京都とジャズ❸ジャズ喫茶マップ

2020年、京都市の助成を受け、Kyoto Music Channel(KMC)さんが「京都ジャズ喫茶マップ」というレポートをまとめられました。KMC代表である東條やすこさんに、話を聞いてみましょう。

「京都ジャズ喫茶マップ」https://kyotojazzkissa-map.com/

◼️海外の観光地にはオンライン地図あるのに、京都には無かった

Kyoto Music Channelの企画で、「大人の遠足 ジャズ喫茶へ行こう!」という、色々なジャズ喫茶を巡るイベントがあります。ジャズ喫茶には、海外の方々も興味をもつ方が多くて。

今どきは、海外の観光地に行くと必ず、オンライン地図に、店の情報がプロットされているようなアーカイブが用意されています。ところが、京都には、日本の文化遺産とも言えるジャズ喫茶に特化したものがない。海外からもアクセスしてもらえるジャズ喫茶のアーカイブを、私たちで作れないかなあ、なんて話で盛り上がっていました。

全盛期と比較したら減ってしまったけれど、現在でも営業されている店がある。何か形にして、そうしたお店を訪れてもらえるようなお手伝いができないか、活性化のお手伝いができないかと。そんな話をしていたらコロナになってしまい、海外からの観光客も来れなくなってしまいました。

残念に思っていたところに、京都市の助成金(10万円)の募集が始まって、応募したら無事に審査を通ることができたんです。共同代表の光岡由利子と企画を進めているところに、ドラマーであり、WEBプログラムを学び始めた棟允嗣がWEB周りを手伝ってくれることになって、仕上げることができました。

◼️1950年代頃のジャズ喫茶マップ

出典「京都ジャズ喫茶マップ」(2020年、Kyoto Music Channel)

https://kyotojazzkissa-map.com/

◼️ 2020年のジャズ喫茶マップ

出典「京都ジャズ喫茶マップ」(2020年、Kyoto Music Channel)

https://kyotojazzkissa-map.com/

◼️エピソードを妄想記事に

私は元々ジャズ界隈にいるので、知り合いのライブハウスのマスターに聞いてみたり、SNSでエピソードを募集したりして、当時のことをご存じの方の声を、できるだけ拾う形で進めました。

折角、寄せていただいたエピソードを、一人でも多くの方に読んでいただきたい、また当時の空気感が伝わる形で紹介出来たらと思い、「京都ジャズ喫茶マップ」のなかに「京都ジャズ喫茶妄想回顧録」というプチ読み物も載せてます。是非、覗いてみてください。

プチ読み物「京都ジャズ喫茶妄想回顧録」リンク

◼️店主と親密になることが、ジャズ喫茶に通うキッカケに

演奏家の人たちは、ジャズ喫茶には、ほとんど行かないと思います。過去の遺産のイメージが強く、自分の時代のものではないというのかな。若い人でも、居心地がいい店があれば、足を運びレコードを聞く人はいるけれど、数は少ないし、お店との間に親密な関係が生まれる、というところまではいかないのではないか、という印象です。

最近は、レコードバーなど、ジャズ喫茶でない、レコードを聴かせてくれる店が出来ていて、レコード愛聴家や再燃ブームに乗った人たちは、そちらに流れているかもしれませんね。人気の店では、ジャズだけじゃなくて、あらゆるジャンルの音楽が流れていて、いま再燃しているシティポップなどもかかっています。

一方で、ジャズカフェむ~らさんのような、ジャズ喫茶であってライブハウスでもあるようなお店は、ミュージシャンも誰かしら、よく立ち寄っているのではないでしょうか。ライブを通じて店主とも仲良くなって、それがまた通うキッカケになったり。

◼️古き良きジャズ喫茶と、新たなレコードバーの台頭

形を変えないジャズ喫茶は、そのまま残していくことに価値があると思うし、新しいお店も過去のスタイルに囚われず出来ていくと良いと思います。個人的には、それら新旧のお店が分断されているのが勿体ないと感じています。新旧のお店では、お客さんの層が全く違うんです。年配の方も、若い方も、新旧のお店に通うような状況になると面白いと思いませんか。

新しい店の店主の人たちは、昔からのジャズ喫茶に敬意を払い、お店を周り、勉強をしています。どんなレコードをかけているか。何枚くらい置いているのか。なんのスピーカーを使っているのか。とかね。

◼️行くと「なんも知らんねんな、とか言われそう」の妄想

ジャズ喫茶に行かない若い人たちに「なんで行かへんの?」と聞くと、「なんかオッチャンに絡まれそうやろ」「なんも知らんねんな、とか言われそう」という答えが返ってきます。今のジャズ喫茶で「おしゃべり禁止」のところはありません。普通のお店と同様のマナーを守っていれば大丈夫なんです。

ジャズ喫茶マップを作った理由も、私たちのような新旧両方のお店に行くような人間が、世代を超えて距離が縮まるようなお手伝いができたらいいな、という願いがあったんです。デザインにも気を配ったのも、若い人たちに見てもらいたかったからです。

(写真)企画「「大人の遠足 ジャズ喫茶へ行こう!」風景

私自身がジャズ喫茶のことを、そんなに詳しく知らなかったことも良かったのかもしれません。レポートを作るために調べた程度の知識だったので、マニアなオッチャンからしたら「お前、なんも分かってへん」と言われてもおかしくない。でもそれが逆に、ジャズ喫茶を知らない世代の人たちと同じ目線で、語りかけるようなトーンで紹介出来たらと考えています。

実際のところ、ローンチしてみたら「そんなことやってるんやったら」と言って、関連した本を送ってくださる方がいたり、ジャズ喫茶のマッチ箱コレクターの方が写真を提供してくださったり。自分で動き、広く知ってもらえるように努めていると、共鳴してくれた方が声かけてくれます。興味がある方は沢山いる。ポテンシャルはあるんです。

◼️「レコードをゆっくり聞く」を広めたい(東條さんから)

レポートをまとめてみて、「レコードをゆっくり聞く」という行為を推奨したいなと感じました。レコードをかけスピーカーで聴くのは、ネットやヘッドフォンで聴いたりするのとは全然違います。

若い人たちも、ジャズ喫茶、ジャズやレコードに、興味は持っているはず。ぜひ、私たちが作ったマップも参考にしていただきながら、実際にジャズ喫茶に足を運んでみてください。

「京都ジャズ喫茶マップ」https://kyotojazzkissa-map.com/

◼️ (参考)京都ジャズ喫茶の変遷

出典「京都ジャズ喫茶マップ」(2020年、Kyoto Music Channel)
https://kyotojazzkissa-map.com/

◼️最後に(編集者から)

日本の文化遺産であるジャズ喫茶について、京都での変遷を見える化した取り組み。ありそうでなかった素敵な企画ですね。あるといいなを形にしてしまうKyoto Music Channelさんの行動力、尊敬いたします。

私自身、これまで殆どジャズ喫茶に足を運んできませんでした。ただ、解説付きの音源比較鑑賞会やジャズギター特集デーなどの企画が開かれたら、行ってみたくなるかも。そして居心地良ければ、ぶらりと立ち寄る店が出来たりして。

そんな気持ちの演奏家や音楽好きは潜在的に多い気がして、こうした取り組みが、新しいジャズ喫茶文化の盛り上がりに繋がると良いと思いました。Kyoto Music Channelの皆さま、取材ご協力ありがとうございました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です