先週、2回目のモデルナワクチンを接種しました。2日あとの夜から38度弱の熱が出て、抜け切ったのは4日目の朝。高い熱を出したり倒れた知人もいたので、副反応としてはマシなほうだったのでしょう。毒気が抜けるまでの数日間は、全くギターを触る気力が湧きませんでした。なんとか罹らないようにしたいものです。
さて、今回のインタビューは富田光(とみた こう)さん。富田さんとは4年前に出会いました。何か夏季休暇を有意義に過ごせないかとWEB探索をしていて、富田さんのHPを発見。3日間の集中特訓をお願いしたのがキッカケです。今回、YouTubeで懐かしいお顔を偶然に発見して、インタビューをお願いしました。
富田さんのホームページタイトルは「コンテンポラリージャズギタースクール」。現代的な理論や奏法にお詳しく、実践に活かせる形で優しく説いてくれています。
では早速、いつもの質問を聞いてみましょう。
◼️始められない時、集中できない時の切り札
集中力を長く保つのはとても難しいことです。
特に、アドリブの練習においては、いつの間にか全く意図していないことを無意識に弾いていたりしてしまいますね。集中力のない時のアドリブほどつまらないものはないし、意味のない練習もないです(笑)。
なので、僕自身集中力がない時、というよりも集中力を保つためにいつもやっていることは、
「時間を区切って練習をすること」
です。
集中力があって気の済むまでやりたい時は、その感情に従いますが、練習時間が限られている中で、必要な練習を集中力を保ったままやるには、時間を区切るのが最善かなと思います。
僕の場合はこんな感じです。
・基礎的な練習
アルペジオやスケールを1つピックアップする。練習するポジションなどを決める(12キーでやることも多いです)。最初のテンポを決めたら、1つのテンポを1分~2分行う。テンポを少し上げてまた1分~2分。この繰り返しで限界の少し上のテンポまで行きます。
・アドリブの練習
トピックを1つに絞って、その理論やフレーズなどを使ってアドリブ。これを5分~10分ほど行う。終わったらまた別のトピックに絞って5分~10分練習する。この繰り返しです。
例えば、
・G7の時は必ずコンディミを使う(5分)
・短いフレーズを展開していく(5分)
・単音とコードを交互に弾く(5分)
・12フレットより上でアドリブ(5分)
みたいな感じですね。その日によって内容は変わります。
大事なのは、
「何をどれくらいやるか」
をハッキリさせることだと思います。そして、
「途中で無意識にトピックから逸れないこと」
です。
その上で、時間をきちんと区切ってやること。僕の場合は、スマホでタイマーを設定して、アラームが鳴ったら次の練習へ移ります。後ろ髪を引かれる感じになることもありますが、ダラダラ中身のない練習をするよりは全然良いです。
時間を決めたら、必ずアラームがなるまではその練習をやり切る意思も大切です。
大人の場合、5分程度であれば集中力は必ず持つはずです。
始められない時
やる気が起きないときはやらなくて良いと思いますが、そう言っていては何も始まらないので、
「今の自分に足りないもの」
「やりたいけどできていないこと」
を明確することから始めると良いと思います。
例えば、
・ディミニッシュスケールを覚えていない
・Abキーでのアドリブが苦手
・楽譜が読むのが遅い
などですね。
始められない時というのは、単にモチベーションの問題である時もありますが、何をすべきか分からない時でもあるのかなと思います。ですので、
「自分が今何をすべきなのか」
「理想のアドリブに近づくためには何が必要なのか」
を明確にすることが大事だと思います。
そして、何をすべきか分かったら、トピックごとに細かく時間を区切り、集中力を保った状態で練習をしましょう。
◼️理論を実践に昇華させるには?
もし理論を理解できていて、それを楽器で表現できないのであれば、その原因はおそらく
”指板上の音をきちんと把握できていないから”
です。
アドリブの中で使いたい理論があって、弾くべき音が分かっていたとしても、その音が指板上のどこにあるのかを分かっていないと、もちろん弾くことはできません。
正直なところ、順番はどちらでも良いと思います。僕の場合は、指板上で弾いてよい音やポジションを覚えた後に、理論がリンクしたという順番でした。今は興味深い理論があれば、その理論を理解して、ギターのポジションを考慮した上でベストな使い方や捉え方を考えていきます。
どちらにせよ、サウンドと理論は必ずリンクしていて、どこかでビタッと感覚が合う瞬間が来ると思います。
ただし、指板上の音を把握できていないというのは、ギタリストに多い弱点です。理論と実践を紐付けるためには、やはりここを克服すべきだとと思います。
プロを目指す人はもちろん音名を把握しておくべきですが、そうでない人でも、理論を実践で使うには、その音がどこにあるのかを把握しましょう。音名を完璧に分からずとも、場所・ポジションという捉え方でも良いので、ある程度は分かっておくべきだと思います。
あとは、その理論が反射的に分かるようになるまで、実践を見据えた練習をすることです。
例えば、「Dm7の時にFmaj7のアルペジオを弾く」という理論を使えるようになるには、「Dm7」を見た時に「Fmaj7」が反射的に出てくるようになるまで意識して練習を積むことです。
Fly me to the moonを、”Dm7の時は必ずFmaj7のアルペジオを弾く”というルールの下で練習する、という感じです。
意外とルールを決めずに何となくアドリブの練習をしてしまっている人が多いと感じるので、練習ではきちんとルール(縛り)を設けて練習するようにすると良いと思います。
◼️いまの自分を乗り越えるコツ(次にやるべきこと)
当たり前の話ですが、今の自分を乗り越えるには、「練習」しかありません。
なかなか上手くならずに伸び悩んでいる人の多くは、単なる「練習不足」である可能性が高いです。
プロになった人、本気でプロを目指して鍛錬している人、プロになってからも常に上を目指し続けている人というのは、半端ない練習量をこなしています。
アドリブというのは、そんな簡単に身に付くものではありません。言い方はキツいかもしれませんが、ちょっとやそっとの努力では到底自分の理想にたどり着くことはできません。
今の自分を乗り越えるには、それ相応の努力を伴う必要があります。
ただし注意したいのは、練習時間を長く取ろうとすると、「今はまとまった時間がないから後にしよう」となってしまい、トータルの練習時間が少なくなってしまうことです。
1分でも1秒でも長く楽器に触れていることこそが何よりも大切です。練習内容ももちろんですが、少ない時間でも楽器に触れている時間を取るように意識しましょう。
次にやるべきことを明確にするには、自分の理想像をある程度具体化する必要があると思います。
「あの人みたいに弾きたい」
「あの人みたいな音を出したい」
何でも良いので、自分の理想を少しずつ具体化しましょう。
ただ単に理論の習得を目指すようなことよりも、「理想に近づくためには何が必要か」を研究すると良いと思います。
自分がカッコ良いと思うものを研究するのは楽しいものです。なぜそのような音がして、なぜそんなにカッコ良いのかを紐解いていく作業なので、次のステップの第1歩としては最適かなと思います。
「その人のライブを聴きに行く」
「その人が演奏しているスタンダードを覚える」
「その人のソロをトランスクライブする」
「その人のフレーズをパクる」
「そのフレーズの理論を研究する」
「その理論を使って自分でフレーズを作ってみる」
「作ったフレーズをアドリブで出す練習をする」
目標を明確にすることで自ずとやるべきことは見えてきます。
自分の理想を具体化し、そこへ近づくために必要なものを練習する。こうやってステップアップしていくと良いと思います。
◼️富田光(とみた こう)さんプロフィール
富田光(とみた こう)
http://t-guitar-school.com/
15歳でギターを始める。高校卒業後、甲陽音楽学院に入学。ジャズを演奏し始める。
2005年度バークリー音楽大学奨学金試験に合格し、奨学金1万ドルを獲得。翌2006年、バークリー音楽大学に入学。Hal Crook, Tim Miller, Bret Willmott, Jon Damian、Bruce Saunders, Dave Santoro, Bruno Raberg等に指事。在学中、Dean’s List (学部長が認定する成績優秀者のリスト)に3期連続して掲載される。2008年バークリー音楽大学professonal music専攻卒業。Bachelor of Degree取得。
2009年に帰国し、活動拠点を関東に移す。現在は自己のトリオ・カルテットを中心に演奏活動の他、某大手音楽教室での講師活動などを行う。
◼️最後に(編集者から)
富田さんに、弱点克服の夏季特訓をお願いしたのは、もう4年前のこと。世の中がこんな状況になるなんて、誰が想像できたでしょう。当時は、日吉駅から徒歩15分くらいの場所に富田さんのご自宅があって、炎天下の中、駅からの坂道を、ギターケースを背負って往復したことが思い出されます。
富田さんにバークリー仕込みのコツを教えていただいたことで、私はコード伴奏の幅を拡げることができました。現在は引っ越しされたそうで、ご自宅での生講義も受け付けていらっしゃらないそう。生講義には敵いませんが、YouTubeに示唆に富んだ動画を沢山あげていらっしゃるので、是非、お時間あるときに覗いてみてください。
https://youtube.com/user/tomitako
本日はココまで。ありがとうございました。