この寄り道ノートでは「地域とジャズ」という記事カテゴリを設定しています。これまで「京都」「鎌倉/逗子/葉山」の2エリアを取材してきました。いよいよ地元である「横浜(関内)」エリアの連載を始めます。
既に世の中に、横浜のジャズを扱った記事は沢山存在しているので、同じような内容は避けたいところ。演奏家目線の、これからの横浜ジャズ活性に繋がりそうな独自ネタを、ゆるりと拾ってゆきたいと思います。
■横浜関内はジャズ学校の集積地
連載「横浜関内とジャズ」の第1回テーマは「音楽学校(ジャズスクール)」です。
ジャズを学ぼうと思ったら、先生に指導してもらったほうが圧倒的に効率的なのは間違いありません。そして、ご存知の方も多いと思いますが、横浜関内は、ジャズスクールの集積地です。複数の学びの場があって、自分にあった学校や指導者を選べることは、演奏者にとって有り難いことです。
私自身は関内の学校で学んだことはないのですが、今回は、ユニークな存在として注目させていただいているBar Bar Bar音楽院さんに取材をお願いしました。お話をお聞きしたのは代表の尾上文子(おのえ あやこ)さんです。
(写真)井上慎平さん、尾上文子さん、鈴木薫利さん ※左から
それでは、尾上さん、宜しくお願いします。
■地元ミュージシャンを育てたい
Bar Bar Bar音楽院は、25年前に、当時の Live Restaurant BarBarBarのオーナーが、地元ミュージシャンを育てていきたい、という思いで同ビル3階にスタジオを作ったのが始まりです。地元に特化した音楽教室として創設した為、当初は講師も殆どが横浜出身、もしくは在住のミュージシャンでした。
Bar Bar Bar音楽院の特徴を列挙すると。
(1)講師は全員、ライヴシーンで活躍中の現役ミュージシャン
→ 実践に則した生きたアドヴァイスが聞けます
(2)目的に合わせてレッスンを受けられる
→ 生徒さんは、年齢(現在小学1年生から80代の方まで在籍)もレベル(初心者からプロ志向の方まで)も様々。それぞれの目的に合わせてレッスンを受けられます
(3)多くのワークショップを企画している
→ 他の楽器の生徒さんや一般の方と一緒に練習できる機会が多く設定されています
(4)発表会やミニコンサート等、出演機会が多い
→ コロナ禍で休んでいましたが徐々に再開しています
(5)アットホームな学校なのでレッスン以外でも出会いの機会が多い
→ ロビー等で他の楽器の先生からアドヴァイスが頂けたり、生徒さん同士の情報交換も出来て一緒に頑張れます
■アンサンブルの楽しさを知ると上達も早い
当校ではアンサンブルの授業に力を入れています。
音楽を奏でる上で、自己練習で技術を磨く事は勿論大切ですが、人とアンサンブルする事の楽しさを知ると、楽しさは倍増、上達も早い。個人レッスンで学んだことを実践する機会にもなります。
一人で練習していると煮詰まってしまう事も多いと思いますし、アンサンブルすることで自分のグッドポイントやウイークポイントに気付くことで練習方法も変わります。生徒さん同士の交流からも得るものが大きいと考えていて、生徒さん同士の出会いの機会に繋がることも期待しています。ワークショップで知り合った方同士でバンドを組んで活動を始めた方も多くいらっしゃいます。
以前は、当校の生徒さんと一般の応募者で、ビッグバンドを結成していました。月1回練習し、年1回BarBarBarにてコンサートを行い、好評だったんです。コロナ禍で多人数での練習が出来なくなったこと、またレッスン自体をお休みする生徒さんが続出したことで、事実上、解散状態に。。昨年10月より、再結成を目指し、アンサンブルワークショップとして月1回の練習を始めました。現在、金管楽器の方、大募集中です。
■学校にはYouTube動画では学べないものがある
ここ数年、ライヴハウス等のステージに立つことのハードルが下がり、誰でもステージで演奏する夢を実現出来る機会が増えてきました。その楽しさで音楽人口が増えたことはとても素晴らしい事だと思います。これからも、学校はそのきっかけとなり、楽しむコツを伝授する場になれば、と常に思っています。
一方、楽しみとしてだけではなく、文化として、より素晴らしい音楽を創るプロの人材を育てる事もとても大切なこと。その為には色々な音楽を学び、基礎力、現場での応用力を身に着ける場として、学校の存在意義は大きいと考えています。
近年、YouTube等のレッスン動画で楽器の奏法を学ぶ方が増えていますが、やはり音楽は先生と同じ空間で、空気、波動を共有しつつレッスンするのが一番効果的だと思います。これはLiveにおける呼吸、グルーヴ感の共有にも繋がって行く音楽における最も重要な要素だと考えます。
■世代ごとの学校の楽しみ方
当校の一番人気はヴォーカルです。楽器ではジャズピアノ、サックス科が人気ですね。
少しずつですが小学生~高校生の世代の生徒さんが増えてきました。音楽の感じ方、取り組み方が私の時代とは全く異なり、とても興味深く、楽しみでもあります。本当に面白い。
また、50代以上の生徒さんが複数の科目(vocalとdrums等)を受講して、積極的に練習されていたり、Liveを企画、出演されたりする事も増え、その前向きな姿勢に魅力を感じています。個人的にも見習いたいですね(笑)。
あくまで私個人の感じ方ですが、寧ろ20代~30代位の生徒さんの方は淡々と取り組んでいらっしゃる様なイメージです。この世代の活躍も期待しています。
■これからも関内ジャズを支援してゆきたい
コロナ禍の影響もあり、老舗のライヴハウスのクローズが相次ぎ、危機的な状況が続いています。少しずつ回復してはいますが、より一層の努力が必要だと感じます。そんな中、“Yokohama Jazz Eggs”や”YokohamaReunion”など横浜の若手ミュージシャンがジャズという文化を拡げ、身近に感じてもらう事を目標に組織を立ち上げ、意欲的に活動されている事はとても素晴らしく、出来る事があれば支援して行きたいと思っています。
(編集者注)
「Yokohama Jazz Eggs」http://jazzeggs.yokohama/
「Yokohama Reunion」https://yokohamareunion.art/
数十年前、関内のライヴスポットはとても盛況で、毎日様々な質の高い演奏を聴くことが出来ました。演奏者にもリスナーにも本当に良い環境だったと思います。時代も違うのでその頃の再現は難しいとは思いますが、より多くの人にジャズの素晴らしさ、楽しさを感じて頂きたい!その為に少しでも役に立つ存在でありたいです。
当校の今後の取り組みとしては、先ず多くの方に音楽(ジャズに拘らず)の魅力に触れて頂く機会を増やす為、他の文化と組み合わせたセミナーやイヴェントを企画していきたいと思っています。絵画と音楽、珈琲と音楽、ワインと音楽、瞑想と音楽、等々、、皆さんのご要望を伺いながら。
■ギタリストの皆さんも、公開プログラムへの参加から
当校では一般の方も参加出来るプログラムを毎月行なっています。特にギター演奏の大切な要素である他のパートとのセッションはお勧め。セッションはしてみたいけれど、ライヴハウスのセッションは敷居が高い、と感じられている方も、準備段階として気軽に参加して頂けます。現状、ギター科の生徒さんが余り多くないので、引っ張りだこになること間違いなしです(笑)。
その他、初心者でも参加出来るヴォイストレーニングやリズムトレーニング、もう少し慣れた方にはインプロビゼーションやリズム(グルーヴ)、といった演奏に必須の要素を習得する為の講座もありますので是非ご活用ください!
■Bar Bar Bar音楽院 概要
8月中に移転し、9月より新店舗にて営業します。
再開するLive Restaurant BarBarBarと提携(割引等)を行う話合いをしていて、当校の発表会もBarBarBar新店舗で行う予定です。また、移転を機会に当校も他スタジオやライヴハウスとの提携も積極的に行っていきたいと考えています。こちらに関しましてはまた順次お知らせさせて頂けたら嬉しいです。
(現在の住所)
横浜市中区相生町1-25 若葉ビル3F
(新店舗住所)2023.9月~
横浜市中区相生町2-50大和地所相生町ビル3階
・045-681-5667
・http://www.bar3-ongakuin.jp/
・komunikado-b3@blue.ocn.ne.jp
※移転後も、電話番号、Emailアドレスは変わりません
(講師陣) ※2023/04/30現在、敬称略
Piano:今田勝(病気休養中)、高田ひろ子、滝本博之、八木隆幸、小林洋
Piano&Vocal:城田有子、窪田朱
Vocal:河原厚子、キャロル山崎、桑原恵子、ほんごさとこ、田村美沙、らいらかおる、武田愛
Drums:松浦賢二、安藤信二、牟田昌広、吉岡大輔
Percussion:岡戸大
Bass:サリー佐藤
Guitar:鈴木美民
Trombone:池田雅明
Trumpet:村田浩、鈴木正晃
Saxophone:皆川トオル、河野温、菅野浩
Harmonica:大竹 英二
English:ニック・ミューリン
Jazz&Pops Chorus:箭原 顕
◼️最後に(編集者から)
今回、取材させていただいたBar Bar Bar音楽院さんには、過去に公開ワークショップ(ボサノバ)に参加させていただいたことがあります。講師、参加者の皆さん、事務局の皆さん、とてもフレンドリーで、楽しい時間を過ごさせていただきました。
ようやくコロナも落ち着いてきて、改めて新しい関内ジャズ文化を再構築していく試みが求められそう。Bar Bar Bar音楽院さんのような存在がハブになって、演奏家を繋いでいくようなことも大切なことと思いました。
「横浜(関内)とジャズ」の初回記事は以上です。Bar Bar Bar音楽院の尾上さん、移転間際のお忙しいなか、取材ご協力ありがとうございました。寄り道ノートとしても、関内ジャズの盛り上げに向けて、貢献できることから取り組んでゆきます。
【ご案内】X(twitter)にて記事の新着をお知らせしています。https://x.com/jazzguitarnote/
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