教則本 棚卸vol.18 山口和也さん実践本

教則本棚卸シリーズ、18冊めになります。執筆は山口和也さん。ブルースを中心に、ファンクやジャズ、一般的なギター入門本まで、ジャンルも手広く、沢山の本を出されてます。動画「タメシビキ」も有名。ギタリストの裾野拡大に貢献されています。

イントロからエンディングまで!
完奏方式で完全制覇!”使える”ジャズギター

執筆:山口和也
出版:リットーミュージック、2014/1/23
仕様:AB版、144ページ
定価:¥1,800+税
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「完奏方式」という、ユニークな視点の教則本です。完奏方式とは「一般的な教則本のように様々なフレーズを小分けに学ぶのではなく、イントロからエンディングまで全体を通してフレーズ同士の関連性を実践的に覚えて、全てを理解しつつ丸々身につける方式」と定義。本の主旨としては「代表的なジャズのスタイルを最初から最後まで弾き切る完奏方式でマスター。ジャズギターに必要な全ての要素を詳細かつ包括的に身につけてしまおう、そんなテーマで構成されています」とのことです。

まずは目次から。

■目次

(1)完奏パターン1 基本的なⅱ-ⅴ進行

(2)完奏パターン2 ⅰ-ⅵ-ⅱ-ⅴ進行(循環コード進行)
    → OLEOコード進行(Key=C)※編集者追記
(3)完奏パターン3 マイナーⅱ-ⅴ進行
    → If I Should Lose Youコード進行?※編集者追記
(4)完奏パターン4 ディミニッシュ進行ジャズ

(5)完奏パターン5 メジャー&マイナー混合ⅱ-ⅴ
    → Autumn Leavesコード進行 ※編集者追記
(6)必要最小限のジャズ理論をザックリ学ぶページ

(7)完奏パターン6 転調の定番パターン
    → All the Things You Areコード進行 ※編集者追記
(8)完奏パターン7 ボサノヴァ・スタイルのジャズ
    → Blue Bossaコード進行 ※編集者追記
(9)完奏パターン8 ブルース進行のジャズ
    → F Bluesコード進行
(10)完奏パターン9 マイナー・ブルースのジャズ
    → Mr.PCコード進行(KEY=Cm、Eb)※編集者追記
(11)完奏パターン10 モード・ジャズ
    → Impressionsコード進行 ※編集者追記
(12)ソロで”使える”オススメ・フレーズ・パターン6

(13)より完璧に完全制覇するためのアイデア

(付録)CD音源2枚(カルテットによる模範演奏)

■各完奏パターンページごとの構成

・リードシート
   イントロからエンディングまでに登場するコード進行と主旋律
   ※メロディは、セッションでお馴染みのナンバーに極似するも別モノ

・ここに注意(攻略ポイント解説)
   イントロ、前テーマ、ソロ、バッキング、後テーマ、エンディング

・実践例 ※CD音源、TAB譜付き
   イントロ、前テーマ、ソロ、バッキング、後テーマ、エンディング

・イントロ別バージョン(2例) ※CD音源、TAB譜付き

・エンディング別バージョン(2例) ※CD音源、TAB譜付き

■印象的なコメント ※本書本来の主旨ではないようですが

「フレーズをたくさん覚えても、その使い方を会得しないことにはジャズが弾けるようにはならない」

「まず1つのフレーズを覚えたら、そのフレーズだけを使い回してアドリブをやり続ける。ジーンズを穴が開くまで履き込むようなイメージで。」

■感想

・「ジャズの基礎」と謳いながら、アウト関連など、かなり高度な実践テクニックにも触れていて、言及範囲は広い。

・次のような方々にも有益なのではないかと。ジャズギターの基礎を学んで、セッションデビューをするぞ、と準備をしている方。或いは、セッションに行き始めたけど、実践的なことは誰も教えてくれないし、教則本にも載ってないし、トッカカリが欲しいなあという方。

・特に、イントロやエンディングについて、実践例を載せている教則本は極稀なので、その辺りの幅を拡げたい方には参考になりそう。

・レンジ広く事例が紹介されており、順番に読み進めていく、というよりは、興味ある曲から摘み食いするのが実用的かも。好き嫌いも含めて、どこを摘むか、どう料理するかは、各自ご自由に。

・権利関係の問題なのか、想定した元曲を明らかにせず、10曲の完奏パターンとして紹介してあります。事情か目論見あってのことだと思うのですが、演奏家のニーズを考えると、権利処理して、元曲を明示し、その料理の仕方例として掲載してあったほうが良かったのでは。。リードシートからのメロディの崩し方も、参考になっただろうし。少し勿体ないかも?と感じた点。

・コラム「聴いておきたい名盤」には、1枚1枚に、ギタリスト視点による推奨コメントあり。

・CD音源は、カルテット(ドラム、ベース、ピアノ、ギター)による生演奏で、教則本としては贅沢な仕様。敷居を下げる目的あってか、ノリ的にはややポップに仕上げてある印象。

■最後に(編集者から)

「はじめに」に次のようなコメントがあります。「最大の効能は、ジャズの基礎を身につけることで、他の様々なジャンルに関しても、楽曲に対する対応能力が格段に上がる、です。ぜひ、この本を活用して(後略)。」。旧来のジャズの縛りに囚われず、ジャズでの学びを、他ジャンルに拡げていく指向、素敵です。

冒頭に書かれている「ジャズギターに必要な全ての要素を詳細かつ包括的に身につける」については、多少盛りすぎにしても、全体的に丁寧な作りだなあという印象でした。ユニークな視点から実践力を補強してくれる教材としては面白いと思いました。

教則本の数だけ、ソコに至るまでの道のりや込められたメッセージがある訳で、そんなことを読み取ったり、想像しながら読み進むのも面白いです。では、今回はこの辺で。

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