今回のインタビューは菅野義孝さん。歌伴をテーマにお話を聞きます。菅野さんは、ご自身の有料会員専用サイト(後述「ジャズを学ぼう」)に、「歌伴」をテーマにした専用コンテンツ(教則動画)を上げていらっしゃいます。
最近「歌伴デュオ」についての新しい記事や動画がないか目を配っているのですが、菅野さんのように専用のテーマを立てて掘り下げていらっしゃる方は、あまり見かけたことがありません。
では菅野さんに話を伺ってゆきましょう。まずは歌伴デュオの魅力から。菅野さん、宜しくお願いします。
■デュオならではの楽しさがある
普通にインテンポでの演奏は、ベースも入って3人でやっているイメージで演奏することもありましたので、デュオだから特別、という感じはないように思います。
デュオならではの楽しさは、いくつかありまして、
・コードをアレンジできる
その時のサウンドや気分で、コードをちょっといじったり(転回形や代理コードなど)できるのが楽しいです。
・タイミングも自由
いいところでフェルマータしたり、ルバートにしたり、もちろんボーカルをよく聴きながらですが、自由にできるのが楽しいです。
・移調や転調
他の楽器に比べると、ギターは移調に対応しやすい(1音上下くらいなら)ので、ボーカリストの歌いやすいキーにすぐ移調できるのもデュオならではかなと。「この曲久しぶりに歌ってみたらキーが高くて…半音下げてちょーだい」ということが何度かありました。
それと、曲の途中で、例えばギターソロのあとキーを半音上げてボーカルへ、なんていうことが思い付きでできたりして楽しいです。
■伴奏の基本は「ボーカルが歌いやすいかどうか」
「メロディを歌いやすいようにハーモニーを奏でる」
歌伴の基本は、これに尽きると思いますが、具体的にはいくつもポイントがあります。曲によって様々ですが、一般的なところでは、
・メロディに対してのトップノートの選び方
・メロディが気持ちよく伸びているときは余計なことをしない
・伴奏を録音しておいて、それに合わせて自分で歌ってみる
歌詞については、様々な意見があると思いますが… 僕自身、歌も歌うので歌詞は一応覚えるのですが、そんなに重要なことかなぁ?という感じです(歌詞に大事な意味が込められている曲は別です)。
歌詞を知らなくても、歌をよく聴いて、感じたまま演奏するのが一番かなと思います。例えば、日本の曲をバンドで演奏するとして、歌詞の意味をどこまで考えるか… 実はあまり考えていなかったりしますよね?そんな感じでいいんじゃないかと。
まずは歌詞は置いておいて、しっかり伴奏できるようになることが大切だと思います。そして、余裕が出てきたら次のステップとして歌詞の内容を覚えていく、という順番がいいと思います。
■歌伴脳を鍛える
「歌伴脳」は僕が適当に作った名前なのですが、例えば「譜面ないんですが、酒バラをBbで」と言われたときに使う脳のことを指しています。譜面があれば譜面通りに演奏するので、インストで新曲にトライする時と同じ脳を使いそうですが、譜面なしで演奏する場合は、脳の普段使わない個所(部位?)がジワーっとなります。そこを歌伴脳と呼んでいます。
コード進行を度数で考える練習を重ねることで歌伴脳が鍛えられていきます。ジャズマナの動画(次項ご参照)で解説していますので、ぜひご覧ください!
スマホのアプリを使えば必要ないことなのかもしれませんが、せっかくギターですから、移調しやすい楽器の利点を活かせるように自分を磨くのも悪くないと思います。
■動画サイト「ジャズ学ぼう(ジャズマナ)」について
アドリブに必要な知識をすべてレッスンやセミナーで伝えると、それだけで何時間も費やしてしまいます。
・コード進行や基本フレーズなど、みなさん共通で練習する内容 → 動画で
・より詳しい解説、自分に合う練習方法の提案など → 個人レッスン
このように動画と個人レッスンを組み合わせることで、効率よく短期間でマスターできるように改良したメソッドが「ジャズ学ぼう(ジャズマナ)」です。必要な知識を「習う人目線」で順序良くまとめた僕の自信作です。
【コンテンツ】
・アドリブ基礎編
・ブルース
・リズムチェンジ(循環)
・コード進行アナライズ
・相対音感
・歌伴脳
・アドリブ実践編(スタンダードを1曲ずつ詳しく解説)
・バッキング・コードワーク
・ハーモナイズド・ベースライン
・ソロギター
【入会のご案内】
https://jazzmanabow.com/
・月額980円ですべての動画をご覧いただけます。
・オンラインセミナー&座談会(月に3~4回開催)にもご参加いただけます。
ぜひ、ご利用ください!
■名人のCDを何度も聴く
オススメのデュオアルバムだとやはり、エラとジョーパスのデュオですね。エラ&パス・アゲインはよく聴きました。他もいろいろ聴いてきて、どれも良かったので絞れませんが…
ボーカリストが普段どんなCDを聴いているか、教えてもらうといいと思います。イントロ/エンディングや雰囲気も共有できますし。名人のCDを何度も聴いて、しっかりイメージできるようになることが大切です。
また、イントロ&エンディングについては、僕の本を買って練習しましょう!
https://www.kannoyoshitaka.com/introbook/
↑ 「イントロ&エンディング本」サンプルページです。
■1人だけになってしまう間奏
ボーカルとのデュオの場合、間奏はギター1人だけになってしまいますので、どうしよう!?ってなりますよね。ソロギターの練習も必要になってきそうです。こちらも前述「ジャズマナ」で練習方法を解説していますので、ご覧ください。
慣れてくると、途中でルバートにしたり、スローの曲を倍のテンポにしたり、自由に、かなり楽しく演奏できます。
■ボーカルとの出会いはジャムセッション
ボーカリストとの出会いはやはりジャムセッションですね。当時一緒にやっていたベーシストが上手にお誘いして一緒に練習するようになったり。僕は人見知りなので自分から声はかけられませんでした。
ジャムセッションでボーカルの時に「僕も入っていいですか?」と積極的にいくのもいいと思います。ほどほどにですが。
■ボーカルの伴奏はジャズギターの最終ステップ
ボーカルの伴奏を極めることは、実は一番難しい、ジャズギターの最終ステップかなと思っています。練習してきたすべてを注ぎ込んでベストを尽くしたつもりなのに「なんか歌いにくかった」って言われてしまったり、一周回って「シンプルに刻むのがベスト、余計な音は無用」って思うようになったり、深いです。
歌伴は、気持ちにかなりの余裕が必要だと思います。キーも違うしイントロエンディングもあるし。そのためには、ジャムセッションに通ってステージ慣れしておくことも大事だと思います。あとはジャズマナ動画で練習すればバッチリです!
■菅野義孝さんプロフィール
岩手県出身。潮先郁男氏に師事。1998年「ジャズ新鮮組」でプロデビュー。アルバム「Movement」で、ジャズの巨匠グラディ・テイト(ds)、メルビン・ライン(org)と共演し好評を得る。演奏活動の他に、教則本の執筆、ジャズセミナーなど、ジャズの楽しさを広める活動に力を注いでいる。
■最後に(編集者から)
菅野さんには何度か取材させていただいているのですが、ギタリストのリアルな悩みに丁寧に寄り添ってくださり、課題の見極めと適切な解説を指南くださる方の印象です。学びの過程をロードマップの形でも整理されていて、何から手をつけて良いか迷われている方は、個別レッスンも受けてみられるのも良いと思います。
菅野さんの提唱する「歌伴脳」。かくいう私もですが、この歌伴脳を身につけるのに苦労されているギタリストは多そう。歌伴脳は、ボーカルとだけでなく、あらゆるデュオにも通じるし、セッションにおけるアンサンブルにも効能ありそうです。限りある練習時間や集中力を、何にどれだけ配分するかにも拠りますが、目指した先には大きな実りがありそうです。
菅野さん、お忙しいなか、取材ご協力ありがとうございました。
【ご案内】X(twitter)にて記事の新着をお知らせしています。
https://twitter.com/jazzguitarnote