やっぱり気になるNYジャズ❷

ニューヨークジャズのいまについて、現地で20年間、活躍されてこられたジャズギタリスト高免信喜さんに、お話を聞く連載。今回は後編になります。後編は「ひと」をテーマにお聞きしてゆきます。

■ニューヨークに行くなら必聴の、お勧めギタリストをご紹介ください

一番のお勧めはジーン・バートンシーニ(GENE BERTONCINI,1937-)です。彼はニューヨークにいるギタリストに大きな影響を与えた方です。今はナイロンのギターで弾くソロギターの名手で、有名なギタリストも多く学びに行っています。幸い私もレッスンに通わせてもらったことがあります。

http://genebertoncini.com/

かなりご高齢なので、日本にツアーに行くということは難しいかと思われます。ソロやデュオなど、演奏を聴ける機会があれば、ぜひお勧めします。

最近久しぶりに、ピーター・バーンスタイン(Peter Bernstein,1967-)とポール・ボーレンバック(Paul Bollenback,1959-)の演奏を聴きに行ったら、客席にGENE BERTONCINIがいました(笑)。他にもマーク・ホイットフィールド(Mark Whitfield,1966-)などもいて、凄いなあって。

2人目はベン・モンダー(Ben Monder,1962-)。彼はすごい。あれだけギター弾けるのに謙虚。とても個性的。ダークな雰囲気の曲もあったりしますが、ギターのハーモニーを拡げてくれたひと、という印象です。GENE BERTONCINIもBen Monderのアルバムが好きだ、と言ってました。

http://www.benmonder.com/

3人目はウェイン・クランツ(Wayne Krantz,1956-)。彼はリズムがとてもユニーク。いわゆるジャズとは異なるので、フュージョンに分類されることもあるかもしれないですね。とにかくクリエーティブ。何かを生み出していこうという力が漲っています。

4人目は、シェリル・ベイリー(Sheryl Bailey)。彼女にはバークリーで出会ったのですが、ジャズの語法を知り尽くし、徹底的に消化して、独特のスタイルを築いています。リズム、ギターのトーンなど、全てが魅力的です。

https://sherylbailey.com/

■NYで頑張っている、日本人ギタリストをご紹介いただけますか?

もちろんです。まずはバークリー音楽大学で出会った塚本浩哉さん。本当に素晴らしいオリジナル曲を書かれます。独自の音楽性で全米各地でツアーされています。次はニューヨークに来てすぐ、共通の友人を通じて知りあった中井勉さん。これぞジャズギターという素晴らしい圧巻のプレイが魅力的です。

あとは僕よりも若い世代にも、桜井竜也くん、吉田孟くん、金澤悠人くん、小田村愁くん、Akira Ishiguroくんといった、新しい感覚を持った素晴らしいギタリストがたくさんいますよ。

みんな日本にもツアーに行っているので、彼らのウェブサイトをチェックして、ぜひとも聴きに行ってください。

最後に、長年、ニューヨークで活躍されていた井上智さんと阿部大輔くんもおすすめしたいです。ニューヨークに来てから知り合って、すごくお世話になり、そして影響を受けました。

■(では話題を変えて)NYでギターをお仕事をされることになった経緯など、お聞かせください

ニューヨークに来る前から自分の曲を書いていたので、「自分の音楽を、もっと多くの人に聴いてもらいたい。色々なところで演奏したい」といった思いが強かったです。これで勝負するぞ、といった決意ですね。

ニューヨークにきた当時は、音楽以外の仕事はしないようにしていました。生活が厳しくても、音楽以外の仕事には手を出さず、演奏をして稼ぐと、自分に縛りをかけてました。一度、音楽でない仕事もしたのですが、「この仕事は責任を持てないな」と思い、そのギャラを捨てたことがあるんです。いま考えたら、貰っておけば、もっと楽だったかも?とも思いますが(笑)。

その後、幸いにも多くの人たちとの出会いもあり、プロのギタリストとしてやっていけるようになりました。ただ、20年前と今では、やり方が大きく変わってきている気がします。当時は、演奏だけでなんとかやれた部分もありましたが、今は演奏の機会が減り、逆にYouTubeなどの発信機会があったり。ライブでCDを手売りしていたのが、今はCDを買わない人も増えて、オンラインの販売にも気を配らなければならなかったりしますね。

■日米のギタリストに違いを感じますか?

アメリカで「上手い」と言われても、褒め言葉じゃないんです。楽器が上手い上手くないというのは、さほど重要ではなくて、個性的であることが良いとされています。

楽器が上手くても表現するものが無かったら、それは評価されません。自分の音楽が出来ているとか、技術があるかどうかといったことよりも、自分の中で「こういうことがやりたい」というものがあるほうが、やりやすいと思います。楽器を上手くなることと、音楽を磨き続けることは、似て非なるものなんですよね。両方、大切ではあるのですけど。指が動くことよりも、自分が弾きたい音があるとかね。

■これからやってみたいこと。やるぞと思っていることは?

行ったことがない国に、ツアーで行ってみたいです。日々の鍛錬はニューヨークで積みながら。自分の音楽を広く伝えたいという気持ちもありますし、行ったことがないところに行くことで、新しい曲が書けたりもするんです。

■日本のギタリスト同士にメッセージをお願いします

最初は、他人の演奏のカッコいいと思うところを覚えてジャズを学んでいくと思いますが、最終的には、自分が演りたいと思うものを目指されることをお勧めします。自分の曲を書き、それを追及して行くと、自分の音楽は自分しか出来ない、という状態になってゆきます。極端な話、テクニック的に上手くなくてもいいんです。

初心者の方は「この曲から始めなければならない」のようなことを色々と考えたりすると思いますが、とにかく、自分のやりたい音楽、やりたい曲に取り組むこと。自分の演りたい曲がDbにような珍しいキーだったり、馴染みのない曲だったりしても構いません。自分が情熱を持ってやれる曲に取り組むほうが良い。その姿勢が演奏にも影響してくるし、個性として残ってゆきます。

過去に、モントリオール・ジャズフェスティバルに出演したことがあるのですが、もし私がスタンダードばかり演っていたら、声が掛からなかったかもしれません。自分がオリジナルを書いて、自分のやりたいことをやっていたから、出来たのだと感じています。

私の大切にしている言葉に、松尾芭蕉の「古人の跡を求めず、古人の求めたる所を求めよ」というのがあります。これは、先人たちの遺業の抜け殻を追い求めるのではなく、先人の理想としたところを求めなさい、というメッセージだそうです。

「何故、マイルスはあの曲を書いたのか?」「コルトレーンやモンクは、何故、あのようなハーモニーを使ったんだろう?」それを考えて、自分の中に取り込んでいく。例えばアランホールズワースを聴いて、そっくりに弾くことを目指すのではなく、彼が何を弾きたかったのかを考え、エッセンスを取り込み表現していくことで、自分のスタイルを見つけていく。そうしたアプローチが、もしかすると最も手っ取り早く、自分のオリジナリティを発見できる方法になるかもしれません。

ジャズは個性の音楽なので、皆んなが同じものを続けていたら、新しいものは生まれてきません。創っているときは何を作っているか分からないくらいが楽しいもの。自分のやりたい・弾きたいを積み重ね、個性を大切にしていくと、セッションやライブにも成果が現れてくるはずです。

やりたいことが見えて、今の自分とギャップがある場合はラッキーです。そのギャップを埋めることを目指せば良いのだから。一方で、やりたいことを見つけることが難しい、ということもあるでしょう。その時は、いま持っていることを大切にするのが良いと思います。いま持っていることに感謝するというのかな。やりたいこと=新しいことを探す、ということになりがちですが、いま持っているものをとことん追及していくことで見えてくることがあるかもしれませんよ。

創っている時は楽しいものです。その追及を続けることも楽しいです。90歳近いジーン・バートンシーニも、現役で、自分の音楽を追及し続けていると言ってました。楽しくないことは止めた方が良い。お互いにやりたいことを追及してゆきましょう。

■高免信喜(たかめん のぶき)

http://jp.nobukitakamen.com/
1977年広島県広島市生まれ。桜美林大学を卒業後、2001年にアメリカに渡り、ボストンのバークリー音楽大学に入学。2004年に同大学を首席で卒業と同時に、活動の拠点をニューヨークに移す。以来、トリオ、ソロギター演奏をベースにグローバルな演奏活動を続ける。自己のグループでは、Iridium Jazz Club、Blue Note NY、Blues Alleyなどに出演し、世界最大級のモントリオール国際ジャズフェスティバル、そしてその他数多くのジャズフェスティバルからも招聘され出演する。ニューヨークを中心とした演奏活動に加え、北米やヨーロッパでのツアーも行い、2004年からは毎年日本ツアーも行っている。これまでにWhat’s New Records、Summit Recordsなどからオリジナル曲を中心とした7枚のリーダーアルバムを発表し、世界各国のメディアに取り上げられる。特に最新作『The Nobuki Takamen Trio』はオールアバウトジャズ誌で5つ星を獲得し、「これまでに日本が輩出した最高のジャズギタリストであることは間違いないだろう。」と絶賛される。演奏家としてだけでなく、全米のUSA Songwriting Competition 2019のインスト部門で第1位を獲得するなど、作曲家としても高い評価を得ている。演奏家/作曲家としてだけでなく、世界各地のジャズワークショップや学校訪問を行うなど教育面にも力を入れており、ギタリストを対象とした個人レッスン、通信レッスン、YouTubeなどでも積極的に情報を発信している。Acoustic Image社、Raezer’s Edge社、Eventide社、Sommer Cable、Reunion Blues エンドースメント・アーティスト。

■最後に(編集者から)

ギター片手にアメリカに渡り、20年近い活動をされてきた高免さん。ご経験からの説得力あるお話を、沢山お聞きすることができました。

自分がやりたい音楽を追及し続ける、ということが最も重要で、かつ楽しいことであるというメッセージ、大切に考えたいと思います。高免さん、お忙しい中、インタビューご協力ありがとうございました。

(追記)
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