この寄り道ノートでは、あえて「理論」の中身には入り過ぎないようにしています。理論に関しては、素晴らしい教則本・教則サイト・教則動画が沢山出ていますからね。ただ「理論書にも載っていない理論」となれば、話は違ってきます。そんな怪しい話なら大歓迎、寄り道的にも看過できません。
■鍵盤Matti Kleinのアドリブ
Ed mottaというアーティストご存知ですか?
https://edmotta.com/
ブラジルはリオ生まれ。鍵盤弾きながら歌う、御機嫌なオッサンです。ファンクとジャズを融合したようなジャンル。2013年にsmileという名曲を出していて、その鍵盤のアドリブが、なかなかいい感じなんです(02:13辺り)。
https://youtu.be/i73GSLlSeZ8
世界には、この鍵盤アドリブをギターでコピーしている強者も。
https://youtu.be/Pr9R4XCB11k
鍵盤のアドリブを弾いているのは、歌っているEd mottaではなく、サブキーボードであるベルリン在住のMatti Kleinという方です。
http://www.matti-klein.de/
■コード進行
Matti Kleinが弾く「Smile」アドリブ部分のコード進行は下記の通り。
Em7(9)-C#7(#9)-F#m7-B7(b9,13)
C#7からF#m7に4度進行して、2-5を挟んで、B7からEm7に4度進行して戻る形。ジャズ的にはアナライズしやすいパターンかと。Em7からC#7に進行するところが、なかなか良い雰囲気です。
■本人インタビュー
どういうアプローチでアドリブ弾いているのか、弾いているMatti本人に聞いてみることにしました。メールから一部抜粋です。
My approach is mainly about changing the original colours (scales) of the chords:
「僕のアプローチは独特だ」
E min7 -> I could play E-melodic minor or even E-Lydian which is completely against the theory-book -> but it will sound good with the tension it creates that leads us to the next chord.
「Em7のところは、EメロディックマイナーかEリディアンで弾いている。一般的な音楽理論には反するけどね。機能としては、次のコードに向かうための緊張感が出せれば良い訳だから。」
Em7をE7として弾くことはあるから、リディアンで対応するのは想像範囲内ではあります。ジャズ理論本にもギリギリ載ってるかなあ。
でも彼のフレーズはリディアンスケールから発想するそれとも、ちょっと違う。音を拾ってみると#5(=b13)が含まれている様子。仕方なく、もう少しだけ掘ってみることにしました。
■理論本に載っていないスケール?
リディアンスケールと言っても種類があるのか?と調べてみたら、ザクザクと出てくるではないですか!
例えばGuitar Tool Kitというアプリに登録されているものだけでも下記のとおり。
「Chromatic Lydian」「Chromatic Lydian Inverse」「Hyper-Lydian 1」「Hyper-Lydian 2」「Lydian #2」「Lydian #5」「Lydian Mixolydian Mixed 1」「Lydian Mixolydian Mixed 2」「Lydian Augumented」「Lydian Augumented #2」「Lydian b3」「Lydian b7」「Lydian Diminised」「Lydian Dominant」「Lydian Hexatonic」「Lydian minor b7」「Major / Lydian mixed」
興味のある方は、各自お調べいただくとして、間違いなく、深みにハマらないほうが堅実です。クワバラ、クワバラ。
ザッと見た感じでは「リディアン・マイナー・スケール」なるものが、Mattiのアドリブのような雰囲気を出すには有効そうに思いました。リディアン・マイナー・スケールは、リディアンスケールの13thがb13(=#5)に、M7がb7に変化したスケールです。
構成音は下記の通り。
R、9th、M3、#11、P5、b13、b7
何でマイナースケールって名前が付いているのか分からないけれど、なんとも怪しくて良い感じじゃないですか。そもそも私が知らなかっただけで、理論に詳しい方には周知のスケールだったのかもしれませんが。。
■使いこなせるのか。。
構成音を見ると、マイナーセブンスコード上でセブンスコードを弾くという違和感はあるものの、コード構成音R・M3・P5・b7に、テンション9th・#11・b13を足した形で、ジャズ的には常識範囲内のスケール。コンディミのb9および13thが、9thおよびb13と反対となっているだけ、とも言える。
コード構成音とテンションが完全に見えている方なら、あまり苦労せずとも使えるかもしれません。また、よりモーダルな雰囲気を出すなら、ホールトーンスケールにP5を足す形で捉えたほうが入りやすいかも。
■最後に
「理論書に載っていない」レアものスケールは、寄り道ネタとしては面白いけれど、所詮、スケールは発想のキッカケだったり、幅を拡げてくれるもの。呼び方よりも、音の選び方の抽斗として活用し、実践で使えるよう自分に合った形で吸収したいですね。「もっと実践的には、こういった解釈もあるよ」などありましたら、是非ぜひアドバイスお願いします。
(追記)
いつも音楽の幅を拡げてくれ、今回、Ed motta「smile」を紹介してくださった、ファンキー昌紀シャチョーに感謝と御礼を。色々試してみて、ある程度、カラダに取り込めたら、3月のライブで使ってみたいと思います。
Pingback: Ed MottaのSmileのコード進行を使ったアドリブ例 | ジャズギターが学べるサイト ジャズギタースタイルマスター
こちらの書き込み。気づかず、返信が遅くなりました。きめ細やかな攻略ページを作っていらっしゃったのですね!
先週、日曜日のライブで、鍵盤に変わって、smileのアドリブを取ったのですが、事前に確認しておけば、一味違った演奏が出来たかも?
遊んでいただいて、ありがとうございます。