達人に聞く vol.22 矢羽佳祐さん

「達人に聞く」連載の第22回は矢羽佳祐さんです。連載としては7ケ月ぶり。高内HARU春彦さん・中牟礼貞則さん・竹田一彦さんと、大先輩のインタビューが続いていましたから、いったん若返っての再開となります。

実は、思うところあって、連載「達人に聞く」の再開を躊躇していました。最近、ひょんなことから矢羽さんにお会いする機会があり、ギターを弾く楽しさ・嬉しさを大切にされている方だな、と感じたんです。このひとなら頼んでみたいなと思いました。

では、矢羽さん、インタビュー宜しくお願いします。

◼️始められない時、集中できない時の切り札

まず思ったのは、ギターにせよ、ジャズにせよ、練習を始める時に、毎回「よし、やるぞ!」という風に身構えなくても良いんじゃないかな、という事ですね。弾いてるうちに徐々に集中していく事もありますし、結果的に集中できなかったとしても、楽しかったらOK!くらいの気持ちで楽器を手に取るのが良いと思います。

僕の場合、家にいる時は、ギターをスマホ感覚で色んな部屋に持って行ってます。弾きたくなったらいつでも、すぐ弾ける距離にギターがあると凄く嬉しいんですね。スマホを例にすると、気づいたらYouTubeを見ていたりゲームを始めていたりした事ってあると思います。僕にとってはギターもそんな感じなんです。気づいたら弾いてるし、飽きたら止めている。

こう言うと、まじめに練習していないように聞こえるかもしれませんが、意外と集中している時間は長いと思いますよ。たまたま付けっぱなしのテレビに夢中になる事もあるし、集中って案外そんなものかなと思います。

またライブではGibsonのES-775を使っていますが、家ではストラトキャスターを弾いています。家の中でもフルアコで弾けたら最高ですが、なかなかそういう環境を今から整えるのはハードルが高いので。あえて切り札に挙げるなら、いつでも手元に置いておける弾きやすくてお手頃なギターが1本あると良いと思います。

◼️理論を実践に昇華させるには?

この質問は、アドリブができるようになりたい生徒さんから良く聞かれます。逆に僕から質問しても良いですか?僕は5年以上彼女がいないのですが、恋愛の理論書を読んだら彼女はできますか?たまに情報として入ってくる「〇〇な男はモテる」という知識は鵜呑みにしても大丈夫ですか?ぜひ読者の中で恋愛の達人がいたらこっそり教えて頂きたいです(笑)。

この問題に関しては皆さんもうお察しかと思いますが、恋愛の理論を沢山知っているからと言って、彼女ができる訳ではないんです。かと言って会う人会う人に告白していたらヤバい人なんです。

理論と実践、どちらも大事なのは間違いありませんが、人それぞれ長所や短所、好き嫌いがある以上アプローチの仕方は自分で見つけるしか無いんですね。まずは自分がこれだ!と思うやり方で挑んで、その結果をしっかりと受け入れて次に活かす。まあ僕も人のこと言えないですから、気持ちは痛いほど分かります。

もし理論を実践に昇華させたいと本気で思っている人は、是非お近くのジャムセッションをやっているお店を見つけて参加してみて下さい。そこには同じような悩みを抱えている人が沢山います。誰も正解は知りませんが、良いアイディアをくれる人はいます。僕も東京、横浜などで定期的にやっていますし、遊びに来て下さい。僕の経験で良ければ喜んでお伝えしますよ。

◼️いまの自分を乗り越えるコツ

前提として、将来的にどんな人間になりたいのかが、自分の中である程度定まっている事が大事かなと思います。その理想の自分に対して今日からできることに、一歩ずつ取り組んでいく。例えば歌の伴奏が上手いギタリストになりたいとして、インストバンドでしか演奏していなかったら到達できないですよね。

たぶん、経験もそれなりに積んできた大人が、将来的にこうなりたいって考えた時に、それはもう、一気に到達したり乗り越えたりするものじゃない事の方が多いと思うんです。だから日々実現する可能性が1%でも高くなる選択を続けて行くしか、道が無いですよね。達成できていないから駄目なんじゃなくて、達成しようと努力したなら夢に近づいてるんだ!って思って良いと思います。

特に僕の場合、キラキラした大きな夢は掲げていないですから(笑)、ただ自分が好きなものを追求して、その素晴らしさを1人でも多くの人に知って欲しい。あとは継続する事や諦めない事の方が大事だと思いますね。

◼️矢羽佳祐(やばけいすけ)さん プロフィール

1989年生まれ、新潟県長岡市出身。東京、横浜を中心に活動するジャズギタリスト。

http://www.yaba-jazzguitar.com

15歳でギターを始める。ポップスの弾き語りや邦楽バンドのコピーをマイペースに練習するうちにギターに夢中になる。ギターを弾いているうちに即興演奏にも興味を持つようになる。

18歳で大学進学に伴い上京。専修大学のジャズ研究会MJAブルーコーラルでジャズの魅力を知る。先輩からジャズギターの名盤や定番曲などを教えて貰いながらジャムセッションを重ねてジャズギターを習得する。在学中には関東の主要な音大やジャズ研究会が参加したジャズ甲子園というコンテストで優勝。徐々にジャズバーやライブハウスなどへの出演も増えていきプロ活動のキャリアをスタートする。

演奏スタイルはジャズギターの中でも比較的オールドなプレイを主体としており、ブルースのフレーズも多用する。ジャズを演奏する時はギブソンのフルアコースティックギターをアンプに直接刺したヴィンテージライクな渋い音色を好んで使っている。

近年では日本人ジャズギタリストで著名な井上智氏から東京の若手プロの注目株として紹介されるなど演奏に高い評価を得ており、2022年からオルガン奏者の土田晴信氏のトリオにてレギュラーとして活躍している。

◼️最後に(編集者から)

矢羽さんのお話、面白かったです。ユニークな例え話なども交えながら、話の主旨や話す相手に合わせて、自分の意見を、伝わる形で表現くださっているからでしょう。観客を意識しつつ、その場の役割や攻め手を判断し、表現を自分らしく寄せていく点ではインタビューもセッションも似ている側面がありますね。

読み手を気遣ったコメントのなかには、シッカリと伝えたいメッセージが込められています。私的には「日々、実現する可能性が1%でも高くなる選択を続けて行くしか、道が無い」の、「日々」という単語がグサリときました。

矢羽さんは、横浜・関内ファーラウトなどでのレッスン(体験もあり)に加え、白楽ブルースエットなどでホストセッションをされています。ギタリストのホストセッション、ありそうでないんです。セッションへの参加を敷居高く感じていらっしゃる方(実際、多くの巷セッションは敷居が高すぎます)、矢羽さんなら、必ず現場(セッション)まで付き添ってくれるので、アクセスされてみては如何でしょうか。インタビューと同様、レベルや課題に合わせて上手く導いてくれるはずです。

矢羽さん、お忙しいなか、インタビューご協力ありがとうございました。

2 comments to “達人に聞く vol.22 矢羽佳祐さん”
  1. おっと!!  白楽のブルースエットが出てきましたねえ。 (笑) 嬉しいです。矢羽さんのヤバいジャズギター、うっとりとして聞いています。あんなフレーズ、こんなテクニック、勉強になります。今後とも宜しくお願い致します。

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