達人に聞く vol.13 浅利史花さん

今回は連載「達人に聞く」初、女性ギタリスト・浅利史花さんです。

その昔、クラシックギターのアンサンブルサークルに、サポートで入ったことがあるのですが、8-9割が女性でした。一方、ジャズのセッションで、女性ギタリストにお会いすることは皆無です。

フォークギターやクラシックギターまで含めれば、ギターを聴く人口、ギターを弾く人口は、さほど男女に差がない気がします。何故、ジャズギターは女性に人気がないのでしょう?

他のジャンルに比べて、ジャズのウケが悪いのは想像がつきます。しかし狭いジャズ楽器演奏者の中でも、ドラムや鍵盤には女性も多い。何か日本の教育制度が影響しているのか。この問いが解けると、ジャズギターのファンも拡がり、ジャズギタリストの裾野も拡がっていくかもしれません。

いつもながら、浅利さんと全く関係ない話になってきました。では、いつもの質問を。浅利さん、宜しくお願いします。

◼️始められない時、集中できない時の切り札は?

そんな時は無理に練習せず、その代わりに音楽を聴く時間にすることが多いです。BGMとして何となく聴くのではなく、しっかり聴きます。あとライブを見に行ったりもします。
 
例えばスケールやコードトーンの反復練習をしても、“それをどう活かすか”が分からなければ良い演奏には繋がりませんし、教則本には恐らくそこまでは書いてありません。

そういったことを学ぶには、沢山の音楽を聴いたり、実際に素晴らしいプレーヤーと共演して体感したりなど、耳を使わないと身についていかないものかもしれない、と日々感じています。

そういうわけで、色んな音楽を聴くことは、練習同様に大切なことだと私は思っていて、練習する気が起きない時や、練習するほどの十分な時間がない時は、じっくり音楽に耳を傾ける時間にしています。

◼️理論を実践に昇華させるには?

私はジャズを始めた時に、一応最初に理論は勉強したのですが、すぐに挫折しました。例えば『このコードでこのスケールが使える』みたいな説明を見ても、あまりピンと来なかったのです。よく聴いていたレジェンド達が、スケールばかり吹いているようにも聴こえませんでした。

なので最初の頃は理論はおいといて(笑)、とにかくCDと合わせて何度もアドリブしてみたり、カッコいいと思ったフレーズをコピーしたりしました。そして上手くハマらない部分があったり、コピーしたフレーズが聴き慣れない音使いだったりしたら、自分で調べたり人に教えてもらったりして、そこで初めて『あぁ、これがオルタードだったんだぁ』みたいに理解しました。

今思えば、理論→実践ではなく、実践→理論という順序だったんですね。それを繰り返していくうちにようやく理論も少し理解できるようになってきて、ここ数年でようやく理論→実践でも練習するようになりました。

…前置きが長くなってしまいすみません(笑)

でも根本的にはあまり変わらなくて、理論で学んだとしても、なるべく自分で歌えるようにして(サウンドが鳴るようにして)からじゃないと、実際の演奏の中で使うのはなかなか難しいと思っています。

スケールだったら色んな使い方を学んだりとか、フレーズだったら色んなリズムで弾けたりとか、一つの要素を色んな角度から見られるようになると、実践でも使いやすいのかな?

私もまだまだ勉強中です。 

◼️いまの自分を乗り越えるコツ

なかなか自分の成長を感じられない時、とても辛いですが、コツコツ地道に努力する以外に方法は無いのではないでしょうか。成長のスピードって一定では無いと思うんです。少し伸びたら変化が感じられない時期があって、少し伸びてはまた成長が止まった様に感じて… の繰り返し。

変な話かもしれませんが、ポケモンのゲームと一緒だなぁって思うんです(笑)

あれってポケモンのレベルが高くなるほど、レベルアップするのが難しくなっていくんです。でも戦ったぶんだけ経験値(レベルアップする為のポイント)は少しずつ貯まっていて、時間はかかるけど続けていればレベルアップできる。

ギターも、進歩していないように見えても、(努力しているなら)全く成長していない訳ではないはず…と信じて日々練習しています。コツコツ努力は自信にも繋がると思います。

あと、課題は箇条書きにしてどこかに貼っておくのもオススメです!

◼️浅利史花さんプロフィール

福島県福島市出身。5歳頃からクラシックピアノを習う。

中学生の時に、姉と兄の影響でロックに興味を持つ。高校生活ではバンドを組むつもりだったが、 進学した高校に軽音部がなかったため、仕方なくジャズ研究部に入部。 そこでジャズと出会い、市内のジャズ喫茶『ミンガス』で聴いたグラントグリーンやジムホールの 演奏をきっかけにはまっていく。

2012年に大学進学に伴い上京。在学時より演奏活動を始める。
2015年にはギブソンジャズギターコンテスト決勝進出する。
2020年11月に1stアルバム「Introducin’」をリリース。

ジャズギターの王道を行くスインギーなスタイルで、同世代のみならず数々のベテランミュージシャンとも共演を重ねている。

主な共演ミュージシャン(敬称略、五十音順)

安保徹ts、井上智g、井上銘g、大友義雄as、片岡雄三tb、金澤英明b、岸ミツアキp、 高内春彦g、竹中俊二g、田辺充邦g、谷口英治cl、中牟礼貞則g、古野光昭b、峰厚介ts、 宮之上貴昭g、村田憲一郎ds など

◼️最後に(編集者から)

ダイバーシティ&インクルージョンの視点から、日本の経営も多様性を重んじる方向に大きな舵取りが始まっています。ジャズギターだって、多様な人たちで磨いていったほうが、面白く楽しくなっていくのは間違いない。

浅利さん、やや野郎化してしまった日本のジャズギター界を、これからも切り崩していってください。インタビューご協力ありがとうございました。

One comment to “達人に聞く vol.13 浅利史花さん”
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