ガットギター❹ 鳴らない工夫?

前回、旅行やリハに持参できるギターとして、ヤマハ SLG200シリーズを紹介させていただきました。

ヤマハ SLG200N(ガットギター)が私には意外性のある楽器だったので、今回、少し詳しい所感を記録しておきたいと思います。

■エレガットならば、生音(=胴鳴り)は大切?

エレガットは、電気ギターと異なり、弦の振動を直接拾えません。ゆえに、ボディからの振動を拾うピエゾピックアップの音と、内蔵するコンデンサマイクで拾った生音をミックスして使います。

一般的には、ピエゾピックアップの音があまりにショボいので、コンデンサマイクの割合を高めるのですが、音量や角度等で簡単にハウリングしてしまう。皆さん、苦労してます。

ピエゾ音が我慢出来ず、生音を追求した結果、エレガットではなくクラシックギター(生ガットギター)を使い、スタンドを立ててPAマイクで生音を拾う方も散見されます。

そして、常識的には、エレガットにとって、生音(=胴鳴り)は大切です。

ボディの鳴りが、ボディの振動にも連動し、ピエゾの音にも影響することは勿論のこと、実際にはエレガットをアンプラグド(生音)で弾く機会も多い。

私も、ガットギターは、胴体もあって、胴鳴りがあってこそ、成立するものと考えていました。ゆえに「気持ち良い生音が出る」ことも、エレガットを選ぶ重要なポイントだと。

■生ガットでもない、エレガットでもない

演奏人数が増え、音量の大きいアンサンブルになってくると、ハウリングなどの影響が大きく、コンデンサマイクや生音を拾う工夫では太刀打ちできなくなってきます。つまりピエゾ頼みの音づくりにならざるをえません。

それならばと、生音への執着を諦め、ピエゾピックアップからアンプへの出音を突き詰めていくと、設計のコンセプトもガラリと変わってきます。ピエゾとも、避けることなく共存する前提で、むしろ生音で表現できない音を追求していく、という発想。

もともとヤマハサイレントシリーズの開発コンセプトは静音機能だと思いますが、単なる静音やコンパクト性に留まらない面白さが、この楽器にはありますね。

■遅ればせながらサイレントギターの価値を認識

これまで、サイレントギターというジャンルに、さほど興味ありませんでした。反省しなければなりません。リビングでギターを弾いても、さほど邪魔にならないくらいの音量。気兼ねなく弾くことができます。

旅行持参も同様。例えば旅館に持ち込んでも、周囲に迷惑かけなくて良い。ヘッドホンアウトがあるので、必要あらば、スマホ用のポータブルスピーカーにPin-Pinケーブルで繋いで、音出しも可能です(※)。

(※)ヤマハ開発担当の方から補足コメントをいただきました。「サイレントギターはポータブルスピーカーに繋いで音を出す仕様になっていません。スピーカーが、アクティブかパッシブ か、またインピーダンスかによっても変わってくるため、自己責任の範囲でご使用ください。」補足ありがとうございます。

サイレントギターというコンセプト、アリですね。周囲に遠慮から練習の時間や場所に制限がある方には、超有効なアイテムだなと感じました。

■胴鳴りや空気感を表現する技術

ヤマハの開発ご担当者に聞いてみました。

「サドル下にピエゾピックアップが搭載されています。各弦独立はしていません。」

「本製品は、マイクを搭載していませんが、弊社独自開発 となるSRTパワードピックアップシステムを使い、ギターの実演奏から生成した「情報」をミックスしています。SRT(Studio Response Technology)は、失われた空気感を再現する技術です。」

「従来のエレクトリックアコースティックギターを、アンプやスピーカーなどを使用して鳴らすと、本来アコースティックギターが持ち合わせている胴鳴りや、ギターから人の耳に音が届くまでに空気を震わせる響き(空気感)が少なくなってしまいます。」

「SRTは、レコーディングスタジオで録音したアコースティックギターの音を、エレクトリックアコースティックギターで実現する、ピックアップ+プリアンプのシステムであり、従来のエレクトリックアコースティックギターで失われていた空気感を再現する技術です。そして、サイレントギターSLG200に搭載されるSRTパワードピックアップシステムは、この技術を応用して、胴が存在しないギターから胴鳴りや空気感を表現する技術となります。」

「胴鳴りがないため、エレキギターの様なソリッドギターやサイレントギターの様な形状のギターと同じく、ボディの共鳴が起こりにくいため、ハウリングは発生しにくくなります。」

インタビューご協力ありがとうございます。

■空間系エフェクトはシンプルながら機能的

私は、エレガットをジャズアンサンブルで使う場合は、普段、ほとんど空間系のエフェクトはかけませんが、バンドアンサンブルで使う場合は、空間系のエフェクトをかけることがあります。

SLG200シリーズに内蔵された空間系エフェクトは、シンプルながら良く出来ています。ヘッドホンを刺して練習する場合、簡便に空間系のエフェクトが掛けられるメリットは大きいですね。

■外部音源入力

aux inジャックから、iPhoneやiPadで鳴らした音源を、伴奏として入力(pin-pin接続)することが可能です。これが如何に練習にとって便利なものかは、想像つくところかと。

■内蔵チューナーの感度が予想以上に高い

巷で売っている汎用クリップチューナーよりも精度が高いように感じます。±0.02クラスの高性能チューナーとまではいきませんが、中間くらいの値は出ているのでは。充分に実用性がありそう。

■6Pでなく単3電池という利便性

単3電池2本の直列なので3Vで駆動しています。最近、エフェクター も単3駆動やAC電源仕様が増えていますが、これは有難い。

さらにボタンを押すとカートリッジごと着脱可能になっていて、交換がスムーズ。いまだに6P仕様のエレガットが多いなか、ユーザーのニーズを細やかに汲み取っていると感じます。

単3電池以外に、AC電源でも動くのですが、充電電池での使用が便利なので、電源コードが繋がった状態で演奏するよりは、単3電池での使用が楽かな。皆さんの都合で、ご判断ください。

■ジャックの配置が絶妙

本体に3つのジャックあり。①ヘッドホン用ジャック(ステレオミニ)、②伴奏音源をインプットするためのAUX INジャック(ステレオミニ)、③ギターアンプに繋ぐケーブルを繋ぐジャック(標準モノ)。

弾いてみると分かりますが、それぞれが絶妙な位置に配置されている。

①と②は同時接続が想定され、ヘッドホンが繋がる①は、ボディ上部に。机上に置かれた音源(iPadなど)と接続する②は、ボディ下部に。アンプに繋ぐケーブル用の③は、ステージでの取り回しに邪魔にならない背面に。変なところで感心してしまいました。

■最後に(編集者から)

・「運ぶ」という視点で記事をおこすつもりが、「サイレントギター」というコンセプトの有効性を再認識させてもらう機会になりました。

・エレガットの捉え方の整理にもなりました。

1)生ガットギターを使うことにこだわる。→ コンデンサマイクを立てたり、外付けしたりして対応。ソロやデュオ向き。

2)ピエゾピックアップとコンデンサマイクをミックスし。生ガットに近づけて行く。→ ハウリングをコントロールできる前提。小編成、アコースティックライブ向き。

3)ピエゾピックアップ中心の音づくり。→ 音の加工によって、ピエゾ ピックアップ音を加工する。マイク利用が厳しいとき。主にバンドアンサンブル向き。

SLG200シリーズは、3)の先端的な存在。

「練習用のサイレントギター」「リハやライブで持ち替えるセカンドガットギター」「旅行に持参できるギター」など、特殊な状況下で際立って役立つギター。1本持っておくのも有効と感じます。

ご縁あれば、自分の楽器に加えてみたいと思える魅力がありました。実際にセッションでも試してみたいな。今回の連載はココまで。ありがとうございました。

One comment to “ガットギター❹ 鳴らない工夫?”
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