今回はサウンドデザイナー椎野秀聰さんの著書「僕らが作ったギターの名器」のご紹介です。
「僕らが作ったギターの名器」(2010、文藝春秋)¥850+税(初版2010/09/20)
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166607709
なんと終版になってました。お求めの際は、古本を探すしかありません。懐古本だと思われて敬遠されちゃったのかな。勿体無い。寄り道読書には最適な本です。
■サウンドデザイナー 椎野秀聰さん
椎野さん曰く、サウンドデザイナーとは「目には見えないサウンドを共有する、つまり目指す音の質を、具体的に説明することが出来る人」だそうです。
1947年生まれの椎野さんは、こんな方(著書から抜粋)。
・グレコ、アリア、フェルナンデス、イバニーズ、グヤトーン、ローランド、エルク、カスガ、モーリス他、ギターや周辺機器をプロデュース
・ギブソン、フェンダーUSAからの依頼による生産工程検証
・プリンス「パープルレイン」でも使用されたテレキャスターモデル「Mad Cat」設計
・カスタムギターメーカーESP起業(1975)
・椎野楽器設計事務所 設立(1977) ※店舗「PACO」
・Vestax設立(1987)
・ディ・アンジェリコのブランドの復活・存続を託された(1988)
他にも功績多数。
■著書内コメントご紹介(抜き出し)
本著書には、沢山の名言が載っているけれど、幾つかピックアップすると。
「ギターの設計上で一番重要なポイントはバランス」
「ギターをカスタマイズする際に大事なことは、演奏をジックリ観察すること」
「音に納得がいかない場合、サウンドの勘所は、案外、細部に宿っている」
「良い音とは?の問いは、永遠に解き明かされない謎」
「民族でも音の好みが異なる」
「ギターと周辺機器(エフェクター、アンプ)を含めて大きな楽器」
「海外のミュージシャンにはアンサンブルの妙味を心掛けている人が多い」
「ギター選びでは、ブランド・スペック・値段などの事前知識を全部取り払って向き合うこと」
「仲間から一目置かれるようなギタリストは、誰もが自分の内なるサウンドを持っている」
「ギターのテクニックとは、どれだけ早く指が動くかではない」
「ギターのキャラクターを熟知し、今までにない、新しい時代の音を創る人こそが尊敬される」
「木を知ることは、ギターを知ること」
「ポリシー無くして、新たな時代のオリジナリティは生まれようがない。」
「技術がオリジナリティを約束してくれる時代は、とっくに終わっている」
読みたくなっちゃった人は、古本を探してくださいね。
■目次(抜粋)
第1章 サウンドデザイナーの仕事
第2章 楽器とサウンド
「良い音」とは、どんな音だろう
民族でも違う音の好み
アナログ楽器とデジタル楽器 ほか
第3章 ギターの歴史
第4章 エレクトリックギター
ピックアップの構造
ソリッドの傑作 レスポール
大胆な設計思想 テレキャスター
優れた演奏性 ストラトキャスター
セミソリッド(セミホロウ)ギター
セミアコースティック ギター
フルアコースティックギター ほか
第5章 ギターと木材
ギターの部位と木の種類
産地によって違う木の性質
良材が供給される工房の格付け
木を寝かせる理由
張力との闘い
木の経年変化
単板と合板 ほか
第6章 21世紀のギター
ポリシーが問われる時代 ほか
■終わりに
今野さんは 、2002年3月、54歳にして、所有されていた音楽関連会社(全て無借金、黒字会社)を、全て後輩に委ねて、音楽分野を離れました。ヒットした曲と似たようなアレンジの曲を我先に作り、使い捨てていく、日本の音楽事情を見切られたそうです。
その2002年から18年近くの月日が経ちました。日本の音楽事情は、内野さんが憂いた頃よりは、少しはマトモに戻っているでしょうか。
いま私の周囲に、老若男女含めて、自分の音楽を求めて切磋琢磨されている人たちが沢山います。幸か不幸か不人気ジャンルであることに加え、飛び道具無しの生音・即興・アンサンブル重視なことなどが作用しているのかな。これからもジャズギター界を正しく楽しく盛り上げてゆきたいですねー
椎野さん、素敵な本をありがとうございます。
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