達人に聞く vol.15 タナカ裕一さん

達人に聞くシリーズ、今回はタナカ裕一さん。ギター教則本界で話題になった「ネガティヴ・ハーモニーをギターで攻略」の執筆をされた方です。

こちらで、ご本人の演奏が聴けます。
https://youtu.be/s666k2hwLTA
ん?何が起こってるんだ?って感じのAll the thingsですね。

今回はいつもの質問に、レターの形で回答を寄せてくださいました。

◼️始められない時、集中できない時の切り札は?

どうもはじめまして。
ギタリストのタナカ裕一です。

タナカは「田中」なのですが、直線ばかりでポップさがないので最近はカタカナ表記にしていますよ。ワハハ。

<集中できない時の切り札>

集中できない時のほうから書いてみようと思ったのですが、集中できないのはたぶん疲れているか、そもそも音楽のことを本当は好きじゃないかのどちらかなので、コレはもう己をほっとくしかないのかなあと思います(笑)

・・・しかし。
私の考察によると「音楽はとても楽しい」!!

それに、「ジャズギター寄り道ノート」の読者であるアナタが「音楽のことを本当は好きじゃない」なんてことがあるはずないじゃあないですか。

だから集中できない時はたぶん疲れているので、のんびりリラックス。
寝るのがいちばん良いですね。

なんとビックリ!費用もゼロ円。

「よく眠れた朝」なんかは目が覚めてすぐウォーミングアップもなしに吸い込まれるように音楽に没頭して上手く弾ける気がします。そして自分の上手さを自画自賛して音楽にとろけられたら二度寝しましょう。もっと上手く弾けるかもしれません。

練習のみならずライブ(や、セッション)など実践の場でもそうなのですが、自律神経とか、メンタルが整っているときの方が音楽と仲良く触れ合える気がします。サウナ・水風呂・外気浴x3セットなんかもおススメします。

時間があればライブの前は大抵サウナへ行ってます(笑)
で、昼寝する。
私の場合、切り札はコレですかね。

<始められない時>

ギターを弾いたり、時間を取って音楽を聴く(動画見るetc…)だけが「始める」とか「やる」ってことじゃあないっっ!

刃牙道と言うマンガで、本部以蔵という現代忍者的なキャラクターのセリフから知ったのですが、「行住坐臥」(ぎょうじゅうざが)と言う言葉があります。

これは仏教用語で、「歩き、止まり、座り、臥す、日常のふるまい。日常。」と言う意味だそうです。

ようするに。

日常の時間が一番長いんだから、ギター持った時だけ「始める」とか「やる」ってことじゃなくて、居酒屋で掛かっている有線放送、流行りのJポップに耳を傾けてみるもよし、テレビのバラエティー番組だって耳を澄ませばなにかしら音楽が鳴っています。

散歩に出かけたり、通勤通学の移動中に鼻歌(脳内でも可)を歌いまくってみるもよし・・・。

乱世に生きたサムライのことを想像してみましょう。忍者でもかまいませんよ。

いつ戦闘に巻き込まれるかわかりません。のんびり休憩中でも敵が襲ってくることがあるでしょう。

襲ってきた敵に「いやあ、最近忙しくてwwあんま稽古できてないんでww今日はちょっとイイすか?」みたいなこと言っても話聞いて貰えないでしょう(笑)切られます。

なので、「行住坐臥」常に臨戦態勢。もしくは「日常=修行」と言う図式の中にいよう。
そしてそのことを楽しもう。そういうやつがいちばん強えぇ!
みたいのが「刃牙道」のお話。

そして、我々「ジャズギター侍」もそのようにありたいですなあ。
と言うお話。

スイッチ入れて「始めた」ときだけ「ジャズギタリスト」になれるわけでもないですからね。可能なら常時オンでいようぜ!と。

ライフハック的なお話になりますが、始められない時は「始める」の定義をそのときの自分に合わせて都合よくカスタマイズしてしまえば、わざわざ意識的に始めなくたって「オレはすでに始まっていた!」と。「日常=修行」の渦中に居た自分を知ることになるでしょう。心の中にサムライっぽさが出ていい気分になれます。

時間を取って自分にスイッチ入れてから「始める」のではなくて、ひとときも「終わらせない」ことが出来たら誰よりも練習時間が長くなるよっ!ってこと。

そしてそのことを楽しもう。

そういうやつがいちばん強えぇ!

◼️理論を実践に昇華させるには?

飯田橋でギター教室をやってましてね(来てね♡)。日常的にレッスンを提供する暮らしのなかでもコレは大きなテーマだったりします。

「昇華させるには?」と言うことなのですが、大きく2つあると思います。

<その1>良く聴こう!響きを味わおう!

お料理に例えた話をよくするのですが、例えば「たんぱく質は58℃~60℃前後で凝固し、68度から分水(水分が抜ける)するよ!」とかいくら知ったところで、それがどんな食感の、どんな味がするのかとは別の話です。

音楽も「ドミナントはトライトーンを内包する和音で、トニックへ向かう機能を持ち、ドミナント→トニックの動きのことをドミナントモーションと呼ぶ!」とか、いくら理屈がわかったところで、それがどんなニュアンスの、どんな響きがするのか耳で味わえる状態になっていなければ、その理屈には何の意味もありません。

お料理も音楽も、理論の部分は食べずとも、聴かずとも知識として理解できてしまうものですが、その実際の味わいを知らねば料理人、音楽家としてその知識を生かすことは出来ないよね。

なので、良く聴こう!響きを味わおう!

レストランのお料理(プロミュージシャンの演奏)を味わうのも良いのですが、おススメは知った知識を「自分で」実際の響きに変えて、そして味わってみることです。

達人の所業、あまり遠いところにあるものよりも、自分で生み出した響きの方が「どんな音の動きがあったか」も把握できますし、理解しやすいと思います。

<その2>知識を鳴らせるだけの楽器の技術を身につけよう!

いろんな響きを耳で味わえるようになってきたアナタはそう「耳グルメ」です。

あとは響きを組み合わせて「耳グルメ」なアナタ自身の耳を満足させるだけの音楽に仕上げる。そう!目の前のギターを掴んで鳴らすだけです!

・・・が、ギター自体が上手くないとそりゃあ美味しいサウンドには仕上がりません(笑)

「知識を鳴らせるだけの楽器の技術を身につけよう!」と言うことですね。
あまりにシンプルで回答になっていないかもしれませんが、つまり。

練習しよう!そう言うことです!

◼️いまの自分を乗り越えるコツ(次にやるべきこと)は?

いまの自分を乗り越える必要がある。
すなわち「いまアナタは停滞して煮詰まっている!」と言うことだと思います。

これも前項に引き続き、打開策は2パターンある気がするんですよね。

<その1>やった方が良いか悩むより、やってしまった方が圧倒的に効率的!!

ギターや音楽に興味があって、日々何らかの知識やコンテンツに触れていると「ああ、コレはいつか取り組もう。」みたいな練習課題や気づきがあったりすると思います。

でもそれが長いこと続くと、課題を貯め込み過ぎて消化不良になってしまったり、優先順位が付けられなくなって今日やるべきことが定まらず結局なにもやらなかったり、何となくギター触って練習おしまいとかなりがちですよね。

「そうはならない。」
と言う方はストイックで素晴らしい!
※その場合はここは読み飛ばして<その2>へ⇒

「ああーわかる(笑)」
と言う方は、片っ端から課題に手を付けてみると良いかと思います。

少し乱暴に聞こえるかもしれませんが、片っ端からやるのは大事。

よく自分の生徒からも「○○ってやった方が良いですかね?」みたいな質問を受けるのですが、回答はこう。

「やった方が良いか悩むようなことはやった方が良いに決まっている!」

やった方が良いか悩むより、やってしまった方が圧倒的に効率的!!

<その2>新たな価値観、ジャンル、形式、様式、リズム、ハーモニー、テクスチャーetc…

もうやることがない・・・。
と言う場合も停滞してしまうかもしれません。

ゲームで言うと、全キャラLv99(カンスト)、隠しアイテムも全部取ったし、隠しダンジョンも全踏破して、エクストラボスも全撃破してしまった・・・。

みたいなとき。

手持ちの参考書は全てボロボロになるまで解きまくって、これ以上の手持ち資料を使った勉強に限界、やりようがなくなったとき。(あるいは、そんな気分がしているとき。)

そんなときは、新しいゲーム、参考書、取り組むテーマが必要ですよね。

新しい知識やコンテンツ、例えば毛嫌いして聴いていなかった音楽、ミュージシャン、それはジャズに限らずとも良いかもしれません。

新たな価値観、ジャンル、形式、様式、リズム、ハーモニー、テクスチャーetc…

きっとそこには新たな発見が眠っているはずです!!

以上、アナタのより良いジャズギターライフのお役に立てれば幸いにて候。

◼️タナカ裕一さん プロフィール

Jazz Guitarist / Composer
タナカ裕一
※以下略歴。詳しくは[WEB: http://yt.web5.jp/ ]内About Meに掲載。

1982年4月19日生まれ。千葉県千葉市出身。同県銚子市が第二の故郷。
1995年 千葉市立みつわ台北小学校 卒業
1998年 千葉市立みつわ台中学校 卒業
2001年 県立千葉高等学校 卒業
2005年 中央大学理工学部土木工学科 卒業

その後、音楽を東京・ボストン・ニューヨークにて学ぶ。
2011年 1stCDアルバム”A HILL OF THE SUN” [WNCJ-2220/What’s New Records]を発表。
A HILL OF THE SUN Group w/ジェイコブ・コーラー(Piano)織原良次(Fretless Bass)樋口広大(Drums)

2012年 千葉市・千葉市長より「千葉市芸術文化新人賞」受賞。

2014年 “KING RECORDS”より「2アルバム同時リリース」でメジャーデビュー。
・CDアルバム[I’m Happy, Walking down “jalan”.]
・ネイティブDSD(5.6kHz)録音 ハイレゾ配信アルバム[Edo]の2タイトル。
I’m Happy, Walking down “jalan”. Group
w/松岡美弥子(鍵盤ハーモニカ/Piano)大谷訓史(Bass)服部マサツグ(Drums)
※2タイトルとも同メンバー。

その他にもCD作品のリリース多数。

2016年7月
OSAMU MATSUMOTO & LADIES BELONG TO HORNY FUNK GANG
にて、FUJI ROCK FESTIVAL ’16出演。

2018年7月26日、初の教則本。
奇々怪々な難関ジャズ・メソッド、スーパーインポーズの最終兵器
「ネガティヴ・ハーモニーをギターで攻略(CD付)」
が、シンコーミュージックより発売。

また、2004年より東京・飯田橋/神楽坂にて
『田中裕一Guitar教室』http://ytg.web5.jp/
を主催。随時生徒募集中!(来てね♡)

“a hill sounds 音楽事務所”代表

◼️最後に(編集者から)

タナカさん、お忙しいなか、ありがとうございます。

ネガティブハーモニーの世界。私自身は足を踏み入れる余裕がないのですが、ジャズの枠も、ギターの枠も超えたシステムのようです。ご興味ある方は掘ってみてください。

今回も寄り道くださって、ありがとうございました。

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