バークリーで学ぶ(後編)

前編に続いて、ギタリスト富田光さんに、バークリーでの経験談をお聞きします。後編は、もう少し踏み込んで、スキルやスタイルについて聞いてゆきたいと思います。

(1)受験や入学に必要な能力について

◼️読譜力はどのくらい必要でしょうか? 行く前と行ってからも含めて。

奨学金試験や、学内のレベルテストなどには、毎回読譜力を試す内容が含まれます。

ここで点数が低いと、自分のRating(レベルを数値化したもの)が上がらないんです。Ratingによって履修できるアンサンブルも変わってきます。レベルの高いアンサンブルの授業を取るには、Ratingを上げなければいけません。なので読譜力を高めることは必須です。そもそもレベルの高い生徒で楽譜を読めない人はほぼいないと思います。レベルの高いところでは、読めるのが普通、そんな感じでしたね。

読むのが苦手かどうかではなく、読めないと先にいけません。もし読譜に自信がある人は、それだけで大きなアドバンテージになるとさえ思います。

留学を考えている人で、楽譜を読むのが苦手な人は、必ず克服してから渡米するべきだと思います。読譜力は日本でも鍛えることができますからね。

◼️入学にあたって、求められる演奏レベルは如何でしょう?(最低限、必要な演奏力)

基本的には、奨学金試験を受けて奨学金をもらって留学するというイメージを持っている人が多いと思います。その場合には、ある程度「上手い人」になっている必要があります。

僕自身のことで恐縮ですが、留学前、専門学校でもトップクラスの実力があり、ギャラをもらって演奏するような活動をしていましたが、バークリーに留学した時の最初のレベルは、ちょうど真ん中あたりでした。多くの日本から来た留学生が、日本では上手い方だったにもかかわらず、渡米してからは真ん中から下の方に位置付けられている、という状況でした。

奨学金を多くもらい、バークリーでもある程度レベルの高いところからスタートしたいと思うのであれば、日本ではズバ抜けた実力を持っている必要があるでしょう。

ジャズにおけるスタイルは関係ありません。オーソドックスなスタイルでもコンテンポラリーでも問題ありませんが、ある程度自分の実力に自信が持てるくらいの演奏力は必要かなと思います。

(2)日本、米国、バークリー。それぞれのスタイルについて

◼️世界と日本。ジャズギタースタイルの相違点は?

アメリカに渡って感じたのは、どんなスタイルでも受け入れる文化があるということです。

日本では、コンテンポラリーなスタイルのオリジナルを演奏すると、「スタンダードをやってくれないとね〜」とか、「スイングのリズムも入れてね〜」とか言われることもありました。アメリカでは少なくともそんなことはありません。常に先を行くミュージシャンたちがいて、彼らを間近で見ることができます。当然、日本にいる時よりも、さらにコンテンポラリーなスタイルへと興味が湧きましたし、自分のスタイルもそちらへ傾倒していきました。

バークリーには、色んなスタイルの講師がいます。ただ、僕が留学していた時は、超がつくオーソドックスなスタイルの講師よりも、コンテンポラリーなスタイルの講師の方が圧倒的に人気がありました。Tim Miller、Mick Goodrick、Jon Damian、Bret Willmott、Bruce Saundersなどです。彼らのスタイルを聴けば分かる通り、アメリカではコンテンポラリーなスタイルを受け入れてくれる文化があります。僕自身も、留学してから、「自分はコレだ!」と思えるスタイルに出会うことができました。というか、「このスタイルで突き進んでもいいんだ」と思わせてくれた、という言い方の方が正しいかもしれません。

◼️ジャズセッションお作法に違いは?

セッションに関しては、そこまで違いはないかなと思います。曲によってはキーが違ったりしますが、普通にセッションができれば問題ないと思います。多少の違いにはすぐ慣れますしね。

日本との違いといえば、誰かのオリジナル曲を初見でやったり(激ムズ曲も)、フリーインプロのセッションをやったり、モンクの曲ばっかりやる日があったり、レベルの高いセッションは学内でもたくさん行われていました。

(3)ギターを職業にすることについて

◼️プロを目指す、或いはプロレベルを目指すギタリストにアドバイスを

プロになることは簡単なことではありません。

好きなことを職業にすることはとても幸せなことですが、好きなことを仕事にできている人は、その裏でとんでもない努力をしています。

僕自身も、学生時代の全てをギターに費やしました。よく、「ギターで仕事できていいね〜」と軽く言われたりしますが、心の中ではカチンと来たりしてます。笑

「そんな簡単なもんじゃない!どんだけ練習したと思ってるんや」と、心の中で言い返してます。笑

ギターを職業にするには、ギターが上手いだけではダメです。もちろんギターを弾く技術を磨くことは言うまでもありませんが、それ以外にも、

・理論をきちんと理解していること
・楽譜が読めること
・楽譜を書けること
・曲をたくさん知っていること
・色んなスタイルで弾けること
・音楽の歴史を知っていること
・色んなジャンルを知っていること

これらは最低限必要です。

全てを網羅する必要はありませんし、得意分野を1つ徹底的にやることはとても大切ですが、もし、講師業なども考えているのであれば、上記のようなこともある程度は押さえておく必要があるでしょう。

どちらにせよ、まずはプロのレベルに達するまで練習しなくてはいけません。とにかく練習です。そしてそれは簡単なことではありません。中途半端な気持ちなら、やめておいた方が良いとアドバイスすると思います。それくらい大変なことです。

ギターを職業にしたいなら、単純に楽しむことだけでは絶対に無理だと思います。自分を鍛え上げることに充実感を持ち、それを楽しさに変えることができれば、ギターを仕事にすることも可能だと思います。

自分の得意分野を探求し、苦手なことを少しずつ潰していく。とにかく練習です。頑張りましょう。

(4)最後に(編集者から)

今回、前編と後編の2回に渡る、長時間インタビューとなりました。バークリーのこともさることながら、後編の「ギターを職業にすることについて」についてのコメントは深い世界ですね。

富田さんコメント「よく『ギターで仕事できていいね〜』と軽く言われたりしますが、心の中では『そんな簡単なもんじゃない!どんだけ練習したと思ってるんや』と、心の中で言い返してます。笑」に込められたメッセージ。

同じようなことを、幾人ものプロギタリストからもお聞きしました。そしてプロの方々は、プロになってからも、インプットや練習に余念がありません。プロ(=ギターで生計を立てる)でなくとも、プロは目指さずとも、自分のなかでの高みは目指したい。肝に銘じておきたいと思います。

富田さん、自宅から遠くなってしまい、ご無沙汰だったのにもかかわらず、インタビューのご協力、ありがとうございました。富田さんのレッスンを受けたい方は、下記まで、お問い合わせしてみてください。刺激充分なレッスンとなること請け合いです。

https://mosh.jp/kotomita_guitar_lesson/home

富田さんからのコメントです「対面でのプライベートレッスン再開は未定ですが、先日オンラインでのプライベートレッスンをスタートしましたので、ぜひ受講を検討していただければと思います。」

今回の連載はここまで。ありがとうございました。

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