メトロノームを高音質で鳴らす

ウチには、30代の頃に買った、JBL 4428という比較的大きめのスピーカーがあります。買った頃はピュアオーディオ全盛の時代で、秋葉原の各電機店には、大きなスピーカーやデッキ類が並ぶ専門コーナーが広く設けてあって、そこそこ賑わっていました。

いまやピュアオーディオにお金をかける方も少なくなり、最近、立て続けに大手国内メーカーの倒産がありました。私自身、ネットワーク上で音源を買い、イヤホンやヘッドフォン、iPad等で済ませてしまうことも多いです。

とはいえJBL 4428は、いま以上の貧困時代に、調べて、悩んで、コツコツお金貯めて、ようやく手に入れたスピーカー。私にとって、愛着のあるブランドなんです。

◼️Bluetoothスピーカーとピュアオーディオスピーカー

これまで、私のなかの認識では、iPadを鳴らすBluetoothスピーカーと、ピュアオーディオを鳴らすスピーカーは、全く別ジャンルと捉えていました。ギターアンプとオーディオアンプのブランドが重ならないのと同じように、違う業界くらいのイメージで。

最近、Bluetoothスピーカーのブランドシェアを知る機会があり、ピュアオーディオとブランドの重なりがあることを改めて確認しました。特にJBLのBluetoothスピーカーのシェアは大きく、ピュアオーディオからネットワークオーディオへの時代の変化に伴い、しなやかに領域を拡張/シフトしていたことが分かります。

◼️メトロノームをスピーカーで鳴らす

そんな昔話はさておき、皆さんは、どんなメトロノームを使われていますか?

前に記事も書いたのですが、私はiPadのメトロノームアプリを使っています。ギターアンプと同時に鳴らすので、iPad単体では音量が足りず、Bluetoothスピーカーで鳴らします。

検索してみると分かりますが、メトロノームアプリは数えきれないほど存在していて、選ぶのに迷うほど。機能とデザインを兼ね備えた素晴らしいアプリが、無料・有料含めて、多く提供されています。

私は購入していませんが、わざとリズムを揺らしたり、徐々にスピードを早めたり遅めたりする機能が付いたアプリも売られていて、実践を想定し、リズムの芯を鍛えてくれる効能があるそうです。

Bluetoothスピーカーとメトロノームアプリの組み合わせ。もし試したことがない方がいらっしゃったら、絶賛オススメです。

◼️メトロノームに、ハイスペックなスピーカーは不要?

私の場合、メトロノームに、多くの機能は求めていません。カッ・カッ・カッという連続音が、心地よく、ギター音に負けることなく聴こえてきてくれれば、必要にして充分。リズムマシン的な要素やiRealPro的な伴奏は、練習においては不要です(別用途では重宝しています)。

故に、メトロノームアプリに使うBluetoothスピーカーには、音楽を聴く用途ほどの過度なスペックを求めていませんでした。事実、メトロノーム用に使っているBluetoothスピーカーは、¥4,000を切る価格ながら、メトロノームアプリの出力先としてストレスなく機能してくれています。

そんななか、ふと、試してみたいコトが浮かびました。メトロノームを高音質で鳴らすことで、練習の気分をアップしてくれる効能があるのでは?と。

メトロノームに限って言えば、カッ・カッ・カッという連続音のモノラル再生だけなので、スピーカー選択による、さほどの音質の違いがないことは分かっています。がしかし効能ありの可能性がゼロでないなら、試してみる価値あり。実験テーマは「高音質なメトロノームは、練習の気分をUPさせてくれるか」です。

◾️意外に難しそうな音質の見極め

スピーカーから聴こえるメトロノーム音の品質については、(1)音源と(2)スピーカーの、2大要素が主に影響しそうです。

(1)音源(メトロノームアプリ)

今回は、メトロノームのクリック音に限定した検証です。普段の練習に、リズムマシンやiRealProを使っていないこともありますが、クリック音だけで検証したほうが面白い、という単純な理由が大きいかな。

そして、幾つかのメトロノームアプリを聴き比べた感じでは、突き抜けて高音質なものはありませんでした。一方、他と比較して明らかに音質の悪いアプリはありました。が、それでもリズムを刻む機能に大きな支障がある訳ではありません。

なお、アプリのスペックと価格との間に、相関関係がありません。今回の実験には、検証に耐えうるメトロノームアプリ音源の品質が必要だったので、誰もが知っていて安心・安定感のある、YAMAHAとKAWAIの、2つのアプリを使ってみます。なお両アプリとも無料です。

(2)Bluetoothスピーカー

今回の主たる検証対象はBluetoothスピーカー。上記(1)アプリ側の音源は固定し、スピーカーの違いによる効果を確認します。数値では測れないので、頼りは私の感覚値です。

自宅練習に使うメトロノーム用途に限定して考えると、次のような要件が想定されます。①屋外に持ち出す訳ではないので、ポータブル性よりは音質重視。②屋内ながら気分に合わせて移動できると良い(気分によって部屋や場所を変える)。③さほど防滴•防水性は追求しない。④自宅内はwi-fiが利用できる環境なので、自由な場所で、音楽鑑賞など発展的な用途にも使えると吉(メトロノームで使う分には関係ない)。

ちなみに、Bluetoothスピーカーのスペックの高さと価格は、アプリとは異なり、基本的に比例しています。今回は、高スペックで信用できるブランドとして、冒頭で触れたハーマンインターナショナル(JBLの発売元)さんより「JBL Charge 5」をお借りします。最新の贅沢な音質で、どれくらいの効果が得られるでしょうか。https://amzn.to/3PgBBpc

◼️ブランド愛に惑わされないように

実験の大前提として、JBLというブランド愛に惑わされないように、注意する必要がありました。ギターで言う、フェンダーやギブソンといった、音楽にとっては大切な付加価値の部分です。

これまでメトロノームを使うときに、「音色」や「音量」には気を配ってきましたが、「音質」には拘っていませんでした。ブランド愛に左右されず、純粋に、メトロノームの音質が、どれだけ練習の気分を高揚させてくれ、ギターの練習に良い影響を及ぼしてくれるのか。そんな配慮のもと、確認をおこないます。

◼️ JBL Charge5について

実験に使ったスピーカー「JBL Charge5」のスペックは、下記の通りです。

Bluetoothスピーカー「JBL Charge 5」https://amzn.to/3PgBBpc
・出力 40W
・2ウェイ・スピーカー構成
 1)感度を向上させた独自開発の大口径楕円型ウーファー
 :ラウドネスが増幅し、よりダイナミックな低音を再現
 2)20mm径ツイーター
 :明瞭度の高い高音域を実現
・エッジと重量を増幅したデュアル・パッシブラジエーター
 :より量感と奥行きのある豊かな低音の再生を可能に
・最長20時間の再生時間、モバイルバッテリー機能
・IP67等級の防水性と防塵設計
・再生周波数帯域 60 Hz – 20k Hz
・サイズ22 x 9.6 x 9.3cm、重量 0.96kg
・充電時間4H、音楽再生時間20H
・発売 2021年5月21日
・価格24,200円(税込/JBLオンラインストア)

https://jp.jbl.com/CHARGE-5-WIFI.html

価格帯や用途の異なるスピーカーを比較しても仕方がないのですが、所有しているBluetoothスピーカーの5倍の価格なので、その分、圧倒的に高スペックです。Bluetoothスピーカーの購入にあたっては、利用の目的や条件に応じて選ぶことになると思いますが、同クラスでは秀でてバランスの良いスピーカーだと思います。

ちなみにお借りした「JBL Charge 5」のカラーはレッド。ご担当の方が、私のセミアコ・フルアコの色をご存知のはずがないのですが、並べて見ると良い感じ。

こうした些細な遊びも、練習には大切かもしれません。

◼️(検証結果)重心と奥行きのある「カッ、カッ、カッ」

おっ、予想以上にイイ感じ。

・ギターアンプも然りですが、スピーカーの口径や構成、出力の大きさといった要素が、音質にも影響することが実感されました。重心と奥行きがしっかりと感じられる「カッ、カッ、カッ」の響きが聴けます。気のせいか、メトロノームに耳を傾ける集中度が向上し、リズムへの意識が高まっている気がします。

・予想外に面白かったこと。クリックの音色は、どのアプリも同じように思われがちなのですが、微妙に差異があります。高スペックのスピーカーで再生すると、その音色の差がより目立ちます。

音源として、KAWAIとYAMAHAのアプリを比較再生したのですが、変化が大きく実感できたのはYAMAHA。クリック音の低音域に発音を重ねているようで、その音成分が、より分離して聞こえて、奥行きが感じられました。音色の好みについては、各自、ご確認ください。

・スペックの面で触れておきたいのは、今回使用しているJBL Charge 5が、ステレオではなく、モノラルの2WAYスピーカー(ウーファーとツイーター)であること。2つのスピーカーを、ステレオで分けるのではなく、ウーファーとツイーターで分けていることに、とても新鮮さを感じました。そのことによって、より音の解像度が上がる。ビートも出せる。メトロノームのように音源がステレオではない場合、また2発のスピーカーを距離をおいて設置する構成でない場合、2WAYスピーカーが有効な場合もある、というのは発見でした。

・メトロノーム実験のついでに、音楽を聴いてみたのですが、その充実した音に驚きました。JBL Charge 5はSBCのみのコーデック対応ですが、2WAYスピーカーというスペックが生きる用途では、特に影響ないように思います。出来ればイヤホンやヘッドホンを使わずに音楽は楽しみたいタチなので、その点も高評価。

まとめとして、お察しの通り、メトロノームの音質が、リズム感の向上に直接的に繋がることはありません。見過ごしそうなメトロノームの音質に、多くを期待せず面白がる感覚で臨めば、集中して聴きたくなる、聴いてて嬉しくなる、練習が楽しくなる、その効能はありそうです。

◼️ハーマンさんにコメントを頂く

ハーマン・インターナショナルの石原さんにコメントを頂きました。

「JBLは世界最大級の音響メーカーであり、特にスピーカーの分野では1946年創立以来、おかげさまで多くのお客様に支持されております。その人気の秘密はやはり、スピーカーユニットを一から開発できる数少ないメーカーであり、それによる電気信号から音楽信号への変換されるレスポンスの良さです。これがJBLサウンドの迫力と明瞭さの秘訣であり、どんな音楽でも楽しく聴くことができる理由です。」

電気ギターを弾かれる読者が多いので、アンプやスピーカーについて、コダワリある方もいらっしゃるはず。JBLのBluetoothスピーカー、是非、店頭などで試聴してみてください。

◼️最後に(編集者から)

メトロノームの音質に関する効能実験のレポートは以上です。日々の練習環境に刺激を求めている方。より高音質のBluetoothスピーカーを使った、プチ贅沢なメトロノームは如何でしょうか。

メトロノームを鳴らすだけに、高価なBluetoothスピーカーを使うのは流石に勿体無いと思った方はご心配なく。本来の音楽再生において、コスパの高い優秀なスピーカーであること、確認できました。ギターの練習環境も大切ですが、音楽を聴く環境も、同じくらい重要なこと。あまり機材選びに時間も掛けていられないかと思いますが、たまに寄り道して楽しむのも宜しいかと。

ハーマンインターナショナル・石原さん、機材の貸し出し、ありがとうございました。読者の皆さま、余興実験に、最後まで、お付き合いいただき感謝申し上げます。

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2 comments to “メトロノームを高音質で鳴らす”
  1. 弦楽器だとメトロノームとしてだけではなく、トーンジェネレーター(ピッチパイプ)として使うと、大きな音が出せるので音程の構築に役立ちます。Bluetoothだと僅かに音が歪むのでライン接続がベターです。

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