした。リーダーの木村紘さんをはじめ、伊藤勇司さんはよくご一緒するリズム隊で、安心して演奏する事が出来ました。トランペットの広瀬未来さんはとても頼れる存在で、まさに引っ張ってくれるフロントです。竹田さんは生き様を見させて頂いたという感じで、1音1音に重みがありました」

「スタンダードを演奏する事の大切さを改めて感じたレコーディングでした。生のライブ感が詰まったCDが出来上がるのが楽しみです」

(写真)桃尾 郁

○ 伊藤勇司(b.)さん

「愛情と尊敬に満ちた素晴らしいステージに参加させて頂けて、最高に楽したかったです。CDの発売が待ち遠しいです!」

(写真)桃尾 郁

○ 木村紘(ひろ)(ds.)さん ※リーダー

「大袈裟ではなくこの半年間は今日のライブレコーディングのことをずっと考えていました。竹田さんと共演させていただくようになって8年くらい経ちますが、一緒に音を残したいという夢が素晴らしいメンバーと共に実現できて感慨深いです。予想以上のものが録音できたと思います。初対面のメンバーもいる初めての組み合わせでのライブでしたが僕の目論見が当たったなと言う誇らしい気分です(笑)。この音をたくさんの人に聴いてもらえるようにリリースまで頑張ります」

○ 竹田一彦(g.)さん

「木村紘くんのレコーディングは楽しかったですよ。あのホールは初めて行ったけど、感じのいいところでしたね。全員孫世代のミュージシャンとの演奏は新鮮に感じました」

(写真)桃尾 郁

◼️共演されて感じた「竹田さんらしさ」について、お聞かせください。

○ 広瀬未来(みき)(tp.)さん

「ライブが始まる前に、ステージにギターを置いたままだったので手元にギターが無い竹田さんは少しソワソワされ、エアギターでずっと指を動かしておられました。あのキャリアの長さでも本番に挑む緊張感、本当に勉強になりました。そして全く無理のない自然な演奏、ジャズと真摯に向き合うことの大事さを再確認いたしました」

(写真)桃尾 郁

○ 田中菜緒子(pf.)さん

「あまり沢山はお話にならない方でしたが、口にする言葉が全てユーモアに飛んでいて、楽しい方だなと思いました。私がナオピーとみんなに呼ばれているとメンバーが竹田さんにお話すると、ナオピーと呼んでくださってお茶目でした」

「演奏がいざ始まるとアンテナが張り巡らされていて周りの演奏もとても聴いてらっしゃる感じが伝わりました。でも良い意味で周りに影響されず、自分のスタイルを貫く姿がとてもカッコよかったです。粛々と音楽に向き合う姿を見て、私もそういう風に音楽をやっていきたいなと思いました」

(写真)桃尾 郁

○ 伊藤勇司(b.)さん

「個人的には今回初めてお会いしてそのまま初共演という形でしたが、お会いした瞬間から柔らかい雰囲気&軽いジョークでこちらの緊張を取り除いて下さいました。演奏中は竹田さんのギターからとてつもないスピードと説得力を感じましたし、背中から湧き出るオーラを感じる程でした」

(写真)桃尾 郁

○ 木村紘(ひろ)(ds.)さん ※リーダー

「とにかく演奏の音色、リズム、スピード感が凄まじいです。よく“いぶし銀の”とか言われるのですが、そんな生易しいものではありません。共演していて、一瞬でも集中を欠くと跳ね飛ばされるような緊張感です。一方話すとほんとに柔らかく優しい方です。ビルエヴァンスやケニーギャレットと共演した話など、非常に面白い話もたくさんしていただきました。」

(写真)桃尾 郁

◼️プロフィール

○ 竹田一彦(g.)さん

1936年生れ、奈良県出身。1960年頃から自己のバンドを率い、関西中心に活動。1975年に古谷充のアルバム「SOLITUDE」に参加。1985年、アルバム「GOOD LIFE」をリリース。1992年から西山満のグループに参加。以後彼と共に日野皓正グループ、ハンク・ジョーンズ・トリオ、エディ・ヘンダーソン・カルテットなど、多数のコンサートやライブハウスに出演。1998年、ジャズギター紳士録(キングレコード)に参加。1999年、サンディ・ブレア(Vo)とのコラボレーションアルバム「Sandi Blair Meets Kazuhiko Takeda」をリリース。2005年、寺井豊(gt), 上山崎初美(b)とのコラボレーションアルバム「16 strings 30 fingers」をリリース。2009年、リーダーアルバム「KAZUHIKO TAKEDA Live at JUST IN TIME」をリリース。2013年7月、Kazuhiko Takeda Trio 「I Thought About You」をリリース。
https://ameblo.jp/kazuhikotakeda/

(写真)桃尾 郁

○ 木村紘(ひろ)さん(ds.)※リーダー

1988年、兵庫県明石市生まれ。12歳のときドラムを始め、中学、高校では吹奏楽部で打楽器を担当する。2007年洗足学園音楽大学に入学し上京、東京、横浜周辺でジャズを演奏し始める。ドラムを大坂昌彦氏に師事する。2012年、洗足音楽大学を主席で卒業 し、アメリカのバークリー音楽大学の奨学金を得て留学。DrumsをRalph Peterson、アンサンブルをHal Crookに師事。2014年3月にはワシントンDCの全米桜祭りに小林香織バンド、曽根麻央バンドとして出演。2014年5月に帰国し、東京、関西 の両方で活動を開始した。ピアニスト栗林すみれのアルバム3作、トランペッター、ピアニストの曽根麻央のメジャーデビューアルバム、名古屋のバンドQuin’ Krantzをはじめ多数のレコーディングに参加。現在は自身のリーダーバンドをはじめ、曽根麻央バンド、駒野逸美カルテット、Quin’ Krantz、山本玲子Square Pyramid、藤川幸恵Trioなど様々なバンドに所属。 2021年にファーストアルバム“TREES”を発表した。
https://www.tunecore.co.jp/artists/Hiro-Kinura

(写真)桃尾 郁

○ 伊藤勇司(b.)さん

1991年、大阪府生まれ。高校ジャズオーケストラ部の指導顧問であった篠原正樹(tp)にジャズを師事、独学でベースを始める。間もなくして椎名豊(pf)トリオのメンバーとして来日したRodney Whitaker(b)に出会い、衝撃を受けた。在学中、同氏が教授を務めるミシガン州立大学やモントレー州選抜メンバーとのジョイントコンサートに加え、毎年モントレーにて開催されるネクストジェネレーションフェスティバルにもゲスト出演。2013年、拠点を東京に移し本格的に演奏活動を開始。現在は首都圏を中心に伊藤勇司トリオ、EniGmAなどのリーダーライブを精力的に行なうほか、曽根麻央(tp,pf,vo)トリオ、岡崎好朗(tp)グループ、多田誠司(as)グループ等をはじめ様々なグループやセッションに参加。2018年11月には椎名豊トリオのメンバーとして世界最高峰のドラマー Herlin Rileyとの共演を果たすなど、近年その活躍の場をさらに広げている。​2019年11月に1st アルバム[MySeasons]を発表。
https://bassist-jazz-0313.wixsite.com/yujito

(写真)桃尾 郁

○ 田中菜緒子(pf.)さん

福岡県久留米市生まれ。幼少よりクラシックピアノを弾き、桐朋学園大学ピアノ課に進学。在学中にブルガリア国際コンクールで1位を受賞。卒業後、ジャズの勉強を始める。2009年、Proteanを結成。都内を中心にライブ活動を開始。1st.アルバム「Protean」をリリース。2017年、初のメジャー初のスタンダード作品「I Fall in Love Too Easily」、2018年、地元久留米が詰まった作品「HOME」、2019年にジャズユニット村田中として「SCHOOL OF JAZZ」と、立て続けに作品をリリース。2022年には自身のオリジナル曲を収録したアルバム「Apreciation」を発表した。またPOPSでは、桜井和寿やGAKU-MC、C&Kなど著名アーティストのライブやレコーディングにキーボードプレーヤーとして参加。精力的に活動をおこなっている。
https://tanakanaoko.com/

(写真)桃尾 郁

○ 広瀬未来(みき)(tp.)さん

1984年生まれ。甲南中学と同時にトランペットを始める。在学中より関西各地でプロ活動を開始し、2002年「中山正治ジャズ大賞」「なにわ芸術祭新人奨励賞」受賞。 2003年New Yorkに渡り、フリーランストランぺッターとして活動。ジャズをはじめサルサ、ヒップホップ、ファンクなど様々なジャンルのフィールドで活動し、全米、ヨーロッパのライブハウス、ジャズフェスティバルなどに出演。自身のアルバムも2枚リリースし、各方面から絶賛を受ける。ニューヨークの新進トランぺッターをフィーチャーするフェスティバル「FONT」に自己のクインテットで出演。 2014年からは日本に拠点を移す。2015年「神戸市文化奨励賞」受賞。2017年「なにわジャズ大賞」「なにわ芸術祭新人賞」受賞。2018年にはMiki Hirose Jazz Orchestra名義でアルバム『DEBUT』をリリース。大阪音楽大学、甲陽音楽学院で後進の指導にも関わっている。
https://mikimusic.exblog.jp/

(写真)桃尾 郁

◼️取材メモ

自分の記憶力が信用できないため、お仕事ではやむなくメモ魔となっています。今回も無粋だなと思いつつ、ライブ聴きながら自分用にメモ取ってました。普段は非公開ですが、一部、ご紹介させてください。

「難解なフレーズも、自然に聴こえる。スケールとかアウトとか感じさせない自然さ。あくまでも歌があっての音選び」

「随所に竹田フレーズが埋め込まれている。竹田節が感じられる」

「リズムの緩急。印象的なパターン展開によるスピード感や高揚感。ちょっとしたことにも味がある」

「何も弾かない選択、弾いているようで音を出さない選択。共演者の出方、全体の音数や隙間の様子をみて、状況によっては伴奏を任せてしまう」

「前演奏者の拍手が収まるまでアドリブに入らない。周囲に気を配るのは共演者の音だけでなく、客席まで含めた場全体」

以上、拙いメモゆえ意味がどれだけ伝わるか不安ですが、備忘録のご紹介でした。

◼️(御礼)セッション取材

ライブにお邪魔しての取材は、とてもとても恐縮します。当たり前のことながら、ライブ現場では、お客さまやメンバー、或いは自分自身との対話が優先されるので、「取材」なんて余計なものは持ち込まないにこしたことはない。

一方、改めて思うのは、演奏家視点からすると、ライブはメンバー同士のことを最も意識・理解し合える場であるということ。アンサンブルを紡ぐ過程で、お互いにメンバーの「個性」が見えてきます。

ギターの場合、奏法やテクニックに関わる「個性」はよく見聞きするのですが、この寄り道ノートでは、「アンサンブルにおける個性」に着目しています。演奏スタイルや音色などの個人の領域に加えて、どんなアンサンブルを生み出しているか、という領域です。

そんなことで、心苦しさを感じながら、今回も、現場取材とさせていただきました。取材のご快諾ご協力を頂いた、竹田さん、木村紘さん、メンバーの皆さん、細井さん、李さん(神戸100BANホール)、改めて深く御礼申し上げます。

(写真)桃尾 郁

◼️最後に(編集者から)

前回、取材させていただいた中牟礼さんが1933年生まれの89歳、今回の竹田さんは1936年生まれの86歳。期せずして、連続して東西の大御所を取材させて頂く形になりました。90歳を目前にしてなお、ご自分のギターを追求されるお二人から頂けたメッセージは大きかったです。

今回の収録は、来年、年明け目処でリリースを予定されているそう。

CDになってしまうと、生の迫力こそ減じてしまうところもあるのでしょうが、ミックスダウンされた音源には、客席で気づけなかったことが見えてきたりして、新たな面白さがあります。楽しみですね。本アルバムのリリース情報は木村紘さんのサイトにて、ご確認ください(https://www.tunecore.co.jp/artists/Hiro-Kinura)。

また折みて竹田さんの生ライブ、聴きに行きたいなあ。理由つけて関西出張を作るしかないか。記事は以上になります。今回も最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。暑い日が続いていますので、皆さまもご自愛ください。

竹田さんギター

【ご案内】twitterにて記事の新着をお知らせしています。https://twitter.com/jazzguitarnote

2 comments to “個性を磨く❸竹田一彦さん”
    • ご指摘ありがとうございます。沢山の目で確認していても、見出しのような大きなコピーで校正漏れが出やすい、という編集における典型的なミスでした。間違えそうだからと、わざわざ付けたフリガナが、間違えそうな読み方になっている、という、お恥ずかしい誤りです。深く御礼申し上げます。

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