先週、喉が痛いぞと思っていたら、インフルエンザを罹患しました。熱が下がってからも、体調が戻るのに数日かかり、未だに本調子とは言えない感じです。そして来週にかけて、ここ数年で見かけない程の記録的な寒気が入ってくるとか。私が言っても説得力ゼロですが、皆さまも体調管理には充分お気をつけください。
さて、これからギターストラップについて記事を書こうとしています。しかしながら、特別な紹介ができるほど、私に知識・経験がある訳ではありません。これまでも、何回かの失敗を頼りに、場当たり的に選んできてしまいました。
私は、ギター1本につき、1本のストラップを付けっぱなしの横着派です。壁に吊っている時も、スタンドに立てている時も、ケースに入れて移動する時も。なので稼働しているギターの本数分、ストラップがあります。買って最初にギターに取り付けたら、経年劣化で買い換える必要が生じるまで、常に外さず、基本そのままです。
付けっぱなしにもメリットがあって、①一度、取り付ける時に調整してしまえば、長さの調整が不要。ギターごとに長さが固定され、立っていても座っていても、同じ高さ・同じフォームで演奏でき、姿勢による演奏への影響を最小限に抑えることができる。②毎回、ピンから着け外しした場合に起こる、取り付け部位のストラップのヘタリが防げる(落下リスクを抑えられる)、③(リハや本番で)げっ!ストラップ忘れちゃった!が防げる、などが挙げられます。
付けっぱなしプレーの弊害としては、ストラップとギターが一体化してしまい、ストラップの存在すら意識しなくなってしまうこと。しかしながら、ストラップは、意外に目立ち、その人らしさが表現されもの。演奏に集中したい時にストラップに気を取られ過ぎるようでは勿体ないですが、ちょっとした筆休めな時に、意識してみるのも悪くない。そんなことをふと思い、今回は「ストラップを選ぶ」をテーマに、記事を起こしたいと思います。
◼️国産ブランド「AQUBE」さまに、ご協力を頂きました
私は、ソリッドも箱モノも、ストラップは、レザー(革)限定です。他素材のことは、全く未知な領域となってしまうため、本記事の対象もレザー(革)のみ。ご容赦ください。
そして、作りがシッカリして、品揃えが豊富な、レザーストラップの国産ブランドを探していたところ、「AQUBE」という、いい感じのところを発見。取材のご相談をしたところ、快諾いただきました。
Artist with Quality & Beauty
〜 音楽を楽しむ人々のいつもそばにあるプロダクト 〜
「“あくび”では第一線で活躍するアーティストとプロダクトを開発することを心がけています。長時間の演奏に耐えられるクオリティーに製品の美しさを兼ね備えた機能美を日々追求しています」
今回の記事では「AQUBE(あくび)」の豊富な品揃えを頼りにさせて頂いて、「長さ」「幅」「ステッチ」「カラーリング、デザイン」「ロゴ」などの項目で、ストラップについて考察してみたいと思います。
◼️長さについて
ストラップの長さ調整は最も大切なことで、演奏に直結します。ストラト・フルアコ・セミアコ、それぞれピンの位置やボディ厚みが異なるため、相応しい長さも異なります。
私の場合、ピンとピンの長さが、ストラトで94cm、フルアコ・セミアコで110cmです。海外ブランドの中には、最短に調整しても、肩から下げると長すぎる商品があり、購入の際の要注意ポイントです。
ギターに合った長さは、付けてみないと分からないので、手元のストラップで色々と試してみるしかありません。特に日本人の標準体型で、ジャズ系の箱モノギターを抱え込むスタイルだと、95cm前後に短くして使用される方も多いはず。
今回、お借りした「AQUBE」は、国内は勿論、海外の市場も見据えていて、幅広いニーズに応えるべくバリエーションを整えていらっしゃいます。短くして使いたい、というニーズにも対応し、HPにもシッカリとサイズ説明が記載されています。国産ブランドであり、革製品で実績のあるブランドならではの安心感ですね。
◼️厚みについて
革の厚みは、ストラップの固さに関係します。薄くてペラペラのものは、折角の革らしい質感に欠けるし、厚すぎるとシナリも装着感も悪く、肩も凝ってしまいます。厚みについても、実際に装着してみて、フィット感を確かめるしかありません。
「AQUBE」の厚みは4.5mm。柔らかさも、私にとっては、ちょうど良い感じで調整されています。
◼️幅について
今回、お借りした「AQUBE」では、より幅広の8cm、10cmの製品を出されています。こうした幅広いストラップは、ドッシリとしたボディをもったフルアコ・セミアコとの組み合わせも相性良さそう。箱モノ演奏家としては要検討範囲です。実際には、箱モノは軽く、ソリッドギターのほうが断然重いので、荷重を支えるためというよりは、ファッション(好み)の範疇かと思いますが。
下記、お借りした3種類、左から、6cm・8cm・10cmギターに重ねてみました。
幅差が2cm・4cmでも、結構、見た目の印象が変わりますね。お借りしたサンプルが白だったので、実際より膨張して見えるかもしれません。そしてやはり、ストラトよりも箱モノのほうが、幅広のストラップはシックリきます。
私の好みとしては現状の6cmより2cmアップの8cmが良さげに思いました。
◼️ステッチ(縁縫い)について
ステッチのない、革同士を張り合わせただけの加工モノは、使用しているうちに、徐々に背面の長さ調整部分などが剥離してきます。それも味だと思えば思えなくもないのですが、ステッチ入っているほうが長持ちします。
ステッチも革製品においては、デザインの一部です。他社ブランドによっては、色の付いた糸を使い、生地色との組み合わせをデザインに取り込んでいるところもあります。また、ステッチの代わりに、機能とデザインを兼ねて、縁や中側に鋲を打っているブランドもあります。
値段が高いからステッチが入っている、値段が安いからステッチが入っていない、ということでもないので、購入の際に確認しておくと無難です。
今回、お借りした「AQUBE」には、丁寧にステッチが入れられています。
◼️デザイン(1)黒系
ギターやペダル(エフェクター)と比較して、レザーストラップには、まだまだデザイン的に仕掛ける余地があるように思います。ジャズギターのスタイルが多様に進化しているように、ストラップの選択肢も拡がっていくと良いですね。
今回、お借りした「AQUBE」は、モノトーンを基調に、生地の色やパターンを生かしたバリエーションをご用意されています。ポップな色やユニークな素材もあり、シンプルながら固定概念を越えていこう、という意気込みを感じます。
黒系だけでもバリエーションがあります。左がシュリンク、中央がカウヘアー、右が今年発売されるホーウィンオイルレザーです。
カウヘアーは、毛並みが感じられる肌触りのストラップ。初めて拝見しました。面白い。
私的には、今年発売予定のホーウィンオイルレザー(下写真、左)がイチオシ。今もっているストラップと同じ質感。自分は、こういうのが好きなんだなあ、と改めて実感。逆に言うと、なかなか好みを外して冒険できない了見の狭さ?
◼️デザイン(2)その他の色
「AQUBE」の特徴のひとつが、色揃えが豊富なところ。
左上から時計周りに、シュリンク(普通の革っぽい肌触り)系で、アイス・ラベンダー、ピンク、ネイビー、ヘーゼルブラウン、グレイ。
左上から時計周りに、シュリンク系で、イエロー、ゴールド、グリーン、カウヘア(毛並みが感じられる肌触り)系で、レオパード、ベージュ。
今回、サンプルに無かったのですが、カウヘアのベージュが自分のギターには良さげに思えました。また、ホーウィンオイルレザーのイエローなども、あったら面白いと思いましたが、成分や発色の関係で難しいそうです。
財力に余力あれば、幾つか色違いを持っておいて、ステージや気分によって、付け替えたりできたりすると楽しいですね。
◼️デザイン(3)さらに独自性を出したい方に
「ジャズギターのストラップと言えば、日本の○○が機能的で、作りも丁寧、デザインも優れている」なんて評価が獲得できたら、世界で抜きん出たブランドとなることも不可能じゃない。今の時代、ファクトが伴えば、ジワジワとファンベース的な拡がりも期待できそう。
ジャズギター演奏家の場合、フルアコ・セミアコに見合う質感を求める方が多いと思うので、レザーブランドのターゲット戦略としては、見過ごせないはず。機能とデザインの追求、コストと品質のバランスを取りながら、具体商品に落とし込んでいくことは容易でないと思いますが、今後、日本ブランドの活躍に期待です。
私的には、生地パターンを生かしたシンプルなデザインも魅力に感じるのですが、人によっては物足りなさを感じる方もいらっしゃるかもしれません。プレーンなストラップを元に、自分なりに手を加える遊びを過去に紹介しているので、ご参考になさってください(下記記事)。
「世界にひとつのストラップ」
https://jazzguitarnote.info/2020/11/01/only-one-strap/
↑コレはコレで、面倒も費用も掛かってしまい、練習時間が削られてしまいます。
◼️信用の証としてのロゴ
箱モノユーザーにはGibson崇拝者も多いかと思いますが、かといってGibsonのロゴが入ったシャツやグッズを身につけません。ブランド側も、欲をかいて露出やアイテムを拡げすぎると、ブランドの品位やファンの信頼まで毀損してしまいかねません。
まずは、秀でた機能やデザインの評価があって、それを約束するブランド名がある、という関係性が健全です。ストラップでは、そうしたブランド設計・構築が確立できているブランドが少ない分、ビジネスチャンスがあるかもですね。
そんな余談はさておき、今回、お借りした「AQUBE」は、正面向きと後ろ向きの2箇所にロゴをレイアウトされています。素材や色によって、印刷だったり、型押しだったり、工夫されていらっしゃる様子。意外と生地に影響を受けるものなのだなあ、と勉強になりました。個人的には、ベタですが型押し(エンボス:下写真の上)が好みでした。
◼️ブランドの代表、Verb Creation中川宏明さんのコメント
AQUBE(あくび)を運営しているヴァーブクリエーション代表の中川です。今回はAQUBEのストラップを取り上げていただきまして、ありがとうございます。自分は現在40代ですが、10代でギターに目覚め、寝ずにギターを弾く日々を過ごしました。
少し大人になって靴やバッグなどを作ることで生きていくと決めて25年が経ち、自分ができる表現でアーティストたちをサポートしたいという思いの中、ストラップを開発しました。今後はギターケースなど、より多くのアーティストを支えられる商品を開発していきたいと思っています。AQUBEの今後を期待していただけますと幸いです。
◼️(余談)ストラップに纏わる小ネタ
ココから小ネタ紹介です。私は、ストラト/フルハコ/セミアコなどを、場面に応じて、ギターを持ち替えてます。ストラップは、それぞれに付けています。ある時、ふと気づいて、フルハコ/セミアコのストラップの取り付け方を変えました。記事中の雑談として、ご紹介させてください。
(1)これまでの取り付け方
ストラト歴が長い私は、ヘッド側ストラップピンに対して、下記のように取り付けていました。
(2)取り付け方を変えてみた
今回、下記のように変更しました。
フルアコやセミアコなど「ストラップピンがボディ裏」に付いているもの
↓
ストラップの「オモテ面」をボディ側に向けて、ストラップピンに取り付ける。
(3)ストラトとセミアコで付ける向きが異なる
ストラトは「ボディの横」にストラップピンが付いていますが、フルアコやセミアコは「ボディの裏」に付いています。
ボディ裏にストラップピンが付いている場合、ストラトのように取り付けてしまうと、お客さんから見て、ストラップの裏側を曝けることになります。取り付け方を変えることによって、正しくストラップの表面がお客さんの方を向いてくれます。改めて、有名演奏家の記録写真や動画を観ると、ちゃーんと、ストラップの表が見えるように付けていらっしゃる。
ストラトに付ける時は上段の方法。フルアコ・セミアコは下段の方法。この、どっち向きに付けるか話は、これまで見聞きしたことがありません。教則本やネットでも見かけたことがない。それくらい、どうでも良い話のようでした。
◼️最後に(編集者から)
かれこれ20年以上前の話になりますが、東京都の製革業を応援するプロジェクトで、何年か、ブランドづくりのお仕事に携わらせて頂きました。そのお話をいただくまで、私は、東京の下町エリアが、日本を代表する製革産業エリアであることすら知らない、お恥ずかしい状態。その分、新鮮で、記憶に残るお仕事になりました。
日本独自の進化をし続けるために、新しい使い手や担い手と繋がる場を作り、伝統産業の未来に繋げていく。当時、主催者の皆さまの想いは、時代を越えて、産業を越えて、重要かつ普遍的なテーマでした(今もプロジェクトは続いているのかしら)。是非、そんな取り組みを、楽器業界や音楽文化の面でも、皆んなで進めてゆきたいですね。
「ストラップを選ぶ」をテーマにした記事は以上になります。ストラップは、ギター本体、アンプ、ペダル(エフェクター)、弦、ピック、ケーブルなどに比べると、比較的、関心の薄い商品。そんなに頻繁に買い換えるモノでもありませんが、演奏家にとっては必需品でもあるし、長く使うモノだから、ちょっと拘ってみるのもアリかと。
余談ですが、ケーブルの記事でも触れましたが、迷ったら、先に信用できるブランドを選び、自分にあったモノを絞り込んでいく手もオススメです。
「ケーブル選び❶ 愛せる作り手を選ぶ」
https://jazzguitarnote.info/2020/10/03/cable-1-shop/
今回、年末のお忙しいタイミングだったにも関わらず、「AQUBE」さまには、我儘を聞いていただき、沢山のサンプルをお借りすることが出来ました。改めて、深く御礼申し上げます。
今年も、寄り道しながら、ジャズギター道を楽しく極めてゆきたいと思います。ご贔屓のほど、宜しくお願いします。
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