iPadとジャズギター vol.5 リハ録に外付けマイク

前回「iPadとジャズギター」の連載で「リハーサル録音」について触れました。今回はその続編。iPadを使ったリハーサル録音に、外付けマイクが有効かどうかを確認したいと思います。
先に断っておきますが、ライブ本番の収録や音楽配信を目的として、高品質の録音を行いたい場合、迷わず外付けマイクや専用レコーダーを活用すべきです。ただ、そうした外付けマイク本来の機能を紹介する記事は既に多く見られます。ココでは寄り道らしく、あくまでも「iPadを使ったリハーサル録音」に特化して、外付けマイクを検討してみたいと思います。
 
■リハーサル録音に求められる要素
ジャズのセッションに行くと、多くの方が専用レコーダーで自分の演奏を録音されています。控えテーブルのアチコチにレコーダーが置いてあると、楽器の種類を問わず、同類の匂いを感じて嬉しくなります。
専用レコーダーで完結できたら、楽チンです。いざという時に、高品質録音も出来る。またiPhone/iPadをはじめとするスマホを使わないことで、容量オーバーや電池切れといったアクシデントの心配なく、他用途に影響が及ぶこともない。
ジャズセッションだと、レコーダーとスマホの利用割合は3:1くらいでしょうか。私の場合は、ファンクバンドメンバーで共有したり、風呂で聴取することを前提としているので、iPadで録音しています(前回記事参照)。

リハーサルの録音は、鑑賞でななく確認が目的なので、
・大音量環境に耐えうる最大入力音圧
・最高品質である必要はない
・(場合によっては)ステレオでなくとも良い
という前提があり、
・(演奏中でも) ピーク確認や入力調整が容易
・聞き取りやすい
・リハーサル時間中、電源の心配ない
といったことが気になります。
特に最近のiPadの録音性能は上がってきていて、iPad+録音アプリだけでも、簡便に、そこそこの音質で録音が出来てしまいます。また、入力レベルはアプリ上で調整が可能です。多くを望まなければiPadで完結できてしまうだけに、外付けマイクにはプラスの要素を期待したいところです。
 
■ 入力レベル調整に配慮した外付けマイク
数社からiPhone/iPad用の外付けマイクが出されていますが、機能と価格のバランスを考えると、zoom社のiQ6の選択が賢明かと思います。発売が2014年ですから、6年の長寿商品。支持されている証拠です。
ZOOM iQ6
https://www.zoom.co.jp/ja/products/handy-recorder/iq6-xy-stereo-microphone-ios


【スペック】
・XY ステレオマイク(90°/120°)
・ステレオミニジャック出力
(ライン出力/ヘッドフォン出力兼用)
・音質:44.1kHz/16bit, 48kHz/16bit
・入力ゲイン: +11 to +51dB
(iQ7は+3 ~ +43dB)
・最大入力音圧: 130dB SPL
(iQ7は120dB SPL)
・Lightningコネクタ(iOS機器より給電)
・61.1W× 30.6D× 53.1H mm、28.8g
※ロック系バンドの爆音やドラムの大音量の目安が130dB。爆音でジャズギターを演ってらっしゃる方は、耐音圧の高いレコーダーを使うのが無難です。
今回、録音アプリは下記を使用します。
Audio Memos ver.4.9.3
https://apps.apple.com/jp/app/audio-memos/id338550388

このAudio Memosは個人的に使い勝手が良く、10年近く愛用しています。現在は、他にも優秀なアプリがたくさんありそう。ペダルほど高価なものでもありませんし、幾つか使ってみて、機能や操作性、デザインなど、自分で気に入ったものを選ぶのが良いと思います。
 
■(余談)iQ6か、iQ7か?
iQ6の兄弟機種にZOOM iQ7があります。
https://www.zoom.co.jp/ja/products/handy-recorder/zoom-iq7-professional-stereo-microphone-ios

この2つの機種、どちらかにするか迷っている方、いらっしゃいますか。
(1)動画を撮りたい=iQ7

上部マイクの上側にあるL▲Rマークを録音対象に向けて録ります。動画撮影に対応して、マイク部を回転できる仕様になっているので、ストリーミング等を検討されている方はiQ7を選びます。
iQ7は音声録画にも有効です。ただスクリーン面を上向きに、iPadを据え置きをしようとすると、マイクがスクリーン面に対して十字な向きとなり、iPad本体が浮いてしまいます(下記写真参照)。支えを置いてマイク部を浮かせれば問題ありませんが、油断すると接続部分を損傷するリスクがあります。

(2)音声しか録音しない=iQ6

iQ6はマイクが回転しないので、録画には不向きです。録音専用です。
iPadスクリーン面を上向きに据え置きすると、多少は駆体が浮くものの、iQ7ほどの不安はありません。用途が音声録音だけなら、iQ6がオススメです。
なお最大入力音圧は、iQ6=130dB SPL、iQ7=120dB SPLと、若干iQ6が大きいようです。
リハーサルをライブに向けた検証の機会と捉えると、バンドの趣向によってはステージング・パフォーマンスもチェックが必要かもしれません。通常は音声だけれど、本番直前のリハーサルでは動画でも撮って検証する、なんてニーズもありそうです。その場合はiQ7を選びます。
 
■検証方法
録音環境を同じにするため、ルーパーを使用。やや歪んだギター音を連続再生し、比較します。

コロナウイルスの影響で、ファンクバンドのスタジオリハが暫く見送りとなり、複数楽器(複数スピーカー)による大音量環境での検証は出来ませんでした。
 
■実験所感
スタジオに独り籠って、あれこれ試してみました。データをアップしても返って混乱するので、所感を書いておきます。
(1)ピーク・インジケータは微妙にズレる
下記の映像は、外付けマイクとiPad録音アプリの同期実験です。微妙に合っていて、微妙に違っているものなんですね。

(注意)上記映像の「音」はiPhone7で動画撮影したもので、iPadで録ったものではありません。iPadで録音した音源は、記事下に掲載しました。
録音アプリの特徴やマイクとの相性にも、気を配る必要がありそうです。
 
(2)外付けマイクの入力調整ダイヤルは、ギタリスト向き
入力インジケーター(LED)を確認しながら、外付けマイクのダイヤル(Mic Gainノブ)を回して、入力レベルを程よい位置に調整する。これは想像以上に便利です。

インプットレベルの調整は、アプリ内で調整できるのですが、エフェクター(ペダル)に慣れている我々ギタリストの場合「調整は物理的なツマミであって欲しい」と思う方も多いはず。ギタリストには嬉しい設計です。
 
(3)最大入力音圧の影響は検証できず
大音量のリハ録音ができなかったこともあり、外付けマイクを使用したときの、最大入力音圧の違いによる効果が検証できませんでした。私が所属するファンクバンド程度の音量だと、検証のレベルにも足りないかもしれませんね。またの機会に委ねたいと思います。
 
(4)ステレオ録音は元気にしてくれる(ステレオの効能を再認識)
同じ音源を、録音条件を変えて録音することなんて、意図しない限り成立しないもの。今回、比較してみて、やっぱりモノラルよりもステレオで録音すると、音のハリ(張り)が違うものなんだな、と実感しました。データ容量は倍増してしまいますが、リハ音源を聴いてメンバーで自信や活力をもらいたい時は有効と思われます。
お時間ある方は、下記、参考音源をお聴きください。
1)iPad第5世代(2017)外付けマイク無し、モノラルWAV形式
https://www.dropbox.com/s/o3eid73ebiwn449/iPad5th%2Bnomic-wav-mono-20200307-0450.wav?dl=0
2)iPad第5世代(2017)+iQ6、ステレオWAV形式
https://www.dropbox.com/s/heay4iy4k4u8tdn/iPad5th%2Bzoom-%E5%85%A5%E5%8A%9B%E8%AA%BF%E6%95%B4-wav-20200307-1649_.wav?dl=0
3)iPadAIR(2019)+iQ6、ステレオWAV形式
https://www.dropbox.com/s/rr84lqnrava253l/iPadAIR-zoom-WAV-streo-20200307-1652.wav?dl=0
 
(5)微妙な入力設定には慣れが必要
上記3つの音源に共通しての話。それぞれIQ6とアプリ両方のインジケーターを見て、ギリギリまで入力を上げて録音しました。
しかしながら、お聞きいただいて分かる通り、一部、アタマが潰れています。インジケーターを過信せず、適正な設定加減については、使いながら習得するしかなさそうです。
 
■まとめ
実験によってiPad + 外付けマイクiQ6が、リハーサル録音にも有効であることが確認出来ました。特にギタリストにとって身近な、インプットレベルのダイヤル調整がポイントですね(笑)。ここぞという本番録音において、気軽に高音質録音も可能となることも考えると、iPhone/iPadでリハ録音派の方々には、充分、購入検討の価値ある商品ではないかと思います。
利便性からiPadでの録音に固執してきましたが、レコーダーとiPhone/iPadがもっとストレスなく連携できたら、宗旨替えするかもしれません。
・レコーダーをリハ部屋の中心に置いて、手元のiPhoneやiPadで遠隔操作できる
・レコーダーをハードドライブとして、iPhoneやiPadからwifi経由でデータを出し入れできる
技術的には出来ちゃいそうです。チャンスあれば、最新レコーダーも寄り道レポートしたいと思います。
今回、iQ6およびiQ7を快く貸し出してくださったZOOM社さん。ありがとうございました。
 
■(参考情報)その他、録音アプリ
・ZOOM HandyRecorder
https://apps.apple.com/jp/app/handyrecorder/id566291779
・Shure Plus MOTIV
https://apps.apple.com/jp/app/shureplus-motiv/id938264337

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