前回に続いて永井義朗さんの教則本です。
ジャズギターの教則本には「誰でも弾けるようになる」「すぐに弾けるようになる」的な謳い文句が多いのですが、この本の表紙には「コード・コンピング 上級者への道標」と書いてあります。私の場合、上級者への道のりは果てしなく遠いけれど、道標が垣間見えるなら、読んでみたい。いいコピーですね。
10数年前、永井さんがギター講師になる前に、川崎ラゾーナのプラザソルホールで、ソロ演奏を生拝聴したことがあります。当時から独特のコードワークをされていて、永井ワールドを創っていました。そんな記憶もあって、永井さんがコード本を出版と知り、興味津々だったんです。
編成と音域で使い分けるジャズ・ギター・コードの法則
著者:永井 義朗
仕様:A4変形判 、112ページ、CD付、¥2,200(税込)
出版:2020.06.23、リットーミュージック
amazon https://amzn.to/3PCnjQ2
まず、目次を見てみましょう。
◼️目次
(1)トライアドの基礎
・トライアドと音程
・3種類のトライアドと転回
・ポジション・プレイの導入と水平/垂直トライアド
・3種類のトライアドでの水平トライアド・フォーム
・3種類のトライアドでの垂直トライアド・フォーム
・転回形での水平/垂直トライアド・フォーム
・レフト・フォームとライト・フォームについて
・トライアドの転回形を理解するための練習
・小さいトライアドへの変換
・アプローチ・ノートの挿入による度数把握の練習
・小さいトライアドの拡張
(2)中低音域の演出
・ベース・モードでのライン作成
・ベース・ラインでのコード・トーンの接続
・シェル・コードとスモール・コード
・シェル・コードによる6弦ルートのヴォイシング
・シェル・コードによる5 弦ルートのヴォイシング
・声部の切り分けとリズム・パターン
・ 4分音符のストロークによるコンピング
・ 8分裏を含むストロークによるコンピング
・ハーモナイズド・ベース・ライン~パッシング・コード
・ハーモナイズド・ベース・ライン~パッシング・ディミニッシュ
・ウォーキング・ベース・ギター
・ボサノヴァ風コンピング
(3)高音域の演出
・チキン・ピッキング
・ピアノ・モード
・メロディとコードの融合
・モーションレスなコード・ワーク
・メロディ・ハーモナイズ~動的なメロディによるイントロ
・メロディ・ハーモナイズ~静的なメロディによるイントロ
・コード・トーンへのメロディ・ハーモナイズ
・テンション・ノートへのメロディ・ハーモナイズ-1
・テンション・ノートへのメロディ・ハーモナイズ-2
・ハーモナイズしたメロディの接続
・テンション・ノートの演出
(4)ソロ・ギターの演出
・ All The Things You Are
・ There Is No Greater Love
◼️所感
・表紙のコピー「どんな編成のバンドでも、どんな音域のヴォイシングでも、迷わず使い分けて、ジャズのコードを使いこなす!」は、「バンドの編成に応じて、ヴォイシングの音域を使い分け、コードを使いこなす!」という意味と解釈しました。
・ご本人の解説動画があります。https://youtu.be/P42KO1NJqOc
意図や構成が分かりやすいので、ご覧ください。
・ここまでDROP2を深めたものは、いまだかつて見たことがありません。ほぼDROP2だけで、1冊を成立させてます。さらに理論や代表的な例示で留めず、状況に応じた実践的な使い方が、CD音源付きで示されているのは素晴らしい。
・「中低音域」「高音域」「ソロギター」と、想定シーンが分かれています。最初から全習得と欲張らず、興味あるパートから確実に身につけていくことが、楽しく現実的な使い方のように思います。
・プログラミングの世界で「シェルコード」は、コンピュータを攻撃するための、機械語で書かれたプログラムのこと。本書では意味が異なり、「4声コードの内の、ルートと5度音を抜いた、3度音と7度音の2声で構成されたヴォイシング」を指すそうです。3度7度の組み合わせは馴染みのある音使いですが、シェルコードという呼び方は初めて聞きました。
・「ウォーキングベース」「キザミ」「ハーモナイズド・ベースライン」「ボサノバ伴奏」 など、定番手法が、大きな譜面とともに解説されています。譜面がデカいのは、個人的には嬉しい。老眼に優しいこともありますが、最後まで読み切るための、ちょーど良いレイアウトでした。デザインは執筆者/編集者の個性や意向が出るところ。教則本にとって、とても大切なことと思います。
・「ソロギター」や「イントロ」もいい感じ。
・巻末に「All The Things You Are」と「There Is No Greater Love」の2曲を掲載。永井風のアレンジに、川崎で観た生演奏を思い出しました。
◼️最後に(編集者から)
想像していたよりも格段に読みやすい内容です。「上級者への道標」の謳い文句に怖気付く必要は全くありません。
私はDROP2の響きが好きで、普段も織り混ぜて弾いているのですが、いまの課題感に応えてくれる教則本でした。好き嫌いもあるかと思うので、永井さんのYouTubeなど事前に確認して購入されることをお勧めします。
永井さんの教則本、前回と合わせて連載紹介とさせてもらいました。如何でしたでしょうか。今回はこの辺で。
(参考)教則本 棚卸vol.16 永井義朗さん実践本
Pingback: 教則本 棚卸vol.16 永井義朗さん実践本 | ジャズギター寄り道ノート