セッションホストに聞く❶田宮美咲さん

ようやく今日から年末年始休暇に入りました。

ここ数年、この時期になると、来年の目標を練習ノート(アプリ)に書き込みます。そして今回。例年、立てた目標が、数ヶ月でグダグダ・ウヤムヤになってしまうことを反省し、具体的な数値目標を立てることにしたんです。

そのひとつ。実践力強化に関する目標を「月のセッション参加回数」として設定してみました。

■セッションをテーマにした連載

ジャズに限りませんが、ギター力の向上には、演奏技術や理論の習得と、同レベルか、それ以上に、現場の場数が重要です。しかしながら、ジャズセッションは未経験者にとって敷居が高すぎる。私自身、最初の一歩を踏み出すのに、どれだけ勇気がいったことか。参加させてもらうようになってからも、途中で帰りたいと思ったことが何度も何度も。

ジャズセッションには、演奏技術の高さを競い合ったり、管楽器やボーカルのための生演奏カラオケづくりという役割もあるかと思います。ただ、ここ寄り道ノートでは、技術レベルやキャラクタがバラバラな(多くは初対面な)人たちと、その場限りのジャズを創っていく面白さを大切にしたい。この発明とも言える出会い系システムが、理解浸透し、多様化していくことによって、日本の演奏文化は、もっともっと面白くなるはずです。

そしてお恥ずかしながら、ここ横浜が、国内最大級のジャズセッション地域であることを知ったのは、最近のこと。何処まで続くか分かりませんが、折角の地の利を活かして、セッションホストの方々に、それぞれの目線からジャズセッションをご紹介していただく連載を始めてみようと思います。

■連載第一弾、田宮美咲さん(ベース)

連載の第一弾は、ベーシストでありながら、セッションホストをなさっている田宮美咲さんです。アンサンブルの根幹としてのベースの位置を保ちながら、力強く、アグレッシブな演奏もされる方。セッションでは、ホストとして参加者への気配りもヒシヒシと伝わってきます。

では、田宮さん。宜しくお願いします。

■プレイヤーの満足度を最大限にしたい

ベースプレイヤーの田宮美咲です。
ジャズのジャムセッションホストは、月に数回努めています。自分がリーダーとして進行担当を兼ねるときも、リーダーが他の方の時も、毎回楽しいひとときを作ることを主眼に、みんなでより良い音を創れるよう心がけています。

住まいが横浜ということもあり、横浜近辺のお店で演奏することが多いのですが、東京方面でも演奏しています。一番多くお世話になっているのは、自宅の最寄り駅(東急東横線の白楽駅)にあるブルースエットさんです。ブルースエットさんは、定員15人くらいのスペースです。他もだいたい20人くらいの小さめの場所で演奏することが多くて、10人前後のアットホームな雰囲気で進めることが多いです。

首都圏近辺では、毎日どこかのお店でジャズのジャムセッションが行われているはずですので、平日でも楽しむ場所はいくつもあると思いますが、私は金・土曜の夜や、土日の昼の演奏が多めです。ジャムセッションはだいたい、その日にご都合のついた方が気軽に立ち寄れる想定で運営していますから、参加人数は毎回大幅に変わります。

その時々で各楽器の構成人数が変わりますし、演奏上のご意向も人の数だけありますので、3時間程度の短い時間の中で、それぞれのプレイヤーの満足度を最大限にしたいということを、いつも大事にしています。

ギタリストの参加は多くても2名程度

私が関わるセッションでは、ドラマーやフロント楽器の方のパート割合が高めです。ヴォーカルの方々は、「今日のピアニストは〇〇さんだから来ました」と、ご自身のプレイスタイルを意識されて来られる方の割合が高く感じます。一番少ないお客様は、ベーシスト(笑)。この点は、たいていのジャムセッションで共通して言えることだと思います。

私のセッションの場合、ギタリストの方は、多くても2名程度のことがほとんどです(場所によっては、ギタリスト率が高めの所もあると思いますが)。たまにギタリストが複数名いらしたときに、同じ楽器である仲間同士として、ギタリスト同士で語り合ったりしてもらえるのは、すごく嬉しいですね。というか、そうなって欲しいからこそ、意識的に例えばピアノレスのダブルギター編成を組んだりすることもあります(笑)。

■来店順に進行。最初はホストミュージシャンと

進行は、基本は来店順に、演奏したい曲をコールしてもらいます。来店者数が多い時には、ドラマーやベーシストにまで選曲を振れないことも結構あったりして、そこは申し訳なく思っています。 

前半の最初はホストミュージシャンと演奏いただく場合が多いですが、後半は、臨機応変に、可能な限り色々な組み合わせで展開できるようにします。

ジャムセッションは、その場にいた方同士で、演奏の対話を深めていただけるのが理想だと思っていますので、ホスト以外の方同士でのびのび演奏していただけることが、一番ホスト冥利に尽きます。一方で、たまに「ホストミュージシャンとだけで演奏したい」という意向の方も来店されますが、その場合は、待ち時間が長めになることと、またできる曲数も合計2、3曲程度だけになることを了承いただいた上で、可能な範囲で配慮しています。

■初めての方にも楽しんでもらいたい

ホストの進行は、場所や人により様々だと思いますが、私の場合は、演奏した曲数が人によって偏りすぎないことと、お待ちいただく時間が長くなりすぎないことには、自分なりにこだわっている派です。自分用のメモを手元に置いて、全参加者名の右に正の字を書いたり、曲をコールできた方の左隣にマルをつけたりしてます(お客様の人数が少なめの時は、頭の中だけで整理していますが)。

例えばドラマーが多い日は、当然一人あたりの曲数も減りますが、ドラマー内で偏りがないように、って点は、気を付けています。あと私は特に、そのお店が初めての方や、引っ込み思案なタイプの方にも楽しんでもらいたい場にしたい想いで、進行させていただいています。

■場づくりで大切にしていること

・演奏上のアドバイスをするときは、なるべく周りの方に聞こえないように伝えるようにしています。自分の改善点を周りに聞かれるのは、私も正直恥ずかしいですし(笑)。

・待ち時間が長くなっていそうな方には、順番などは一旦置いておき「次の曲は〇〇ですが、◇◇さんご一緒にいかがでしょう」と声かけしています。パスもありっていうことで。

初めての曲に遭遇したら、参考音源を探してみる

演奏を傾聴する、という視点が、プレイすることと同じくらいに大事なことだと思っています。セッションの場での傾聴ももちろん大事ですし、あと私はいつも、初めて聴く曲に遭遇したら、帰りの電車で参考音源を聞き直しています。その曲の定番エンディングとか覚えておきたいですし、何より、自分の出したい音を的確に表現するには「曲を深く知る事」が欠かせないわけで、私自身もホストの立ち位置は保ちつつ、生涯留意したい視点です。

■アンサンブルとしてのまとまりと自己を出していく意気込みとのバランス

私はベースプレイヤーなので、アンサンブルの礎を守ることは生命線として保ちつつ、その上で自己を出していきたい…くらいのところでバランス取りを務めています。そして、自己を出しきることは、ベースソロで実現させたい、といつも思っています。

(写真)田宮美咲さん

例えば、ジャムセッションでは、ビート感が人により異なる場面がありますが、まずは両方を尊重するように、全体のサウンドがよくなるよう最適化できる立ち位置を選んでいます。とはいえ、自分の中で色々調整してもしっくりこないときは、最後はソロ楽器ファーストで考えてます(笑)。

■ギターは、フロント楽器・コード楽器・リズム楽器の3役割もてるのが強み

ケースバイケースだとは思いますが、私の場合は、最初はフロント楽器として入っていただき、ギタリストの方にコールいただいた曲を演奏していただきたいです。そのあとは、ピアニストが少なめの時はコード楽器として頼らせていただく割合が高くなるし、コード楽器が多い日はピアノと同時に演奏していただき、フロント的な立ち位置を求めたり。…という意味でも、フロント楽器としても、コード楽器としても、どちらの役割も期待されるのは、いい意味で、他の楽器にはない「強み」だと思います。

さらには、例えばビッグバンドのギターのカッティングみたいに、リズム楽器的な立ち位置も(曲によっては)可能ですよね。なので、ジャムセッションでは、なるべく早く(できれば最初のテーマ1コーラスで)その曲で最も必要とされる役割を把握する。その上で、それをどう音に乗せていくかが大事…って、言うは易く行うは難しですが、よく音を聞いていてくれるギタリストさんと共演するのは、本当に深みのあるひと時に思えます。

■セッション参加に躊躇・尻込みしている方々に

アドバイスというほどでないかもしれず、すみませんが、初めてのお店に行くのは本当にドキドキしますので、私の場合、以前は可能な範囲で、友達のミュージシャンと一緒に行ったりしていました。

あと例えばの話ですが、1曲目で共演するミュージシャンに「不慣れで失礼するかもしれませんが、よろしくお願いします」と低姿勢な方をたまにお見掛けしていて、その時は、周りも自然と「お互い様」な気分になれました。

■ホストセッションへのお誘い

ブログに演奏予定を定期的に掲載しています。是非、どこかでお逢いしましょう!
https://ameblo.jp/tamiyamisaki

近々のホスト予定としては、下記のとおりです。お気軽に参加ください。

1月5日(木)白楽ブルースエット
14:00~17:00 mc2000+tc500 
https://blues-ette.com/
田窪寛之さん(P)とのライブ&セッションです。

1月7日(土)白楽ラフィエスタ
http://lafiesta-jazz.jp/
19:00~
矢藤健一郎さん(drs)率いるバンドでのジャムセッションです。

1月21日(土)白楽ブルースエット ※今回のみ第三土曜
14:00~17:00 mc2000+tc500 
https://blues-ette.com/
塩塚博さん(G)とのジャムセッションです。

1月24日(火)町田into the blue 
 19:00~ mc2750- 
http://intotheblue.info/schedule
平栗康夫さん(as)、石島生恵さん(p)とのジャムセッションです。

2月11日(土祝)白楽ブルースエット
14:00~17:00 mc2000+tc500 
https://blues-ette.com/
中谷和義さん(drs)、本郷修史さん(P)とのジャムセッションです。

 2月25日(土)白楽ブルースエット
14:00~17:00 mc2000+tc500 
https://blues-ette.com/
田宮美咲リーダーライブです。3ステージ目はセッションです。
中原けいこさん(P)、川口弥夏さん(drs)と共演します。

 2月28日(火)町田into the blue 
 19:00~ mc2750- 
http://intotheblue.info/schedule
平栗康夫さん(as)、石島生恵さん(p)とのジャムセッションです。

■(読者へのメッセージ)共演を楽しみにしています。

ベーシストから見たら、(既出ですが)ギターは、コード・ソロ・リズムと、変幻自在に存在感を出せるという、何ともうらやましい楽器だと思っています。その分、ご自身のカラーを大事にすることで、個性もダイレクトに創れるわけで、是非セッションの楽しみを味わうと同時に自身のサウンドを追求していってほしいです!同じ弦楽器同士、私もいつも、ギタリストとはお互いイイ刺激を与えあう関係でありたいと思います。共演、楽しみにしています♪

田宮美咲(たみや みさき)さん Bass Player
愛知県名古屋市出身。学生時代はジャズビッグバンドでの演奏活動が中心で、第24回山野ビッグバンドコンテストにて最優秀賞を受賞。大学卒業後は各地でモダンジャズを中心とした演奏活動を展開し、2001年4月にジャズバンド「ALL OF ME’S」の一員としてニューヨークのカーネギー・ホールにて単独コンサートを行う。現在は都内および神奈川県域を中心とした活動で、端正かつ重厚な音遣いで好評を得ている。

(写真)田宮美咲さん

■最後に(編集者から)

ホストセッションにお邪魔させていただいた時に伝わってきた気配りが、インタビューでも感じられました。近々のホストのご予定も頂いたので、時間・距離のご都合つく方、ご検討されてみては如何でしょうか。 

ギターは、フロント楽器・コード楽器・リズム楽器である分、1回1回のアンサンブルにおいて、何処の機能を担うべきかを判断し立ち振る舞うことは、面白さである反面、難しさでもあると思います。でも失敗しても許容してくれるのがセッションの良いところ。その時の気づきや学びを肥やしに、場数を重ねていくことが、これまた面白いところですね。

皆さまとも何処かのセッションで、ご一緒できるかもしれません。そんなレベルで偉そうに記事書いてるのか?なんて仰らず、温かくアドバイスしてくださると嬉しいです。

連載「セッションホストに聞く」第一弾は以上になります。田宮さん、お忙しいなか、インタビューご協力ありがとうございました。

【ご案内】twitterにて記事の新着をお知らせしています。
https://twitter.com/jazzguitarnote

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