お恥ずかしい話ですが、いまだにロストすることがあります。ジャズを始めた頃に比べれば、頻度は激減しましたが、ゼロにはならない。
ロストしてしまうと、なんとも残念な空気が漂います。何より、自分自身が後味悪い。セッションでロストしたからといって、誰に責められる訳でもありませんが、極力回避したいもの。
今回は「ロスト」について、掘ってみたいと思います。
■上手い方は音で導いてくれる
慣れた方とセッションしている時は、ロストしかけると「いま、ココだよ」と、音で居場所を教えてくれます。ベースやコードを強調したり、メロディをさりげなく伴奏に混ぜてみたり、ドラムや伴奏のフィルインを入れてくれたり。私も未熟ながらサポートに回るときは、譜面に沿ったコードを、シンプルに鳴らします。
ロストしたら、いったん演奏を止め、周囲の音を聴き、リスタートする。セッションは、アンサンブルを成立させるための共同作業。素敵な仕組みだなと思います。
■知らない曲だからロストする訳ではない
私の場合、ジャズを沢山聴き込んでいる訳でもないので、黒本Part-1にも未知の曲が沢山あります。1回のセッションで、知らない歌が1-2曲くらい入る割合でしょうか。
改めて思うのは、知らない曲だから、初見だから、ロストしやすい訳ではない、ということ。知らない曲の場合、譜面に齧りついて、コードを追って弾くので、かえってロストしにくかったりもします(それはそれで問題なのですが)。
危ないのは、細かいコード進行から解き放されようと、意識して譜面から距離を置いて演奏した時。起こるべくして起きている事故なんですよね。
特に、枯葉やFly Me to the Moonなど要注意。コード進行が単調なので、フッと気を抜くと居場所を見失ってしまう。気を抜かないことしか、対策が見つかりません。
■自宅だとロストしないのに
自宅で伴奏アプリに合わせている分にはロストしないのに、セッション本番でロストしてしまう傾向も。
まず第1の要因は、初めての人たちと手合わせする、という緊張から。セッションに参加し始めた頃は、この要因が大きかったように思います。アタマの中が白くなっている状態なので、ロストしてから復帰までの時間も要してました。
第2の要因は、伴奏アプリの弊害。伴奏アプリでは、ベースやコード、ピアノが乱れることなく、最高に聞き取りやすい形で鳴ってくれます。ゆえにイレギュラーな伴奏(=セッション)に晒されると、圧倒的な経験不足から、目印を見失い、ロストに陥ります。
第3の要因は、曲のスピードです。練習時とセッション時のギャップが大きいと、調子が狂ってロストしがちです。小節感がチャンと身についていない証拠です。
鍵盤を抜いたり、スピードを上げてみたり、伴奏音源を工夫することで、多少は備えになるでしょうか。
■「アタマの中でメロディが鳴っている状態に」と言うけれど
メロディを歌いながらアドリブをとるなんて、そんな簡単にいきません。メロディを崩したアドリブは出来ますが、いつもそんなアプローチでアドリブラインを導く訳にもいかない。メロディ意識しすぎて、オブリガード(対旋律)のようなラインになっても、明らかにオカシイ。
参考話として、何人かのプロ演奏家が「メロディ100回練習」の有効性を指摘しています。この練習には「メロディからのモチーフ発想」「曲の抑揚把握」「曲に込められた、歌心の汲み取り」といった効能が期待できそう。
もしかすると、このメロディ100回練習こそ、アタマの中でメロディを鳴らしながら、アドリブを弾けるようになる近道だったりするのかなあ、と思ったりします。
■曲を4小節1段の積み上げとして把握する
悩んできた結果、ロスト防止の基礎対策としては、4小節や8小節の塊を、より強く意識することではないかと考えています。曲全体の位置を把握するために、4や8小節の塊が積み重なっている構造で曲を捉える。
ところが何故か、1段が4小節になっていないレイアウトの楽譜が存在します。1段に6小節とか、8小節とか。黒本の中にもあります。仕方がないので、私は、余裕があるときに、こうした変則譜面を1段4小節に、書き直すようにしています。
慣れてきたら、アタマの中で、簡単に1段4小節に組み立て直せることなのでしょう。でも、ロストに悩んでいる同志の方は、イメージトレーニングも兼ねて、この譜面書き写しはお勧めです。
■「曲を覚えろ」と言うけれど
「それが出来ないから、ロストするのだ!」というお叱りが聞こえてきそうです。悩める身には、あまり有効な助言ではないかもしれない。もちろん、コード進行やメロディはアタマの中に入れて弾くことを目指すべきなのですが。
覚える前提として大切なことは、前述の譜面レイアウト。曲の設計図として「1段4小節」が積み重なった画像として全体を捉えると、理解がしやすいはず(自分自身への助言)。
■最後に
ロスト対策としては、最後はやはり、セッションの場数を踏み、カラダで学んでいくしかないかと思います。なんだよ、やっぱり結論は場数なのかよ、とゲンナリしますね。ロストが重なると、ココロも挫けそうになりますが、神経太く、慣れていくしかありません。
このテーマ、何か新しい発見があったら、追記事を出すようにします。初心者・中級者にとって大切なテーマだと思うので。シマリがない記事となりましたこと、ご容赦ください。